表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
366/1122

諸戦力の反応

 ACU2311 12/11 崇高なるメフメト家の国家 ガラティア君侯国 帝都ビュザンティオン


「――申し訳もございません、陛下。ルートヴィヒを暗殺する大任、果たせませんでした。かくなる上は、死を以て償う覚悟です」


 即日で戻って来たジハードは、アリスカンダルにいかなる罰であっても甘受すると謝罪した。


「何、罰する気などない。ただ帝国の方針が変わっただけだ」

「と、仰いますと……」

「スレイマン将軍、説明してやってくれたまえ」

「はっ。ではまず、ルートヴィヒ王が交渉を拒絶した場合、陛下が何故にジハード様に彼の者の暗殺を命じられたか、覚えていますか?」


 スレイマン将軍は優しい老翁といった感じでジハードに問いかけた。


「使えない政府を壊し、我々に協力する者をレギーナの首班にするか、或いは我々がレギーナを乗っ取る為だ」


 ルートヴィヒ王は非合理的なゲルマニア人の矜恃とやらにこだわり、ガラティアの支援を拒絶した。これではレギーナ王国はただ滅び、ガラティアにとってよいことは何もない。


 であるならば、いっそルートヴィヒ王を殺し、より合理的にガラティアに協力してくれる者を新たな王に立てるべきだ。それが上手くいかなかった場合は、ガラティアがレギーナ政府を直接支配する。


 いずれにせよ、ガラティアが利益を得る為にはルートヴィヒ王は死なねばならない。だから暗殺をけしかけた。ただそれだけの話である。


「その通りです。しかし暗殺は失敗した。我が国に非協力的なルートヴィヒ王がレギーナ国王であり続ける訳です」

「そうだな。だから私は失敗したのだと――」

「確かにガラティアにとって最良の道は閉ざされました。しかし、そもそもゲルマニアを分断するなどというのは、あまりにも理想的な目標でした」

「なっ……」

「そうだ。そもそも、そこまでのことは事が最も上手く運んだ時の計画であって、本命ではない」

「へ、陛下……」


 最初から高望みが過ぎた計画だった。だからアリスカンダルは、この内戦についてはグンテルブルクが勝利するのに任せることにした。


「ですので、この計画は完全に破棄されました。レギーナ王国には滅びの道しかないでしょう」

「それでは、全く意味がないではないか! 帝国の安全は何一つ……」

「いいえ、ここは方針を転換させます。本来ジハード様への命令は、レギーナ王国を無理やり助ける為のものでした。しかし目的など我々の内側で勝手に言っているだけのこと」

「つまり、何が言いたい?」

「つまりは、我々はゲルマニアに反旗を翻した逆賊を討伐する為にジハード様を派遣した、ということにして、グンテルブルクに恩を売っておくのです」

「なるほど……」


 ルートヴィヒ王の暗殺は、成功していればレギーナ王国を利するものだったが、普通に見ればグンテルブルク側に立った行動だ。


 故にそれをそのまま喧伝し、ゲルマニアの安定化の為にルートヴィヒ王を暗殺しようとしたのだとして、グンテルブルクに恩を売るのだ。


「正直言って次善の策ではある。いくら友誼を深めようとも、国家などというものは簡単に裏切るからな。だが、常に最善の選択を取り続けられる国家など存在しない。そんなものが存在したら、とっくにこの世界は征服されているだろうからな」

「……はっ。陛下のお心遣いには、感謝の言葉もありません」


 かくしてガラティア帝国は方針を全面転換し、グンテルブルク王国に味方することとした。結局のところ、ガラティア帝国はこの内戦に干渉する機会を失ったのである。


 ○


 ACU2311 12/11 大突厥國


「殿下、ヴェステンラントからの通達です」

「今度はなんだ……」


 ピョートル大公にヴェステンラント側からの手紙が届いた。それは事実上、ダキア大公国への命令である。こうなることは覚悟していたが、やはり心に来るものはある。


 ピョートル大公は通達を読んだ。


「なるほど……これは興味深い内容だ」

「と、言いますと?」

「レギーナ王国はヴェステンラントの支援を受け入れることを決定した。故に我らのゲルマニア南部の諸邦を支援せよとの命令だ」

「我々にとっては吉報ではありませんか」

「その通りだ。素晴らしい……」


 ヴェステンラントからの通達で嬉しくなったのは恐らく初めてだ。


 ダキアとしては戦線の半分がなくなり、更にはグンテルブルクも力を削られるというのだから、願ってもない話である。


「しかし、レギーナに援軍を送れとのことですが……」

「その程度は安いものだ。兵糧などは全てレギーナ側が負担するとある。我々はただ余った兵士を送り込めばいいだけだ」

「これでグンテルブルクが負ければ……」

「ああ。我々の勝利だ」

「であれば、援軍は可能な限りの兵力を用意しましょう。すぐに、そうですね……ルターヴァ辺境伯に周辺の諸侯を取りまとめ、出陣の用意をさせましょう」


 ルターヴァ辺境伯はゲルマニアとの国境線の最南部を固める大貴族である。


「それでいい。親衛隊も兵を出したいが……」

「最前線とは距離が遠すぎます。我々を待って援軍が遅れては本末転倒です」

「だな。今回はルターヴァ辺境伯に一任すると伝えてくれ」

「はっ」


 ダキアはヴェステンラントに伴ってレギーナ側で参戦することとなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=959872833&size=300
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ