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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第十一章 第二次ブルークゼーレ会戦

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硝化三水酸化三炭化水素爆弾

「まずノエル様に説明しておきますと、基本的に、爆発させる方法は、火をつけるのに同じです」


 化学的な話をすれば、どちらも広義には燃焼という反応に分類される。


「爆発と炎が一緒なのかい?」

「はい。まあ、そのそこら辺の詳しい原理はまた後ほど……」

「そう……」


 ノエルは腑に落ちない様子。馬鹿だとは自認しているものの、そこまで自分の頭脳を舐められると悲しくなってくるのだ。


「じゃあ説明しましょうか。理由は簡単です。どちらも物質と酸素を化合させる反応を起こしているからです」

「あ、うん、いいや」


 諦めた。化合とか言われても何の話か分からない。


「ええ、はい。それでは、ここに実物がありますので、早速実験に入りましょう」


 ここで実験をやれる筈がない。一行は近くに建物も畑もない更地へと足を運んだ。


「では、ええ、置きます」


 ゲルタは件の爆弾を地面に置いた。そしてそそくさと距離を取る。


「じゃあ、あれを燃やせばいいんだな?」


 ノエルは魔法の杖を爆弾に向けて構えた。


「はい――って、ちょっと待って!!」

「え?」


 ゲルタが叫んだ時には、時すでに遅し。十分な距離を確保する前に、ノエルは爆弾を起爆してしまったのだ。


 ――あ、死ぬ。


 ゲルタは爆音を耳にして死を覚悟した。


 が、彼女は死ななかった。それどころか痛みすら感じなかった。


「ど、どういう……」


 確かに爆弾は爆発した筈だ。


 振り返る。するとそこには巨大な鉄の壁が立っており、首脳部一行を守っていた。恐らくはクロエが咄嗟に魔法を使ってくれたのだろう。


「く、クロエ様、ですか?」

「ええ。こういうことになる気がしていましたので」

「あ、姉貴……ごめん……」


 ノエルは泣きそうな声で、というか半泣きになりながらクロエに謝った。


「そ、それは、私の説明が下手だったからで……!」


 自分の主に非を押し付ける訳にはいかない。


「いや、私の早とちりだった。ゲルタも、ごめん」


 しかしノエルはゲルタにも丁寧に謝った。


「の、ノエル様……」


 諸侯は大公の娘を非難する訳にもいかず、ただ空気がどんよりしてしまった。そして、ここで一番声を上げられそうな立場にあるクロエは、そういう空気が苦手である。


「はい、皆さん。せっかく爆発させたのですから、威力をちゃんと見ておきましょう」


 柄ではないが、クロエは淀んだ空気を吹き飛ばすべく、努めて明るくふるまってみた。これは功を奏したようである。


「そ、そうだね、姉貴」

「はい。では皆さん、壁の反対側を見てみましょう」

「あ、ありがとうございます、クロエ様……」

「礼には及びませんよ」


 これも珍しくクロエが先導して、一行はクロエの作った壁の後ろ側に回り込んだ。


「ほう。これは……」


 最初にそれを見たクロエは、思わず感嘆の声を出してしまった。


 爆弾があったと思われる場所が抉れて窪みが出来ており、自慢の壁も歪んでいた。クロエの壁を曲げられる存在などこの世界にはそうそう存在しないが、それと同等の破壊力をこの片手で持てる爆弾は持っていたのだ。


 続いてそれを見た者も、皆同様に声を上げていた。


「威力は、十分なようですね」

「これで、お分かり頂けたでしょうか?」

「はい。そうですね。十分に使えそうです」

「すごいな、ゲルタ……」

「私ではなくこの爆弾がすごいのです」


 そもそもゲルマニアから盗み出した爆弾であるのだし。


 だが、この世界では類を見ない破壊力とは言え、たった一つではゲルマニアの塹壕戦を吹き飛ばすにまだまだ力が全然足りない。


「これを大量に作るということですか?}

「はい。作戦を実行する日になったら一気に魔法で生成して、ノエル様に爆破して頂きます」

「それなら、任せてくれ」


 不名誉なというか残念な形ではあるが、ノエルがこの爆弾を起爆出来ることは証明された。それも初見でこれである。


「ですが、大量の爆弾を爆発させる算段は出来ているのですか?」

「はい。それについては、エスペレニウムで導火線を引けば問題ないかと」

「なるほど」

「それは私も分かる」


 エスペレニウムを間に挟めば、直接触れていない物体に対しても魔法を行使出来る。正確には、離れた場所への魔法の行使はこの仕掛けがなくとも可能で、確実性を上げるというものであるが。


 遠くのものを動かしたり変形させたりする魔法はそう珍しいものではないが、直接目には見えない場所や非常に遠距離にある物体に魔法を行使するのは難しい。


 しかし、その物体と魔導士をエスペレニウムで繋げば、対象が見えなくとも、確実にその対象に魔法を行使出来るのだ。


「坑道を掘ってその中にエスペレニウムを埋めるってことで合ってるか?」

「はい、そういうことです」


 今回は無論、爆弾の近くで起爆などしたら生き埋めになってしまう。そこで、爆弾を埋めたところから坑道の外までエスペレニウムの導火線を作り、ノエルには外で魔法を使ってもらう形になる。


「しかし、大量の爆弾を使った実験が出来ないので、ノエル様にはぶっつけ本番でやってもらうことになりそうなのですが……」

「大丈夫さ。きっと何とかなる」

「すみません……」

「私は魔法だけは得意だからね。しくじったりなんてしないさ」

「ノエル様……流石です」


 この時のノエルは、妙に頼りがいがあるように見えた。

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