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ルーズベルトの宮殿Ⅱ

「しかしルシフェル、どうしてあなたが私と敵対するのですか? 我々は共に人類を管理する大天使の筈では?」


 シグルズとクロエは気にもかけず、ルーズベルトはルシフェルに尋ねた。


「君は機能不全を起こしているんだよ。人類を進化させる為に戦争を起こす、そこまでは大天使の役割の内だったが、自ら人類に手をかけては、もう君は大天使などではない」

「何を異なことを。世界が平和になってしまったら、もう人類の進化は望めない。一度滅ぼしてしまうしかないでしょう」

「本気で言っているのかい? 国際連盟が出来たところで、人類から戦争がなくなるとでも? その程度の予測すら出来ないのは、やはり機能不全だ」


 ルシフェルは当然のことのように言うが、クロエは眉をひそめる。


「私達、何か馬鹿にされてる気がするんですけど」

「は、はは、そうだね……」


 国際連盟も国際連合も何の役にも立たなかった過去を知っているシグルズとしてはルシフェルの言葉にも同意したいところだが、前世のことを引き合いに出す訳にもいかなかった。


「人類が話し合いの席に着くことこそが問題なのです。それでは進化は起こらない」

「そんな筈はない。君の言葉は詭弁だ。君はやはり狂っているよ。いつから君は狂ってしまったのか…………今思えば、君が戦争を積極的に扇動し始めたのは、アメリカを建国した頃からだったね」

「何が言いたいのですか?」

「僕はてっきり、君がアメリカを破壊を撒き散らす為だけの国にしたのだと思っていた。だが、どうやらそれは逆みたいだ。君はアメリカ人を扇動している内に、彼らに毒されてしまったんだ。彼らの破壊性こそが、君を変えてしまったようだね」

「まさか。私がアメリカを、世界に死をもたらす為だけの国を造ったのですよ。大天使の職務を遂行する為に」

「そう思いたいだけなんじゃないかな。君がアメリカ人を人殺しが大好きな民族にしたんじゃない。元々人殺しを愛するアメリカ人の中にあって、君の方が戦争に喜びという感情を見出すようになってしまったんだ」

「馬鹿なことを。大天使である私が、人間如きに思考を乱されるとでも?」

「その矜持が故に、君は自分が故障してしまったのだと認めたくなかったんだ」

「…………そうだったとして、だから何だと言うのですか?」

「君はかわいそうな被害者だ。アメリカ人という、神すら想定していなかった異常者の集団に壊されてしまったのだから。だが、故障してしまった機械は最早この世界には必要ない」

「ほう。私と戦おうとでも? 大天使はお互いに危害を加えることが出来ないと言うのに?」

「確かにそうだ。僕には君を殺すことは出来ない。だが、その手助けくらいは出来るよ」


 ルシフェルはルーズベルトを排除することを決定した。ルシフェルがルーズベルトに向かって手をかざすと、途端に彼の両腕が切れて落ちてしまった。


「ば、馬鹿な、神の赦しもなく、私を攻撃するなど……」

「攻撃じゃない。君のシステムを少々ハッキングさせてもらったんだ。君が派手に色んなものを作ったりしているから、ハッキングは簡単だったよ。これで君は、直接現世に干渉することは出来ない」

「ふ、ふざけるな……!」


 ルーズベルトはシグルズ達の前では初めて怒りの表情を露にし、ルシフェルに飛びかかろうとする。だがその前に、彼の両脚も切断されて、達磨のようになったルーズベルトは床に倒れ込んだ。


「さあ、シグルズ、こいつの本体はこの奥だ。この愚かな戦いを終わらせてくれ」

「わ、分かった。クロエ、行こう」

「ま、待て!!」


 ルーズベルトの言葉など耳に入れず、シグルズとクロエとマキナは部屋に奥に向かた。一本道の廊下の一番奥に、巨大な鈍色の円筒が一つ、安置されている。シグルズはすぐにそれが量子コンピュータの類の外殻であると察した。


「こいつがルーズベルトの本体、って奴か」

「そ、そうなんですか……?」


 クロエとマキナにはただの鉄塊にした見えなかった。まあ未だに電算機の一つも存在しないこの世界の人間なら、そう思うのも無理もないだろう。


「そうだ。とっとと破壊しよう」


 シグルズは地球製の対物ライフルを作り出し、鉄の円柱に向けると容赦なく引き金を引いた。


「何?」


 だが、円柱には傷一つ付かなかった。


「私がやってみます」

「ああ、頼む」


 クロエは自身の魔法の中で最大の破壊力を持つ槍を召喚し、力を込めて全力で叩きつけた。アイオワの装甲すら貫通した槍であるが、円柱に当たると槍の方が逆に砕けてしまった。


「あ、あり得ない…………」

「クロエ様、ここは私が」

「え、ええ、お願いします」


 マキナは先程のイズーナの魔法、火炎の魔法で円柱を焼いた。だが円柱は表面が少々赤くなるだけで、全く効いているようには見えなかった。


「ここまで来て、本体がこんなに堅いとはな……」


 と、その時、前後左右から拡声器に通したような気色の悪い笑い声が響いてきた。


『はははっ、無駄ですよ。大天使の核が、そう簡単に破壊出来る訳がないでしょう。いかなる魔法も、武器も、私には通用しません。残念でしたね』

「こいつ……」


 シグルズは何か言い返してやりたかったが、クロエの魔法ですら傷一つ付かない核を前にして、押し黙ることしか出来なかった。

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