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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第十一章 第二次ブルークゼーレ会戦

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滅却

「だが、仕方ないか……」

「ノエル様……」

「よし決めた。全軍、私に近い者から塹壕より撤退せよ」

「了解しました」


 その命令が伝わると、ヴェステンラント側の兵士は魂を抜かれたかのように塹壕から出ていった。突然戦闘が打ち切られ、ゲルマニアはもとより、事情を知らないヴェステンラントの魔女や魔導兵も困惑していた。


「じゃあ、始めようか」

「はい。ノエル様」


 ノエルは深く深呼吸をして、魔法の杖を握りしめた。


 ○


「か、勝ったのか……?」


 突如としてヴェステンラント兵がいなくなった防衛線では、どう反応したらいいのか分からない者が大半であった。


「勝ったんだよ! 喜ぼうぜ!」「そうなのか?」「そうだって!」「…………」


 中には楽観的にヴェステンラント軍が諦めたと解釈する者や、何らかの作戦が行われようとしていることを察している者もあった。


 誰が正しいのかは、すぐに判明することとなる。


「あ、あれは、赤の魔女!?」「そうだ! 違いない! 撃て!」


 静まり返った戦場が、再びざわめきだす。数百の兵士の銃口が狙うのは、ただノエルのみ。


「クッソ、当たらねえ!」「あいつは火の魔女じゃないのか!?」


 ゲルタはひっそりとノエルに従って、彼女の周りを壁で守っていた。


「下で魔法を使っている魔女を狙え!」


 ゲルタがノエルを守っているらしいというのに、誰かが気付いた。だが、それはあまりにも遅すぎた。


 ノエルは空中で静止すると、魔法の杖を塹壕の兵士たちに向けた。


「火だ!」「逃げろ!!」


 その瞬間、塹壕は燃え上がった。塹壕という空間自体が燃え上がったかのように、火柱が塹壕を伝って稲妻型の図形を描いていく。


 時に、火刑というのは一昔前まで一般的だった処刑の方法である。


 火あぶりと聞けば体が燃えることで死ぬのかと思われがちであるが、実際はその前に気絶、或いは死亡することが多い。これは物体の燃焼によって酸素が奪われ窒息するからである。


 さて、今や一帯は簡易的な処刑場と化した。そこで何が起こるのか。想像するに難くない。


 ○


「こういうやり方は、やっぱり好きじゃないな……」


 ゲルマニア兵のうめき声を聞きながら、ノエルは呟いた。炎で焼かれるよりも先に、ゲルマニア兵は窒息してバタバタと倒れていった。


「だが、やるしかない」


 正面を焼き払うと、ノエルは今度は反対方向に飛行し始めた。そうして塹壕を更に焼き払おうとした。しかし――


「そこまでにしてもらおうじゃないか?」

「あ?」


 ノエルに挑戦してくる声。見るとそれは黒い髪と緑の目をし、ゲルマニアの軍服を纏った魔女であった。


「ああ、聞いたことがある。緑の目の魔女とかなんとかか?」

「酷いなあ、私にだって名前はあるんだぜ?」

「一応聞いておこうか?」

「私はシュルヴィ・オステルマン。まあ、ゲルマニアでは最強の魔女だ」

「自分で言うか、それ?」

「最強なのは最強なんだよ!」


 そう叫ぶと、シュルヴィは特製の回転式小銃をノエルに向けた。


「ノエル様、危ない!」


 ゲルタはその魔女についてよく知っていた。彼女と交戦したダキアの兵士からの情報提供である。


 ゲルタはすぐさまノエルを守るようにして壁を作った。弾は弾かれ、壁の手前で爆発した。時限式の炸裂弾である。報告の通りだ。


「何なんだ、こいつは?」

「爆発する弾丸です。当たったら体が吹き飛びます」


 そう説明している間にも弾が次々飛んできたが、貫通力は大したことないようで、ゲルタの魔法でも十分に防げた。


「チッ。面倒なことしやがって」


 シュルヴィは吐き捨てた。


「ノエル様、ここは私が食い止めます。ノエル様は作戦を続行してください」

「そうだな。任せた」


 ノエルは塹壕の先へと飛んでいく。


「行かせるかよ!」

「させるか!」


 シュルヴィは引き金を引く。が、ゲルタが両名の間を壁で遮った。そしてシュルヴィの前に立ち塞がる。


「あなたの相手はこの私だ!」

「へえ。あんたみたいな弱そうなのがか?」

「し、失礼な!」


 それは実際過小評価である。シュルヴィの銃弾はゲルタの防壁には一切通用しなかった。


「じゃ、こいつはどうかな?」

「こいつ?」


 シュルヴィからの銃撃が一瞬止んだ。そして次の銃声が響く。


「うあっ――!」


 その弾丸は壁を貫き、ゲルタの脇腹を貫通した。体がよろけ、血を吐きだした。ゲルタは高度を落としていく。


 こうなってしまえば魔法は維持出来ない。勝負は決した。


 地に落ちたゲルタを一瞥すると、シュルヴィはノエルを追おうとした。だが――


「今度は私がお相手しますよ、ゲルマニア最強の魔女さん」

「へえ? 白の魔女じゃねえか」


 次に立ちはだかったのはクロエである。


「レギオー級が2人目とあっちゃ、容赦しないぜ!」


 シュルヴィは回転式小銃と比べ二回りほど大きな銃を構えた。それはかつてクロエの魔導装甲を貫いた銃である。


「二度も同じ手にはかかりませんよ」

「どうかな?」


 明らかに人間が手で持って撃つものではない銃を、シュルヴィは軽々と撃った。だが、その弾丸はクロエの壁には阻まれた。


「チッ」

「どうしました?」


 シュルヴィの興味は完全にクロエに移り、ノエルのことなどどうでもよくなっていた。


 ○


 クロエがシュルヴィと戯れている間、ノエルは塹壕を焼き続けた。


 残されたのはもがき苦しんだ姿のまま固まっているゲルマニア兵の残骸。死体が燃える程の火力は出していない。


「全軍、進め! ゲルマニア本土へ侵攻だ!」


 戦線に大穴が空いた。ヴェステンラント軍は塹壕を突破、ブルークゼーレ基地へと進軍する。


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