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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第十四章 殲滅作戦

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謀反人の候補たち

 ACU2310 4/2 マジャパイト王国 王都マジャパイト


「この俺が、毒を盛るなどという下劣なことをするとでも思ったか!」

「では何故にこうも唐突に、晴虎様を茶に誘おうなどと言いだされたのですか!?」


 征夷大將軍晴虎の御前で、伊達陸奥守晴政と長尾左大將朔が壮絶な言い争いを繰り広げていた。


 ことの発端は晴政が晴虎のことを茶会に招くなどと突然言い出したからである。これに諸将は驚き、特に朔は、晴政が晴虎のことを謀殺しようとしているのではないかと疑った。が、晴政は断固として否定し、こうして恥も外聞もない口喧嘩をしているのである。


 晴虎や武田樂浪守信晴などは笑って静観しているばかりで、仲裁しようとはしなかった。


「そ、それは……晴虎様に無用の疑いを持たれぬように親交を深めておくべきだと、家臣から助言をもらったからだ」

「無用の疑い、とは……謀反を企んでいるということではありませぬか!」

「馬鹿を言え! やる時はちゃんと隠しておくに決まっているであろう!」

「や、やる気なのですか!?」

「隠していないのだから、今はやる気はないと言っておろうが!」

「今はとは!?」


 晴政も朔も譲る気は全くなかった。まったくもって終わりそうもない、子供の喧嘩のような酷い会話である。


 流石に見ているのにも飽きたのか、ついに晴虎が仲裁に入る。


「朔よ、伊達殿はよき武将。真に謀反を起こそうとするのなら、このような、何ら意味もなく目立つような愚かしいことはしないであろう」

「晴虎様がそう仰られるのなら……しかし、謀反を起こさぬにしても、茶に毒でも混ぜているやも――」

「馬鹿を言うのも大概にせよ!」


 謀反についてはいつも言いふらしているからいいものの、毒殺などの小汚いやり方を疑うのは、晴政の逆鱗に触れる行為であった。


「いいか。仮に、上杉家の力も整わぬ二十年前であったのならば、まだ謀反を起こしていたかもしれぬ」


 その発言も問題ではあるが。


「が、その時であってすら、俺は断じて謀殺などはせぬ。正々堂々と兵を挙げて挑んでいたであろう。自らの武を以て戦わぬ者など、武士の風上にも置けぬ者。分かったか?」

「それは……」

「うむ。伊達殿はよき武士であるようだな。朔よ、これこそ真の武士の姿。よく覚えておくがよい」

「……はい」


 最終的に晴虎は、晴政の主催する茶会に赴くこととした。因みにこうするように進言したのは片倉源十郎である。どうやら助言が曖昧過ぎたようだ。


 しかし晴政にはまだ言いたいことがあった。


「それよりも、そこで平然として座っておられる武田殿のことはよろしいのか?」

「で、あるな。武田殿にも話を聞かねばならない」

「はて、何のことでありましょうか?」

「我に断りもなく、鬼石や兵糧をこの地に運び込んでいたことについてだ」

「これはまた、異なことを仰せられる」


 ここでの最年長である武田樂浪守信晴は、晴虎の追及など意に介していない様子であった。実際、晴虎に素直に従う気など彼にはなかった。


「心当たりがないのか?」

「儂はただ、当家の兵を養う為に必要なものを運び込んだまで。一体どこに当家が責められるべきところがあると仰られるのか?」

「内地より物資を運ぶ時には必ず当家――上杉家に届け出をしなければならないという約定。それを破られたことをこそ、我は責めている」


 大名が勝手なことをやらかさないよう物流は徹底的に管理されている、筈だった。今こうして武田家が勝手なことをやらかした訳だが。


「当家は米の一粒に至るまで、上杉家にお伝え申し上げた。それを聞き逃したか、或いはどこかで伝え損ねたか、いずれにせよ上杉の過ち。当家には何の落ち度もありませぬ」

「ふむ……このようだが、朔はどう思う?」

「恐れながら、当家が武田家の届け出を失くすとは思えませぬ。信晴様こそ、届け出るのをお忘れになっていたものかと」


 朔は自分が管理する官僚機構に自信を持っていた。何より、最大の大名である武田家の動向は常に把握している。自分に非があるとは考えられなかった。


「ふん。言いよるな、小童が。だが、当家こそ、上杉家に無断でものを()つ国に運ぶことなど断じてございませぬ」

「うむ……」

「…………」


 武田と上杉。何かある度に対立している両者だが、今回はかなり根深いものだ。最悪の場合、激昂した武田家がヴェステンラント征伐から手を引くというのも考えられる。


 晴虎はこの手のことはあまり得意ではなかった。義で解決出来る問題でもないからだ。戦場で見せるような神がかり的な采配を振るうことは出来ないのだ。


 空気がいつになく張りつめていた、その時だった。


「まあまあお二方、これほどの大きな戦であるのですから、伝えそびれの一つや二つくらいはありましょうぞ」


 穏やかの声で見解を述べたのは松平四郞兵衞尉元忠。代々上杉と武田の間を取り持ってきた今川家は今や、重臣である彼に牛耳られつつあった。


「ですのでどうか、ここを槍をお引き下され。誰が悪いのかなど、探ったところで栓無き事。今はいかにしてヴェステンラントを征伐するかのみを考えるべきでありましょう」


 その声に、毛利周防守や嶋津薩摩守などの西国大名は賛意を示した。沈黙を通した者も多かったが、特別反対する者はいなかった。


「……で、あるな。松平にこそ義あれ。此度のことは不問とする」

「承知した。自今、このことについては何も言いますまい」

「それがよいな、武田殿」


 かくして事件は何とか収まった。が、真相は謎のままであった。

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