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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第十四章 殲滅作戦

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ブルークゼーレ籠城戦Ⅱ

 ACU2310 4/11 アルル王国 ブルークゼーレ基地


 ブルークゼーレ基地に立て籠もり始めることおよそ5日。時は真夜中。


 基地は依然として健在であったが、反撃の手段はなく、確実に手札を削られつつあった。


「閣下、弾薬の備蓄が5パーセントを割りました」

「ふむ。それは問題だな」

「……」


 軍議の場でここまで危機感のないザイス=インクヴァルト司令官を見ると、部下たちも次第に不安になってきた。


「そ、その、失礼ながら、閣下は我らに勝機はあるとお考えですか?」

「勝機? あるからこうしてのんびりとくつろいでいるのではないか? 適切な休養を取って脳を十全に働かせることもまた、将官の役目だろう?」

「し、しかし、閣下は一向に、何の策も提示しては下さらないではありませんか」


 この5日間、ザイス=インクヴァルト司令官は勝機はあると言うだけで、何ら具体的な方策を示してこなかった。それがある種の現実逃避なのではないかと、多くの人間が疑い始めたのである。


「それ、に何か問題があるのかね?」

「問題も何も、我々に作戦を伝えて頂かなければ、何も出来ませんよ」

「作戦を実行する時になれば無論、諸君にはこと細かく伝えよう。だが、今はまだその時ではない」

「また同じようなことを……」


 結局何も言わない。失望にも似た感情が将官の間に広がっていた。が、今日は様子が違うようだった。


「閣下、伝令です!」


 扉を勢いよく開けて伝令が飛び込んでくる。


「ハーケンブルク城伯より、『賽は投げられた』。『賽は投げられた』!」

「こ、これは何ですか、閣下?」

「諸君、これより我々は反撃を開始する」

「ど、どういうことですか?」

「まあまあ、暫くは観察を――おや」


 基地の周辺から、砲撃に似た爆発音と銃声が聞こえてきた。


「い、今はどこの部隊も交戦していない筈だったのでは?」

「それはどうかな?」

「はあ……」


 取り敢えず何かが起こっているということだけは分かった。


 ○


「あっちに敵が出たぞ! 向かえ!」「こっちもだ! 増援を頼む!」「馬鹿! それは味方だ!」


 夜襲を受けて大混乱に陥るヴェステンラント軍の陣地。そこら中で敵を確認したとの報告が入り、貴族の指揮能力はまるで足りておらず、攻撃されたところに近くの部隊が向かうといった、全く以て統制の取れていない対応しか出来ないでいた。


 至る所で火の手が上がり、真夜中だというのに戦場は明るく照らされていた。にも関わらず、ヴェステンラント軍の状況把握は壊滅的なものだった。


 貴族の命令と現場の判断は食い違い、一体誰の判断が正しいのか誰にも分からなくなっていた。それは総司令官であるノエルやクロエも同じであった。


「クロエ様、友軍の混乱は甚だしく、とても戦闘を続けられる状況ではありません」


 燃え上がる戦場を冷たく見つめながら、マキナは淡々と告げた。


「敵が夜襲を仕掛けてくるのは分かっていましたが……ここまでだとは」

「どうされますか?」

「私の周辺で統率の取れた部隊で、敵軍を叩きます。準備を」

「承知しました」


 包囲網から若干離れたところにあるクロエの本陣。その周辺の部隊はまだ混乱に巻き込まれていない。


「私に続きなさい。進め!」

「「おう!!」」


 白公にして白の魔女クロエの直率する2,000ばかりの軍勢が動き出した。選りすぐりの精鋭部隊である。


「敵の小部隊です! 友軍と交戦中!」

「了解しました。総員、撃て!」


 包囲網の一角で暴れまわっていた数百人の小部隊。それを見つけるや否や、クロエは魔導弩を容赦なく撃ちかけた。数で優っている状況でヴェステンラント軍が負ける筈もなく、あっという間に殲滅された。


 そもそもゲルマニア軍の総数は少ないと予想されている。戦闘はまるで雑多な群衆の中に正規兵を投入したようで、クロエは圧倒的な力を以て敵を各個撃破していった。


「このまま混乱を収束出来れば――」

「クロエ様、敵に動きがあります」

「どうしました?」

「要塞から敵が出てくるようです」

「あ、本当ですね」


 城門を開け放ち、ゲルマニア軍の五体満足な師団が突撃してきた。数はおよそ6万。


「こちらに向かってきているようです」

「ええ。そのようですね。私たちを叩こうということですか」


 雄叫びを上げながら四方八方に弾丸をばら撒いて、分断されたヴェステンラント兵を殺して回りながら、彼らはクロエを目指していた。普通ならば彼らにも相当な犠牲が出る筈だが、混乱の中で組織的な戦闘能力を失いつつあるヴェステンラント軍にはそれを止める力は残っていなかった。


 ○


 その部隊を率いているのはオステルマン師団長である。


「弾丸は使い切ってしまえ! ここで負ければ後はないぞ!」


 ゲルマニア軍にも後がなかった。この突撃は僅かに残った弾薬を使い果たすことを覚悟したものである。もしもしくじれば、弾のない銃を持った兵士しかいない要塞は一瞬にして落とされるだろう。


 この一戦に全てをかける。そういう作戦なのである。考えたのはザイス=インクヴァルト司令官だ。


「敵の塹壕です!」

「突っ込め! 無理やりにでも押し切れ!」


 それは何の捻りもないただの歩兵である。だが勢いだけはあった。魔導弩を防ぐ手段はまるでなく、次々と兵が倒れていくが、数の利に任せてひたすら突撃していく。


「頼むから帰ってくれよ……」


 勇ましく檄を飛ばしながらも、失敗した時のことを思い、彼女の手は震えていた。さて、この乾坤一擲の賭けはどう転ぶのか。



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