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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第十五章 ゲルマニア軍の反攻

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もぬけの殻

 それから数時間。シグルズ率いる突撃歩兵は浸透戦術の第一段階に取り掛かっていた。だがどうも様子がおかしかった。


「どこにも敵が見えない……」

「魔導反応はすぐ近くにあるのですが……」


 前回と同様に敵の高級将校を殺害する為、シグルズは魔導通信機の反応が集中するところをヴェロニカに探させていた。だがそこにいるべき者の姿はなかった。


「本当に、そこなの?」

「はい。間違いなく反応はそこにあります」


 ヴェロニカは何もない原っぱを指さした。そこに魔導反応が集中しているという。だがそこには何もない。


「どういうことだ……?」

「もしかしたら、地下に潜伏しているとか……魔導探知機は上下方向には機能しないので……」

「地下か……」


 確かにそれなら矛盾はないようではあるが、ヴェステンラント軍がわざわざ地下壕を掘ってその中に指揮所を設けるというのには違和感しかなかった。安定した地下構造を短期間で作れる技術があるのは分かっているが、これは違うとシグルズは考える。


「よし。じゃあこうしよう。オーレンドルフ幕僚長、前にやったように地面を掘ってくれ」

「了解した」


 オーレンドルフ幕僚長は魔法の杖を構えて、ヴェロニカが示す地点を凄まじい勢いで掘り進んだ。間欠泉の水のような勢いで土が噴出していく。


「これは……師団長殿!」

「何かあったのか?」


 まだ少し掘っただけであるが、それは出てきた。


「ああ。これを見てくれ」


 穴の中を覗いてみると、中には魔導通信機がむき出しのままに埋まっていた。それには電源ケーブルのような線が繋がれており、どこかに延びている。


「なるほど。これで反応を偽装していたという訳か」

「そのようです。魔導探知機はこれに反応しています」

「敵も学んでいるということか……しかし……」


 確かにシグルズはまんまと囮に引っ掛かった。だがこれが一概に凶報だとは限らない。彼の頭は一つの可能性を導き出した。


「つまり、クロエが全部隊を直接指揮統制しようとしている、ということか」

「ど、どういうことだ、師団長殿?」


 突飛な考えにオーレンドルフ幕僚長は混乱した様子。ヴェロニカはポカンとしていた。


「今のところ、ヴェステンラント軍で技術革新でも起こっていない限り、魔導反応を隠すことは不可能だ」

「そうだな。短期間でそんな技術が生まれるとも思えない」

「となると、どこかに指揮所があった場合、僕たちは必ず発見することが出来る」

「ああ」

「だがそれは囮だった。そして周辺に魔導反応が集中するところはない。つまり敵は、この近辺に指揮所を設けていない」

「そして敵が魔法以外の手段で連絡を取り合っている様子もない。よってより後方の拠点から一括で指揮を執っていると想定される、ということか」


 前線の司令部が潰されるのならば後方の軍団の拠点から全軍を直接指揮しよう。それがヴェステンラント軍の結論らしい。果たしてそれが現実的に機能するのかは謎だが。


「そしてこれは吉報だ」

「ああ。そこさえ潰してしまえば、ヴェステンラント軍が全て一挙に壊滅する」


 全軍を同時に統率するのは弱点を減らし。もしかしたら効率のよい戦闘を可能にするのかもしれない。だが逆に、そこが致命的な弱点になってしまった。そこは言わば脳であり心臓なのだ。


「つまり、僕たちがするべきことは――」

「敵軍の本陣を強襲するのだな」

「ああ。他の部隊にも現在の行動を中止させ、全力を以て白の魔女クロエの本陣を叩く。ヴェロニカ、場所は分かる?」

「はい、恐らくは。西にぼんやりと、魔導反応の集中するところが一か所だけあります」


 ――ぼんやりと、なのか。


 全軍を統制しているというのなら莫大な通信量があってもおかしくはない筈だが。気になりはしたが結局、ゲルマニアの魔導探知機もその程度のものだろうと割り切ることにした。


「まあいい。そこが目的地で間違いない。全突撃歩兵に場所を伝えてくれ」

「りょ、了解しました!」


 ○


 暫くして、クロエの本陣にて。


「クロエ様、我が軍の塹壕線を抜け、敵兵およそ12,000がここに接近しております」

「ここに指揮機能を集めたことに気付いたという訳ですか」

「そうだと思われます」


 マキナは前線を超えて浸透してくるゲルマニア軍同士の通信を傍受し、その目標がこの本陣であることを早期に察知していた。


「流石はシグルズ、このくらいのことは気づいてくれると思っていました」

「予想よりかなり早く発見されましたが」

「問題ありませんよ、マキナ。ここまでは全て私の掌の上です」

「はい、クロエ様」


 クロエはなんだか御伽噺の悪役を演じている気がして楽しかった。


「ところで、接近する敵部隊に対してはどのように対処されますか?」

「それはまあ、こういう時こそ親衛隊の出番でしょう。スカーレット?」

「はっ! 殿下のお望みとあらば、どんな役目でもお受けします!」

「ええ。ではこの本陣を守るのが今回の仕事です」

「はっ。敵を殲滅すればよいのですね!」


 ――どうしてそうなるのですか……


「仕事はあくまで防衛です。せっかく色々と用意したのに、使わないのはもったいないでしょう」

「――承知しました」


 クロエの本陣は、まもなく戦場となろうとしていた。


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