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魔法の杖には機関銃を!~魔法全盛の異世界に、現代知識と無双の魔法で覇を唱える~  作者: Takahiro
第十章 内政段階

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師団司令部Ⅱ

 特筆すべき人材その二。


 一歩歩くたびに鎧が当たるような、ガシャガシャという音を響かせ、体中に古傷の残る、どう見てもここにいるべきではないような初老の男。


「私はアドルフ・ゴットハルト・ナウマン。軍医です」

「軍医……?」


 どう見ても戦場の最前線で戦っていそうなのだが。とても医者には見えない。


「はい。シグルズ殿、あなたのお父上――戸籍上の、ですが――とは同輩でありまして、大北方戦争では戦場を駆けまわったものです」

「父と……」


 シグルズはその顔を知らないが、義母の旦那だった男、エリーゼの実の父だった男のことだ。


「はい」

「しかし、その、とても医者には見えないんだけど……」

「怪我人を前線から運ぶには、自らの身を守る必要がありましたから。そうしているうちに、いつの間にか敵からも味方からも死神のように恐れられておりました」

「そ、そうか……」


 何というか、恐らくは非常に頼りがいのある人間なのだろうが。どう接すればいいかまたも分からなかった。


「その、軍医として配属でいいんだよな?」

「はい。軍医が軍医にならずして、何になりましょうか」

「う、うん」


 一体その服の下に何が仕込まれているのかなど、気になることは多々あったが、取り敢えずは何も聞かないことにした。


 ○


「それでは、師団司令部の面々を発表する」


 あまり深くは考えず、シグルズは師団司令部の構成を決定した。


「ええ、まず、師団長はこの僕、シグルズ・フォン・ハーケンブルク。幕僚長はグレーテル・ヨスト・フォン・オーレンドルフ。また彼女には通信部長も務めてもらう。副官部長はヴェロニカ・フォン・ハーケンブルク。計官部長はエリーゼ・フォン・ハーケンブルク。医長はアドルフ・ゴットハルト・ナウマン……」


 等々。


 少し解説を付け加えるとすると、オーレンドルフ幕僚長はオステルマン師団長と同様に魔法の才があり、また魔導通信機を扱う経験も豊富ということで、通信部長を兼務してもらっている。


 基本的にこの師団は新兵器の実験師団であり、参謀の機能はそう重要ではない。そういうことで、幕僚長が他の仕事を兼務していてもまあ何とかなるだろうという結論に至った。


「そういう訳で、以後、この師団司令部を中核として師団を運用していく。師団各員には、早急に彼らの顔を覚えておくように命じる」


 以上、まだ赤子のようなものだが、第88師団はまっとうな師団として動き出した。


 ○


 ところで、ここにはハーケンブルク師団以外の人間が常駐している。ライラ所長率いる帝国第一造兵廠の人間だ。


 ライラ所長が言い出した、第一造兵廠のハーケンブルク城への移設。それは確実に進んでいた。


「殿下、この物資はどうやって運んでいるんです?」


 エリーゼはライラ所長に尋ねた。


「どうやって? うーん、まあ、馬車が殆どかなー」

「そうですか。でも、効率が悪いですよね?」

「うん、まあ」

「だったら、鉄道を引きません?」

「鉄道?」


 ここは一言で言ってど田舎だ。鉄道のての字もない陸の孤島である。辛うじて昔の轍が化石的に残ってはいるが、それ以外は何もない。


「ええ。帝都からここまで、鉄道を引けば、色々と楽ですよね?」

「それは、そうだけど。でも、そんな予算ないんだよね」

「でしたら、第二造兵廠からむしり取りましょう?」


 エリーゼの目に殺気が見えた。


「え? そんなこと出来るの? 第二造兵廠とか、全然関係ないけど」

「まあまあ、私を第二造兵廠に連れてって頂ければ、分かります」

「――そう。そういうことならいいけど」


 ということで、ライラ所長はエリーゼを帝都まで連れていくことにした。シグルズには許可を得ている。


 ○


 ACU2309 11/14 グンテルブルク王国 帝都ブルグンテン 帝国第二造兵廠


「お久しぶりねえ、クリスティーナ・ヴィクトーリア・フォン・ザウケル。私のこと、覚えてる?」


 エリーゼのその姿は、殺し屋と勘違いされてもおかしくないほどの恐ろしいものであった。


「え、ええ、もちろん……ひ、久しぶり、エリーゼ……」


 白衣の女性クリスティーナ所長は、完全に怯え切っていた。顔が真っ青である。


「まあ、今回は()()話ではないわ」

「そ、そう……」

「何かあったの。2人とも?}


 そんな空気を察せないのか無視しているのか、ライラ所長は呑気に尋ねた。


「ちょ、ちょっと、王女様……」

「そうねえ、では私がお教えしましょう、殿下」

「や、止めてえ……」

「ふふっ」


 クリスティーナ所長は泣きそうな顔で懇願したが、エリーゼは聞き入れようとしなかった。


「まあ、でも、そんな難しい話ではありません。クリスティーナ・ヴィクトーリア・フォン・ザウケルは、私に対する借金を踏み倒したんですよ」

「へー。クリスティーナってそんな子だったんだ」

「う……」

「正確には、借金ではないんですけどね」

「借金じゃない?」

「ええ。私が彼女に資金を援助して、彼女が軍で昇進したら私を帝国議会の議員にするって約束だったのですが、彼女は見事に裏切ってくれました」

「ご、ごめんなさいい……」


 クリスティーナは涙目で謝った。だが、エリーゼは冷たい目でそれを見下ろしただけであった。まさに悪魔である。

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