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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第十二章 マジャパイト攻略

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アチェ島沖海戦

 ACU2310 3/21 マジャパイト王国 アチェ島沖


 この日、ヌガラ島とアチェ島の間に、大八洲の大艦隊が集結した。十二隻の鉄甲船を含む、大小合わせておよそ三百隻からなる大艦隊である。


 晴虎がこの日に行動を起こすことを決意したのは、エウロパ方面にてヴェステンラント軍が大攻勢を始めたという報が入ったからだ。ここでヴェステンラントに一撃を加え、間接的にゲルマニアを掩護しようという計画である。


「本当に、ヴェステンラントは動くのでしょうか?」


 旗艦となっている安宅船――大八洲が運用する大型船の上で、朔は晴虎に尋ねた。ヴェステンラントはマジャパイトより撤退すると先に約束をした筈だが。


「動くであろう。どうせ、海はマジャパイトの領地ではないとでも言ってくるのであろう」

「確かに、地ではありませんぬが……」

「我ですら思いついたような悪知恵を、ヴェステンラント人が思いつかぬ筈がない。必ずや、彼の者どもは堂々と、我らに立ちはだかるであろうな」

「では、気を引き締めなければなりませんね」


 ヴェステンラントが介入してくることを、晴虎は確信していた。言い訳はあるだろうし、何なら約束など簡単に破る連中なのだから。


 ○


「晴虎様、前方に敵船! おおよそ五百!」

「大船はおよそ百、残りは小船!」

「やはり、来たか」


 合計の数では負けているが、大型船はこちらの方が多い。条件はそう変わらない戦いであろう。


「晴虎様、敵の中にひと際大きな船が見えます」

「大きな船?」

「はい。見たところ、安宅船の三倍はありそうです」

「で、あるか……」


 ここに来て予想外の代物が出てきた。とても当代の船とは思えないような巨大船である。それは見間違いなどではなく、確実に存在していた。


「晴虎様、これは……」


 朔は不安げに声をかけた。戦場に得体の知れないものがあるというのは、兵の士気にも作戦指導にも関わる大問題だ。


「我にも分からぬよ。我は軍神などではない」

「そ、そうでございますね」


 流石の晴虎にもそこまでは分からない。


「しかし、そう案ずることもない。一隻の船が大局を動かせる筈もなし」

「はい……」


 確かにそれは巨大だが、所詮は大型船を三つ束ねたに過ぎない。安宅船を三隻用意すればいい話である。


「敵船、動き出しました!」

「うむ。鉄甲船を前に出し、横陣を敷け」

「はっ」


 この世界は砲撃戦と白兵戦の過渡期のような状態にある。伝統的な移乗攻撃は決定打になり得ると見られているが、一方で近代的な砲戦にも一定の価値が見出されていた。


 わざと目立つように金に染めた鉄甲船。安宅船を基本とした設計である。十二隻のそれは横一直線に並び、艦体の側面にある穴から大砲の口を出した。ガレオン船と基本的な発想は違わない。


 また、それ以外の船は鉄甲船の後ろに横陣を組んだ。


 ○


 鉄甲船団を直接指揮しているのは商人の身なりをした武将、九鬼形部嘉信である。晴虎から見れば陪臣――家臣の家臣となる男だ。


「大金をはたいて堺の大砲を調達したんだ。しっかり使わないと元が取れないぞ!」

「「お、おう!」」


 どこかずれている鼓舞。だが分かりやすいのは確かだ。


 と、その時、風を切るひゅっという音と、刀同士がぶつかった時のような甲高い音がした。


「な、何だ!?」

「敵からの射撃かと。ヴェステンラントは巨大な弩を海で用いると聞きます」


 少なくとも射程に関しては、この魔導弩砲がこの世界のありとあらゆる銃砲の中で一番長い。それ故に、先手を打たれるのは仕方がないことだ。


「しかし、敵の矢は弾いております。やはり、嘉信様の見込みは正しかっ――」

「せっかく金箔を買い揃えたのだぞ! 剥がされてたまるか!」

「そ、そこですか?」

「そこに決まってるだろう!」


 鉄甲船の装甲が十分に効果を発揮し、船内が安全地帯であることを、ほぼ全ての将兵は喜んでいた。ただ一人、外装が剥げることを酷く気に病んでいた嘉信を除いて。


 その後もヴェステンラント軍からの砲撃は続いたが、悉く鉄の装甲に阻まれた。その度に表面に塗られた金箔は剥がれていった。


「ど、どうして晴虎様は動かれないのだ!?」

「様子を見ているからだと思います」

「とっととあいつらを叩き潰させてくれ!」

「では、晴虎様にお伝えします」

「ああ」


 何も手出しが出来ないままに金を吸い取られていくのに、嘉信はわなわなと震えていた。家臣らもそろそろ撃たれるだけに飽きてきたので、その陳情は晴虎の元へと伝えらることとなった。


 ○


「――嘉信がそう申しておるのか」

「そのようです。晴虎様、どうされますか?」


 朔は尋ねた。正直、彼女もまた、これ以上撃たれっぱなしというのには納得がいかないでいた。


「相分かった。物見は済んだ。鉄甲船を前に出せ」

「承知致しました」


 晴虎は、これ以上敵の様子を伺っても得るものは何もないと判断した。


 ○


「や、やっと来たか……」


 晴虎からの命令を受けた嘉信は、まだ戦いが始まってもいないのに、勝利に安堵したように息を吐いた。


「これからが本番ですよ」

「わ、分かっとるわ! 鉄甲船、進め! ヴェステンラントの外道どもを叩き潰せ! 金の力を見せつけてやれ!」


 かくして、鉄甲船は重々しく動き出した。


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