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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第四章 ブリタンニア、ルシタニア戦記

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宣戦布告

 ACU2308 8/6 ヴェステンラント合州国 陽の国 王都ルテティア・ノヴァ ノフペテン宮殿


「それは、本当なのか?」

「ええ、本当ですとも」


 ルーズベルト外務卿は陽公シモンにとあることを吹き込んでいた。


「娘が、それで助かるのだな?」

「はい。始原の魔女の心臓さえあれば」

「――分かった。戦争に、私も賛成する」

「ありがとうございます」


 ○


「それではここに、女王陛下の名において、ダキア大公国を開放する為、神聖ゲルマニア帝国へ宣戦を布告します。最後の確認に、宣戦の意思ある者はご起立を」


 合州国摂政エメ・ファン・オブスキュリテは、七公に問う。


 青公オリヴィアだけが少し躊躇したが、7人は次々に立ち、ここに七公会議は神聖ゲルマニア帝国への宣戦布告を承認した。


「ではルーズベルト外務卿、後はよろしくお願いします」

「お任せ下さい」


 ゲルマニア駐在のハル外交官が正式な文書を手渡せば、戦争は始まる。


 もう後戻りは出来ない。


 ○


 ACU2308 8/6 ブリタンニア連合王国 王都カムロデュルム


「ついに、始まったのか?」


 尋ねるのは、ブリタンニア国王のジョン=リチャード。暗愚な王として内外に有名である。


「はい。ヴェステンラントがゲルマニアに、宣戦布告を、したようです……」


 答えるのはブリタンニア首相のサー・ヘンリー・スペンサー・チェンバレン。眼鏡をかけた貧弱そうな男である。


「我々も、宣戦布告しないと、ならんよな?」

「はい。今回は、その、神聖同盟における相互防衛義務が適用される事態ですので……」


 国際法上明らかに、ヴェステンラントがゲルマニアに攻撃をしかけた。疑いの余地はない。


 なれば同盟に基づき、即座に宣戦を布告せねばならない。


「何とか、抜け道はないのか?」

「ここまで堂々と宣戦布告をされると……」

「そ、そうか。分かった。では宣戦布告を、よろしく頼む」

「はい。これには庶民院も貴族院も、文句はないでしょう。後は陛下のご署名と国璽を頂ければ」

「そ、そうだな。用意してくれ」


 ブリタンニア連合王国もまもなくヴェステンラント合州国に宣戦を布告した。


 ○


 ACU2308 8/6 ルシタニア王国 王都ルテティア


 ヴェステンラント合州国の王都ルテティア・ノヴァは、新ルテティアという意味である。


 その元ネタとなったルテティアは、ルシタニア王国の王都である。


 合州国が今でもその名を使うのは、ルシタニアがヴェステンラント大陸で最大の勢力を誇っていた名残だ。


 もっとも、当のルシタニア人はヴェステンラント人を酷く嫌っている。


「植民地人の蛮族どもが。ついにその薄汚い本性を現したか」


 気品と勇猛さを兼ね備えたこの男。理想的な君主と評されるこの男は、ルシタニア国王ルイ=アルマンである。


「陛下、神聖同盟に基づき、我が国には参戦の義務がありますが――」

「無論だ。即刻、宣戦を布告せよ。文明人の何たるかを、盗人どもに教えてやらねばな」

「御意」


 ルシタニアも参戦。


 かくして戦争は、ヴェステンラント対エウロパの様相を呈することとなる。


 ○


 ACU2308 8/21 アトランティス洋上 ブリタンニア海軍旗艦カムロデュルム


 カムロデュルム級ガレオン船一番艦カムロデュルム。


 連合王国海軍の誇りを一身に背負う、大洋艦隊の旗艦である。


 それに乗って艦隊を率いるは、サー・ウィリアム・アーサー・ネルソン。海軍の全ての兵士の顔と名前を記憶しているとすら噂される、部下思いの良き提督である。


「提督、大丈夫かい?」


 と、提督に親しげに話しかけるの隻眼の少女は、サー・ベアトリクス・アイアンズ・ドレーク。ブリタンニアにたったの40人程度しかいない魔道士の隊長である。


「何か、問題でも?」

「ヴェステンラント相手の戦争は初めて。それに、連合軍を率いるのもだろう?」

「そうだな。加えて、これほど大規模な艦隊を率いるのも初めてだ」


 侵攻するヴェステンラント艦隊を迎え撃つべく、各国の艦隊が集結した。


 その数は合計でおよそ200。中にはゲルマニアの甲鉄戦艦10隻も含まれる。但し、国同士の連携については全くの素人しかいない。


 その最高司令官に任命されたのがネルソン提督なのである。


「正直、私はブリタンニア単独で戦った方がいいと今でも思ってる」

「安心してくれ。基本的には艦隊を3つに、つまり国ごとに分けて運用するのは知っているだろう?」

「そうだけど……」


 ベアトリクスは不満げに。恐らく、どんな言葉を尽くしても、その不満を解消することは不可能なのだろう。


「それに、ゲルマニアのシュトライヒャー提督も、ルシタニアのヴィルヌーヴ提督も、聡明なお方だ。私が総司令官なのが勿体ないくらいにな」

「そんなことはないよ。提督は優秀。私はそれを知ってる」

「ありがとう。だからどうか、私を信頼してくれ」

「――分かった。そうしよう」


 どんなことでもネルソン提督の命令ならば粛々と実行する。それがベアトリクスという魔女だ。


「提督、敵影を捕捉しました! 艦影、ガレオン船およそ60」

「本気だな……」


 ヴェステンラントの保有するガレオン船はおよそ100。そのうちの60を出してきたとなると、向こうは相当に本気のようだ。


「全艦に無線通信。『ブリタンニアは各員がその義務を尽くすと信ずる』だ」

「はっ。ただいま」


 かくして大戦の初戦、カレドニア沖開戦が始まった。因みに地球で言うとスコットランド沖くらいの場所である。

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