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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第十章 内政段階

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鉄甲船か小早か

 ACU2309 12/10 マジャパイト王国 ヌガラ島 サンコワン


「この島を制した後は、我らは海を渡り、ヴェステンラントを征伐しに参らねばならぬ」


 晴虎は諸将に告げた。更に先へと進軍する為には、どうしても海戦は避けられない。


「今後はヴェステンラント側も軍を整え、本格的に海戦を挑んでくるだろう」


 これまでは奇襲で勝利を掴んだが、今後は正面衝突は避けられない。ヴェステンラントは二度も同じ轍を踏むほど愚かではないだろう。そうであったのならとっくに大八洲が滅ぼしている。


「そこで、我が臣より、海戦に詳しいものを一人、ここに呼んだ。嘉信(よしのぶ)、出て参れ」

「ははっ」


 大名が連なる中ではかなり身分が低いこの商人のような男。若干禿げている。


「九鬼形部嘉信にございます」


 嘉信は諸大名に向かって跪いた。


「それで、一体どのようなものを見せてくれるのだ?」


 伊達陸奥守晴政は、品定めをするように尋ねた。嘉信は少々驚いた素振りを見せたが、すぐに商人の図太さで語り出した。


「それでは、こちらをご覧ください」

「ほう」


 嘉信は懐から小さな船の模型を取り出した。


 それは大船のようで、表面が全て鉄で出来ており、見たところ大砲と思しきものが艦内に搭載されている。


「儂のような老人には見にくいが」


 武田樂浪守信晴は不愉快そうに言った。が、嘉信はひるまない。


「申し訳ございませぬ。されど、こちらにもう一つ、模型を用意しております。どうぞご覧になってください」


 もう一つどころではなく、嘉信は最終的に七個の模型を取り出して、諸大名の見やすいように配って回った。


「――大儀である」

「過分なお言葉、恐悦至極にございます」

「……」


 大方が模型を見終わったところで、嘉信は説明を始めた。


「これは、ご覧の通り、鉄で覆われた燃えぬ船にございます。名を、鉄甲船と申します」

「そんなものが瀬戸内以外で役に立つのか?」


 実のところ、鉄甲船自体は新兵器ではない。およそ六十年前、まだ大八洲が乱世であった頃、強大な毛利家の水軍を打倒する為、上杉家の先々代である胤虎が造らせたものである。


 鉄甲船は僅か六隻で五百隻の軍船を沈める大戦果を残したが、この船はあまりに重く、内海でしか使い物にならなかった。


 因みに、これはゲルマニアが甲鉄戦艦を作り始めるより前の話。つまり、世界で初めて甲鉄戦艦を作ったのは大八洲皇國なのである。


「陸より離れた場所では、鬼道を用いて動かします」

「ほう。鬼道を用いると」

「はい。鬼道を用いることで船を神速で動かせることは、既に知られたことです」

「神速とはな」


 晴政は嘉信の大言壮語を笑った。が、嘉信は商人らしい薄笑いを浮かべ、適当に受け流しただけだった。


「また、この船には多くの大筒が積んであります。これを用いれば、ヴェステンラントの軍船など木っ端みじんに出来るでしょう」

「ゲルマニアの軍船にも同様の――いや、より強力な筒が積まれていたそうだが、それではヴェステンラントの軍船は沈まなかったと、儂は聞いておる。嘉信とやら、どう思う?」


 信晴は鋭く追及する。実際、ゲルマニアは最新式の施条砲を大量に運用したが、結果はヴェステンラントの圧勝であった。


「その所以と致しましては――彼らがヴェステンラントの軍船に近寄れなかったことがありましょう。信晴様ならお分かりになるかと思われますが、筒は近づけば近づくほど、強くなります故」

「……一応筋は通っているようだな。だが、近づいてしまえば筒などあろうとなかろうと変わらぬとは思わぬのか?」

「近づく事とくっつく事は別物であります故」


 信晴はそこまで近づいたのならば白兵戦に持ち込めと言いたい訳だが、嘉信はまたしても言葉巧みに追及を躱す。なかなか頭の切れる人間であるのは間違いない。


「言うではないか。だが、そうであるのならば、こちらにも考えがある。よろしいか、晴虎様」

「ふむ。構わぬ」

「虎吉! こちらへ参れ」

「はっ!」


 嘉信のように乗り込んできたのは、海賊の長でもやっていそうないかつい男。大名の前でもがつがつと歩く。


「村上兵部虎吉。信晴様のお呼びに応じ、参上仕った」

「村上殿か……」


 晴虎はにわかに関心を示した。九鬼と村上、大八洲の船戦といえばこの二人の名がまず上がる。そういう連中である。


 九鬼は上杉家に仕え、村上は毛利家に仕えている訳だが。


「武田殿、何故、村上殿をここに?」

「晴虎様なれば、必ずや九鬼殿を呼ぶと踏み申した。なれば、対抗馬の――虎吉を呼ぶしかありますまい」

「で、あるか」


 晴虎と信晴の間に、見えない火花が散っている。晴虎と嘉信という陣営と、信晴と虎吉という陣営の熱戦。諸大名はそれをよく感じ取っていた。


「では村上殿、そなたも何か策を持ってきたのであろう?」

「勿論です、晴虎様。模型なんて細かいものは持って来ていないが……これにございます」


 虎吉は懐から手に収まる程の鉄の球を取り出した。


「これは焙烙火矢と申す。ここにある火縄に火をつけ、敵の船に投げつければ、たちまちに燃え上がります」

「焙烙火矢……近頃は見ぬものだな」


 こちらも新兵器ではない。こちらは先の歴史でいうと毛利水軍が用いていた兵器で、これを用いた機動戦に上杉水軍は一度壊滅させられた。


 そんな因縁の品を持ち出させる辺り。信晴は老人らしく大人しくしている気はないようだ。


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