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アトランティス洋大海戦

 同刻。帝都、帝国大本営にて。


「我が総統、取り敢えず、最初の攻撃は成功しました。ガラティア軍の塹壕線は全て突破、味方の損害は軽微です」


 ジークリンデ・フォン・オステルマン上級大将は、シグルズにバルバロッサ作戦が成功に終わったことを報告した。かつてのシグルズの上司である彼女もまた順調に出世を重ね、軍の頂点たる参謀総長に就任していた。シグルズは今でも彼女に敬意を持っているので敬語を使われるのはむず痒いのだが、総統として振る舞わねばならなかった。


「報告ご苦労。予定通り国境線には最小限の守備兵力だけを残し、南部方面軍の主力百万でビュザンティオンを落とす。前の戦争と同じだな」

「前の戦争のような番狂わせが起こらないことを祈るばかりです」

「まったく、その通りだな」


 と、その時である。大本営に伝令が駆けこんで来た。


「我が総統、たった今、ヴェステンラントが我が国に宣戦を布告しました!!」

「随分と遅かったですね」

「ああ。ニナ陛下も、それなりに戦争を憂慮しているのかもな」


 あのヴェステンラントを滅ぼしたがっているヴェステンラント女王にしては動きが鈍い。ヴェステンラントにそれなりの情が湧きでもしたのだろうか。まあ宣戦布告をされた以上、ゲルマニア軍は20年間かけて準備してきたヴェステンラント大陸進攻作戦を発動するだけだが。


「やはり、ヴェステンラント大陸に攻め込むんですか?」

「ああ。国際連盟は崩壊した。世界に平和を再び取り戻すには、誰かが世界の覇者にならなければならない」

「我が総統がそんな覇権主義を唱えるなんて、意外ですね」

「現実を見るようになったと言ってくれたまえ。それに僕は、世界を支配する気なんてさらさらない。ゲルマニアが覇権を確立し全世界の戦争を抑止して初めて、全ての国々が対等に話し合いの席に着くことが出来るんだ」

「理想論だと思いますがねえ」

「そう言われても、まあ言い返せないが。レーダー上級大将、大洋艦隊の準備は整っているな?」


 かつて人類連合艦隊を率いてアメリカと戦ったレーダー中将は、ゲルマニア海軍の主力艦隊たる大洋艦隊の司令長官に就任していた。実質的な海軍の最高指導者である。本人は老い故に引退を希望しているが、彼以上の人気を持つ将軍は海軍におらず、シグルズが無理を言って現役に留まってもらっている。


「無論です。大洋艦隊は今すぐにでも出撃出来ます」

「ヴェステンラントとの戦いだ。用意は出来ているな?」

「かつて共に戦った同志と戦うのは心苦しいものですが、皇帝陛下への忠誠には一点の曇りもありません」

「よろしい。僕も同行するが、大洋艦隊のことは君に一任する。僕のことは気にせずに戦ってくれ」

「はっ」

「オステルマン参謀総長、留守の間のゲルマニアは君に任せた」

「任せてください」


 かくして大洋艦隊は出撃した。


 ○


 大洋艦隊は16隻の戦艦と6隻の空母を中核とし、戦闘艦艇は合計150隻を超える大艦隊である。戦艦は8隻ずつの2列に並んで航行し、その前後左右には駆逐艦と巡洋艦が潜水船や魔女戦力の警戒に当たっている。


 その3キロパッススほど後方には20隻以上の駆逐艦と10隻の巡洋艦に囲まれた空母機動部隊が控え、空母機動部隊旗艦の空母グラーフ・ツェッペリンにシグルズが乗り込んでいる。因みにレーダー上級大将は戦艦部隊の方の戦艦ビスマルクを旗艦としている。


 シグルズは艦隊に対して特に何の権限もなく、ただこの戦いを観戦しに来ただけのような存在であり、何かあるごとに報告を受けるだけである。


「我が総統、偵察艦がヴェステンラント主力艦隊を発見しました。イズーナ級魔導戦闘艦が22隻、レジーナ級魔導戦闘艦が12隻、その他小型艦艇多数とのこと」

「やはり木造船相手には電探は使えないか。水上艦艇は事前の予想より少し多いが、それだけか?」

「現在確認されている戦力はこれだけかと」

「我が総統、空母機動部隊が攻撃を開始するとのこと!」


 艦載機で敵の戦力を減らし、その後戦艦部隊で艦隊決戦に移行する。ゲルマニア海軍の基本的な戦術はこの言葉に凝縮されていると言えるだろう。グラーフ・ツェッペリンを始めとする空母達から一斉に艦載機が飛び立ち、甲板上に待機してあったものが全て飛ぶと艦内からエレベーターで次の艦載機が運ばれ、訓練通り順調に発艦は進んだ。


 先の大戦で使用された航空機より遥かに軽量化、高速化され、大量の爆弾と魚雷を搭載した攻撃機の隊列は、あっという間に視界から消えてしまった。


「さて、ヴェステンラントの不沈戦艦達を相手に、空からの攻撃は通じるかな」


 魔導戦闘艦を相手にして航空爆弾や魚雷がどれほどの効果があるのか、実験することが出来ない以上、今回の戦いで初めて効果が判明することになるだろう。


「第一次攻撃隊、総攻撃を開始しました!」

「どう出るかな」


 シグルズも手の汗握りながら報告を待ちわびていた。ヴェステンラント軍の魔導戦闘艦は幾らでも再生する為、完全に撃沈したか判定するのが難しいのである。

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