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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第十四章 殲滅作戦

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装甲列車その2

「どうですか、ライラ所長?」

「そうだね……これはちょっと大変そうかも」


 線路は赤熱して焼き切れており、修復は一筋縄ではいかなさそうである。


「その、修理は可能ですか?」

「ちょっと時間をかければね」

「――了解です」


 そのちょっとの間に逃げられてしまうのである。だがどうしようもなく、シグルズはライラ所長を手伝うことにした。が、その時だった。


『お困りのようね』


 通信機から冷静な女性の声が聞こえた。


「クリスティーナ所長、どうかしましたか?」


 帝国第二造兵廠のクリスティーナ所長である。


『こんなこともあろうかと……』


 彼女はやけにもったいぶる。


「……はい?」

『まあまあ、ちょっと待ってて』


 やけに楽しげである。まるでドッキリを仕掛けたのを顔に出してしまったようであるが、シグルズは言われた通りに少し待つことにした。


「ん?」


 すると遠くからガタゴトと線路を揺らす走行音が聞こえてきた。それは間違いなく蒸気機関車であった。それも複数両。


「これってまさか……」

『そうよ。装甲列車の4から6号機。こんなこともあろうかと、事前に用意させてたの』

「そんなものがあるとは……」


 シグルズは全く聞いていないことだった。クリスティーナ所長――というか第二造兵廠は既に6両の装甲列車を完成させていたのである。


「どうして教えてくれなかったんですか?」

『まあ、使わないのなら隠しておきたかったからね』

「僕くらいになら教えて下さっても良かったのでは?」


 機密の漏洩も何もない。そもそもこの装甲列車はシグルズの頭の中にあったものなのだから。ライラ所長の手によってそれなりの修正は加えられてはいるが。


『出来るだけ知る人間は減らすべし、っていう総統閣下の直々の命令よ』

「そう、ですか……」


 自分から教えたものとは言え、何だか盗作にでも遭ったような気がして、シグルズの気分は晴れなかった。


 しかし、ここで動かせる装甲列車が増えたというのは僥倖。不満に思うのは取り敢えず棚に上げ、シグルズは次の作戦を伝えた。


 ○


「線路の上しか走れない奴なんざ怖くないね」

「それでも十分な脅威ですが……」


 ノエルの機転によって窮地を脱し、全速力で西進する騎馬隊。


「しかし、ゲルマニア軍が線路を修復してしまうことも考えられますが」

「そんなことになる前に、とっとと逃げちまうのさ」

「そう上手くいくでしょうか……」


 想定では修理に1日はかかると見られているが、ゲルタは不安でいっぱいであった。


「ノエル様、大街道を避けて進むことは出来ませんか?」

「そいつは無理だな。馬が使い物にならなくなる」


 装甲列車は大街道しか通れない。そこにしか線路が通っていないからである。


 しかし、大街道以外に数千の騎馬隊を通過させられる程の道はなく(それだからこそ大街道なのであるが)、森や野原を行くとなると時間がかかり過ぎる。当然ながら魔法で増やせない馬は貴重で、消耗は避けたい。


 そうなるとやはり、大街道を通る以外の選択肢はなかった。


「まあ、安心しろって。ただ逃げ切ればいいだけさ」

「そうでしょうか……」


 そんな会話をしていたまさにその時であった。


「ノエル様、汽車の音です!」

「何だって!? 早過ぎるだろ!」


 まだ数十分しか経っていない。あの線路を修理するには余りにも早過ぎる。


「い、いえ、別の線路から来ます!」

「まさか、装甲列車が他にあったのか?」

「そ、そのようです!」

「クソッ。逃げるぞ!」


 全速力で馬を駆けさせる。しかし機関車と馬の性能差は圧倒的であり、馬より速く疲れを知らない機関車にあっという間に追い付かれてしまった。


「傷がない。やっぱり別物か」

「そ、そうですね」

「クソッ! 全軍、防御を固めろ!」


 こちらがいくら全力で走っても、敵から見れば徐行運転の速度程度しか出ない。走っていては横から銃弾の雨を浴びてたちまち全滅するだろう。ここで立ち止まって防御を固める以外の選択肢を、ノエルは持たなかった。


 ヴェステンラント軍は馬を降り、壁の後ろに隠れた。


「ノエル様、さっきの作戦をもう一度試すのはどうですか?」

「やっては見るが……」


 さっきはこっそりと線路を焼くことが出来た。だが二度目も上手くいくかどうか。


 ノエルは魔法の杖を構え、先頭の機関車の少し前に目標を合わせた。そして鉄を溶かすように念じた。


「こ、これは上手く……あ」

「ダメだったな」


 赤くなった鉄の上に水が現れて、熱くなった線路を冷やした。ノエルは何度か試したが、悉く冷やされ返されてしまった。作戦失敗である。恐らくはシグルズやらが監視しているのだろう。


「さーて、どうする……」


 ノエルの額から冷たい汗が落ちた。防御を固めるだけではいつまでももたない。いずれ決壊してしまうだろう。


 ○


 線路の修理はライラ所長とナウマン医長に任せ、シグルズ一行は装甲列車を乗り換えて引き続き指揮を執っていた。


「さて、今度こそは叩き潰させてもらおうか……」

「師団長殿、顔が怖いぞ」


 ノエルの奇策は封じた。これ以上の小細工は残っていない筈。シグルズは勝利を確信していた。


 だが、その自信はすぐに崩れることとなる。

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