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アイオワの戦い

 オリヴィアは丸太で出来た正方形の足場を空中に4つ作り、シグルズ、クロエ、クラウディア、朔はその上に立った。空を飛びながらだと制限される魔法が、こうして足場の上に立つことで自由に使えるのである。


「では、行きますよ、皆さん」


 クロエはこの場から一歩も引かない覚悟である。各々、魔法の杖や刀を抜いて戦いに備える。


「僕が火蓋を切らせてもらおうかな」

「お好きにどうぞ」

「じゃあ、遠慮なく」


 シグルズは対空機関砲を可能な限り召喚する。その数はざっと50門。全て四連装なので、合計200の機関砲が魔女の群れを狙っている。


「アメリカ人め、全員死ね!!」


 全ての引き金を一斉に引く。たちまち数万の砲弾が放たれ、アメリカの魔女は面白いように落ちていった。まるで蝿の群れに殺虫剤を吹き掛けたかのようである。


「では私も、行かせてもらいましょう」


 クロエも遠慮せず、数百の刀身を作り出して投げつけた。白の魔女の十八番とも言える魔法は、ゲルマニア軍にもアメリカ軍にも高い効果を持つ。熱せられた鋭い刀身は魔女の一本で数人の魔女の身体を貫通することが出来、シグルズとの十字砲火で魔女はあっという間に数を減らす。


「もうあの二人だけでいいんじゃないかな」

「さ、左様かもしれませんね……」


 クラウディアと朔は二人の圧倒的な殲滅力に呆気にとられていた。だが流石に二人だけで全員を殺し尽くすことは出来ず、クラウディアと朔に向かって何千もの魔女が突っ込んできた。


「まだこんなに残っているのか」

「ご安心を。大八洲で最強の武士たるこのわたくしにお任せくださいませ」

「自分で言うもの、それ?」

「そ、そう皆が呼んでいるだけにございます……。ともかく、武士がアメリカなどに負ける筈がございません!」


 朔は刀をアメリカ軍に向ける。すると次の瞬間、その刀から龍の吐息のような巨大な火炎が現れ、前方のアメリカ人を尽く焼き殺したのである。羽虫の巣を火で炙ったかのように、橙の火がついた魔女達は海に落ちていった。


「まるで赤の魔女のような魔法だ」

「わたくしは、あなた方が言う火の魔法だの水の魔法だのに拘りませぬ。全ての魔法を使いこなせてこそ、真の戦士と言えるのでございます」

「なるほど。一つ一つの魔法の質は最高とは言えないけど、その方が応用性は高い」

「お二人とも、敵が抜けて来ます!!」


 後ろで足場を支えるオリヴィアが叫ぶ。朔の炎を迂回してアメリカの魔女が幾らか近寄って来たのである。


「クッ……もっと広く炎を出せれば……」

「そのくらいは私に任せて。ここは黒の魔女の出番」


 水が豊富にある海上こそ、黒の魔女の出番である。戦闘に不向きな彼女でもここでならそれなりに戦える。クラウディアは海水を持ち上げると、瞬時に凍らせ数千の氷の槍を作り出す。そして敵がいる方向に向かってやたらめったらに投げつけた。ほとんどは外れたが、この氷の暴風の中で生きていられる魔女もまたいなかった。


 四人のレギオー級の魔女による対空砲火で、襲いかかって来たアメリカの魔女は全滅したのであった。が、その時であった。


「対空砲が……こっちを向いている!? マズい!!」


 シグルズはアイオワの対空砲や機銃が彼らに向いていることに気付いた。もう射線を遮るものは何もないのだから、アイオワが直接攻撃してくるのは自明の理であった。


「全員、すぐに防御を固めるんだ!!」


 シグルズの緊迫した声に、魔女達は直ちに反応した。シグルズとクロエと朔は一番丈夫な鉄の盾を作り、クラウディアは氷の、オリヴィアは木の盾の後ろに隠れる。もちろんレギオー級が作るそれは、砲弾すらものともしない強度を持っている。


 シグルズが警告してからほんの数秒で、アイオワは対空砲火を開始した。所狭しと並んだ機関砲から放たれる砲弾が押し寄せ、魔女達の盾を叩き付ける。


「なかなかの威力、ですね……」

「人間に当たったら、粉々になるだろうね」


 クロエですら壁を維持するのにそれなりの集中力を必要とした。アイオワの防御火器は元々戦闘機を叩き落とす為に造られたものであり、一撃の威力はレギオー級の魔女を相手にしても不足のないものである。


「防戦一方っていうのは、趣味じゃないんですがね……」

「同感だね。とは言え、少しでも身体を出そうものなら死が待っている」


 シグルズもクロエも攻撃に耐えることしか出来なかった。が、その時であった。


「爆発!?」


 シグルズを爆風と熱が襲った。すぐ近くで爆発が起こったのだ。


「こ、これ、は……」

「クロエ!!」


 クロエの左腕が吹き飛んでいた。彼女の左半身には大きな火傷がある。こんな重傷を負うのはさっきぶりだが、慣れられるものではない。クロエの意識はまたしても急速に遠のいていく。


「クロエ!!」


 シグルズは咄嗟にクロエの足元にテツの足場を作り出し、彼女が持っていた盾と共に宙に浮かべる。下手に飛び出せばシグルズも死にかねず、冷静な判断であった。


「シグルズ、大丈夫です!」


 オリヴィアが叫ぶと、クロエの火傷はたちまちに癒え、失われた左腕も復活した。これこそが青の魔女の本分である。

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