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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第十一章 第二次ブルークゼーレ会戦

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爆砕

 ACU2310 3/18 神聖ゲルマニア帝国 アルル王国 第一防衛線(旧第三防衛線)


 ヴェステンラント軍は土や木の魔女を総動員し、僅か2週間ほどで全長15キロパッススに及ぶ坑道を掘り終えた。


「これより爆弾の設置作業に入ります」

「ああ。頼む」


 ゲルタが指揮を執って、ゲルマニアの塹壕戦の地下まで掘られた坑道に、数百の魔女が入っていった。


 魔法で生成したものは長くても24時間しか形を保てない。それ故に、作戦の直前に魔女を向かわす必要があるのである。


 数時間後。


「爆弾の設置が完了しました」

「――分かった」


 ノエルは殊の外緊張していた。彼女の手に握られた魔法の杖に少し力を込めるだけで、数千人のゲルマニア兵をあの世に吹き飛ばせるのである。そんな状況は赤の魔女とて流石になかった。


「――全ての坑道の安全を確認。導火線の配置、接続を確認。白の国及び赤の国、全部隊、出撃の準備を完了しました」

「……ああ」

「準備は完了しました、ノエル様。後はノエル様のお好きなように」

「分かった……」


 これはつまり、最終的な実行権がノエルに委ねらえているということだ。ノエルの一存で作戦を中止することも可能なのである。


 だが、だからこそ辛かった。それが可能であるからこそ、自分の手で数千の命を奪うのだと自覚せざるを得ないのである。


「ノエル様、申し訳ありません。あなたに辛い役割を押し付けてしまって……」

「構わないさ。これが君主の役割だ」


 彼女は君主という訳でもないが、まあそれに準じる者ではある。


「じゃあ、やってやろうじゃないか!」


 目の前に固定され大量の爆弾に接続された魔法の杖にノエルは触れた。そしてその先にある物体を燃え上がらせるように念じる。


 瞬間、大地が震えた。足元の小石が跳ねる。


 耳が酷く痛む。


 風が吹き寄せてきたと思ったら、すぐに反対方向に空気が流れた。変な風である。


 晴れ上がっていた空は、黒く染まった。土煙の色なのだろうか。


 誰もがその光景を、ただ眺めていた。何の為にそれを引き起こしたのかすら忘れて。


「何てことをしちまったんだ……?」

「の、ノエル様! 直ちに突撃の命令を!」


 一番最初に魂が戻って来たのはゲルタであった。流石は科学者。


「わ、分かった。全軍、この機を逃すな! 塹壕を突破せよ!」


 ヴェステンラント軍、歩兵およそ23,000、騎兵およそ18,000。雲霞のごとく進撃を開始した。


 ○


 ノエルはこの大軍勢の最前線にいた。それは比喩などではなく、本当に先頭で馬を駆けているのである。


「クソッ。こいつは酷いな……」


 彼女らは当然、爆破したその爆心地の付近を通るわけだが、そこには粉々になった死体が散乱していた。


 人間の形を保っている者は非常に稀で、首と胴体が残っていればいい方。大半は五体がバラバラになって、その腕や脚、胴すら何分割かされていた。


 死屍累々の地獄絵図のようなものだった。だが、ここまでしたからこそ、ノエルは塹壕を突破しなければならない。敵とは言え、何の意味もなく殺されたとあっては余りにも不憫だ。


「とっとと行くぞ! 歩兵はもっと速く走れ!」


 今は騎兵と歩兵で共に行動している。無論、騎兵の速度は歩兵が走るのに合わせる。


「そ、そうは仰られても、これでもう限界です……」

「チッ。使えないねえ……」

「も、申し訳ござ――」

「いい。言うな」


 さっさと走り抜けてしまいたいのは皆同じだ。こんなところに長居したい奴などルーズベルト外務卿くらいなものだろう。


 と、その時。


「ノエル様、危ない!!」

「何!?」


 銃声が響き渡った。それも一発や二発ではなく、明らかに組織的な攻撃である。


 ゲルタはノエルの前に鉄の壁を作り出した。


「げ、ゲルタ、すまない……」

「いえ、これも仕事です」


 土煙の中を銃弾が飛び交うが、ノエルは無防備も同然である。赤の魔女には他の魔女のように弾丸を止める術がないのだ。


 そこでノエルを守るのもまた、ゲルタの役目である。因みに、彼女の化学の知識は魔法とは関係ない。彼女は魔女としては金の魔女に分類される。


「全軍、防御を固め応戦しろ!」


 魔導通信機を使い、その指示は直ちに全ての兵士に届けられる。野戦の指揮はノエルの担当であるから、クロエの軍隊も指示に従う筈だ。


 魔女が前線に立って様々な種類の壁を作り、その後ろから魔導兵が弩を放つ。だが、この僅かもない視界では、命中は期待出来そうもない。それに、仮に視界がよかったとしても、頭しか出していない相手に射撃は効果が薄過ぎる。


「生き残りがいたか……」

「そのようですね……」


 これは決して想定されていなかったことではない。完璧にゲルマニア軍を殲滅出来るとは最初から思っていない。


 だがそれにしても数が多過ぎる。まるで何の被害も受けていないようだ。ヴェステンラント軍はすっかり足止めされてしまった。


「まさか、ゲルマニアの援軍か?」

「こんなに早く援軍が?」

「そうじゃなきゃ、これはおかしい」

「それはそうですが……」


 既に二つの防衛線を完全に突破した。そこを守っていた兵士の死体も確認している。それが観測事実である以上、ここまでの兵士が後ろの防衛線にいた訳がないのだ。


「まあ、問題はこれをどうするか、だが」


 ノエルを守る壁に銃弾が直撃した。


「え、は、はい」

「さて……」


 どこから兵士が来たかは問題ではない。そこに兵士がいるのだから、それをどうやって突破するか。それが問題だ。


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