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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第十章 内政段階

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第二世代の新兵器Ⅲ

 ACU2309 12/6 アトランティス洋上


 ブリタンニアからヴェステンラントへ、長さは200パッスス近い巨大な戦闘艦が海原を進んでいる。この世界の技術力から考えれば、想像もつかないような巨艦だ。


 これこそが、ヴェステンラント海軍西方艦隊旗艦、ヴェルトルート級魔導戦闘艦二番艦、アリーセである。赤公オーギュスタンの乗る船でもある。


 因みに、先のカレドニア沖海戦においては、この船は遥か後方で待機していた。オーギュスタンの、司令官は決して前線に出ないという信条の為である。結果、未だにこの船の実力が証明されたことはなかった。


「こんな時に私を呼びつけるとは、シモンの奴は何を考えているのだろうな」


 オーギュスタンは人に聞こえるように独り言ちた。


 休戦期間とは言え交戦状態、そんな時に遠征軍の総司令官を本国に呼び戻すとは一体何を考えているのか。流石のオーギュスタンにも分からない。


 だが、面白いことが待っていそうな予感はしていた。


「きっと、大変なことがあったのだとは思いますが……」

「当然だ。そうでなくては」

「それもそうですね……」

「まあ、一体どんな楽しいことが待ち受けているのか、楽しみではないかね、セシル?」

「そんなのは殿下だけですよ」

「そうかね?」


 オーギュスタンはニヤリと笑った。


 ○


 ACU2309 12/9 陰の国 クバナカン島


 ヴェステンラントは南北に大きく二つに分かれており、その間はくびれのようになっている。その海域には沢山の島が存在し、クバナカン島はその中でもひと際大きな島である。


 この島はヴェステンラント海軍にとって重要な拠点となっており、大規模な軍港や造船所がいくつも立ち並んでいる。


 その一つに、オーギュスタン一行は呼び出されていた。


「ほう。これはこれは。面白いものを建造されているようだ」


 そこにあったのはアリーセを2回りほど大きくした巨艦であった。


「今はまだ張りぼてのようなものだが、すぐにでも進水させるつもりだ」

「女王陛下、御自らが指揮を執っておられるのか」


 オーギュスタンをここに招いたのは、ヴェステンラント合州国が女王、ニナ・ヴィオレット・イズーナ・ファン・オブスキュリテ・ド・ヴァレシアであった。呼び出したのは陽公シモンではなくこの人だった。


 女王という身でありながら、質素な黒いドレスを纏っただけの彼女。背はオーギュスタンの半分を僅かに超える程度で、体つきも実に子供らしい。


 だが、その中身はとても子供とは思えないものだ。


「ああ。たかが小島を1つ落としたくらいで調子に乗っている晴虎に、灸をすえてやらねばなるまい」

「これはこれは、末恐ろしい」


 彼女を知る人は皆、悪魔のようだと証言する。全てを見下しこの世界を将棋盤程度のものとしか思っていないのだと。もっとも、彼女が実際に何を考えているのか、知る者はいないが。


 今合州国を取り仕切っているのが宰相エメ――ニナの母であるのは、ニナが幼少であるからなどではない。対外的にはそういうことになっているが、実際は、彼女にとって国政が取るに足らないものであるからだ。


 だが、彼女が少しばかりでも熱を持ち始めた。これは何かが起こると、オーギュスタンは密かに期待していた。


「陛下、この船の名前は?」

「名は、イズーナ級魔導戦闘艦一番艦イズーナだ」

「ほう。イズーナとこれらたか」

「不満か?」

「いや、よい名前かと」


 イズーナ、始原の魔女イズーナ。合州国の生みの親であり、天下に比類なき最強の魔女。ヴェステンラント王家の家祖。


 この国で最も崇められている人間の名を冠するとは、相当な自信があると見える。


「そうか」

「この外観、ついに完全魔導化を計画されているのか?」


 その船には櫂めも帆もなく、言うなれば20世紀以降の船のようである。


「その通りだ。こんなものが魔法なしに水に浮く訳がなかろう」


 船の動力を魔法にするという発想は昔からあった。だが、万が一の事故――例えばエスペレニウムが切れた時――などを考えると、完全に魔法に依存した船というものは作られてこなかった。


「我がアリーセですら、非常用の櫂と帆を備えているというのに」

「そのような古き世は終わった。我々は、魔法を次なる段階へと推し進めねばならない」

「陛下が望まれるのならば、このオーギュスタンはどこまでもついて参ります」

「あの傲岸不遜のオーギュスタンが何を言う。気持ち悪い」

「何を仰るか。私は陛下と合州国の忠実な僕だ」

「なれば、精々それらしく振舞っているがいい」


 傲岸不遜が集まるとロクな会話が始まらない。その見事な実例がいまここに。


「ところで、私を呼び出された理由は? まさか、イズーナを自慢する為ではあるまい」

「そうだ。先のカレドニア沖海戦を経た貴公に、この船について何か意見があるかと聞くために呼び出したのだ。完成した後では遅いからな」

「なるほど。そういうことならば答えよう。大したことは申し上げられないが」

「何でもいい。聞かせろ」

「では――」


 オーギュスタンは思いついたことを片っ端から言い出した。

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