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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第十二章 マジャパイト攻略

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最後の一押し

 虎吉からの要請は晴虎の本陣に届いた。


「晴虎様、いかがされますか?」

「村上の言う通りじゃ。速やかに全ての船を前に出す。本隊は我が率いる。左翼は朔が率いよ」

「承知致しました」

「右翼は武田殿」

『承知した』


 これまで温存してきた大八洲の主力艦隊がついに動き出す。安宅船だけでおよそ百隻の大艦隊は、簡易的な鶴翼の陣形を形成しながら前進する。


 ヴェステンラント側の組織的な戦闘能力は瓦解しつつあり、一部の船は弩砲による攻撃を仕掛けてきたが、いずれも散発的なものに留まる。


 両軍の距離はたちまちつまり、ついに両艦隊はぶつかった。激突をすんでのところで躱しながら、艦体は交差していく。


「懸れ乱れ龍の旗を掲げよ!」


 上杉の旗印。白地に龍とだけ書かれた旗は、今回は一斉に移乗攻撃をしかけることを意味している。


 小早の絶え間ない攻撃によって混乱した船上に、大八洲の武士は次々と乗り込んでいく。


 ○


 その中には当然、獨眼龍晴政もあった。


「乗り込むぞ! 成政は掩護! 他は俺に続け!」


 伊達兵部成政の率いる弓隊がまず甲板の敵兵に矢の雨を浴びせる。甲板上の敵を片付け、残ったものが船内に退避すると、晴政率いる本隊が梯子を伝って突入するのである。


 水際での撃退に失敗し、百人規模の乗船を許してしまったヴェステンラント軍。こうなってしまえば後は勢いに任せて蹂躙するのみ。


「桐、そろそろ来い。上の敵はもうじき片付く」

『分かったわ』


 飛鳥衆が空を飛んでいる時は割合無防備で、敵からの攻撃をまともに食らうと大損害を受ける可能性がある。それ故にここまでは遠くで見守っているしかなかったのだが、甲板の敵が空など気にしていられない状況になったことで動けるようになったのである。


 桐が率いる黑備えの武士たちも合流を始め、いよいよ勢いは大八洲勢に傾く。


「邪魔だ邪魔だ! どけい!」

「晴政様、お一人で進まれるのは危険です」


 とは言いつつ源十郎もついてくる。


 晴政は源十郎と桐だけを伴い船内に突入していた。甲板は制圧したがヴェステンラント兵はまだまだ抵抗を続ける気らしかった。


「まったく、ここで何かあったらどうするつもりよ」


 桐は鬼道で作った刀身のみの刀を投げつけながら言う。


 当主の晴政、一番か二番の重臣の源十郎、母衣衆の棟梁の桐。なるほど、これが全滅したら伊達家は滅ぶ。


「俺たちが死ぬなどあり得ぬよ。源十郎の剣の腕とお前の鬼道。合わせれば勝てぬ敵はなし」

「ま、まあ、それもそうね」


 桐は顔を少し赤くしながら、兵士の首を刎ね飛ばした。褒められるとすぐ調子に乗ってしまうのである。


「ん? これで終いか?」

「はい。ここが一番下のようです」


 結局、彼らはたったの三人で船を制圧してしまった。


「この船はどうされますか?」

「うちのものにすればいいんじゃない?」

「そうしよう。武具を取り上げた後、敵兵はここら辺にでも閉じ込めておき、この船は我らのものとする。ああ、あと、船の扱いに長けた者は適当に使え」

「はっ。手配しておきます」


 大八洲の船とヴェステンラントの船は根本的に構造が違う。やはり餅は餅屋。操舵はヴェステンラント人にやらせるが得策である。


 その後は源十郎が指揮を執り、晴政と桐は元の安宅船へと戻った。


 ○


「女に抱きかかえられて、あんたは恥ずかしくないの?」


 道中、晴政は翼を生やした桐に抱えられていた。


「飛べぬものは飛べぬのだから、仕方あるまいだろうが」

「そ、それはそうだけど……」

「それともお前は抱かれたいのか?」

「――!? ば、バカなこと言うんじゃないわよ! 落とすわよ!」


 桐はわざと上下左右に揺れ動き、晴政を怖がらせようとした。だが晴政は一切怯まず、それどころかにやにや笑っていた。


「やれやれ、そんな気もないくせに」

「い、言ってくれるわね……本当にやるわよ!」

「さっきから腹が苦しいのだが」

「――!!」


 晴政が若干呼吸困難になるくらいには、桐は彼をきつく掴んでいた。


 という茶番は置いておいて、順風満帆に見えた戦況に、翳りが見え始める。


 ○


 武田樂浪守信晴の大将船にて。


「お館様、あれは音に聞く悪鬼では!?」

「うむ。そのようだな」


 武田の本陣に迫る黒い鳥。その姿は間違いなく、今川辨辰守昭元を殺した魔女――青の魔女シャルロットのものであった。


「ど、どうされますか!?」

「落ち着け、お前たち」


 何十年か前の唐土征伐と比べればどうということはない。信晴は立ち上がろうともせず、腰かけたままシャルロットを静観していた。


「どの道船では逃げられぬ。ここは山の如く構えるが上策」

「――しょ、承知……」

「弓隊構えよ。船上ではあるが、魚鱗の陣を敷け」

「はっ!」


 これまでのシャルロットの行動からして、信晴を討ち取りに来たのは間違いない。それ故、対応も容易い。


「放て!」


 シャルロットが接近したところで一気に矢を撃ちかける。数十の矢が彼女に突き刺さったが、彼女の飛ぶ鳥の勢いは衰えず。


「お館様をお守りしろ!!」

「固まれ!」


 弓矢による攻撃が無駄だと悟るや、武田の兵は信晴の前に人の壁を作った。無理やりにでもシャルロットを食い止めようという作戦である。


 さて、これは吉と出るか凶と出るか。


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