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艦隊決戦Ⅱ

「あ、あれは、蒼龍が……」


 輸送艦を飛び出したシグルズは、炎上する蒼龍の姿を目にした。蒼龍の飛行甲板は半ば崩れ落ち、その船体は端から端まで炎に包まれ、多くの兵士が海に投げ出されていた。恐らく燃料に火が着いたのだろう。もう蒼龍が沈むのは時間の問題だ。


「蒼龍と乗組員は……どうすれば…………」

「何をしているんですか、シグルズ。私達は私達の仕事をするだけです」

「あ、ああ、そうだな」


 クロエはシグルズを現実に引き戻した。蒼龍のことなど気にしている暇はない。それはレーダー中将の仕事である。シグルズとクロエはただ黙々と特攻機の輸送を続けた。


 ○


 同時に、レーダー中将は決断を迫られていた。


「閣下、すぐに蒼龍の救助活動を! 多くの兵士が漂流しています!」

「恐れながら、そんなことで足を止めては全艦隊がアメリカの餌食になります! 蒼龍は見捨て、逃げるべきです!」

「少し、待ってくれ……」


 蒼龍には多くの生存者がおり、救助を待っている。しかし救助の為に足を止めれば、ニュージャージーの主砲弾が鳳翔や飛龍を貫くだろう。レーダー中将は選択をしなければならなかった。


「閣下! いずれにせよ選択を迷っている時間はありません!」

「分かっている! 艦隊司令官としては、一隻の船の為だけに艦隊を犠牲にする訳にいかないことも」

「で、では……」

「主力艦は全て針路そのまま。戦列艦だけ、救助に向かわせる」

「はっ」


 ゲルマニアが保有する前時代的な木造帆船、諸々の物資を輸送する為に艦隊に随行していた戦列艦だけを救助に向かわせ、残りの艦隊は蒼龍を見捨てることにした。沈める価値のない船ならばニュージャージーは無視してくれると信じてのことである。


「特攻機は何機出せる?」

「特攻機、80が既に飛び立ちました!」

「少し不足だが……最早一刻の猶予もない。全特攻機はニュージャージー左舷後方より突入し、その機関を破壊せよ!!」

「はっ!」


 今やニュージャージーの照準が相当精確に定まっているのは明らかである。レーダー中将は直ちにニュージャージーへの攻撃を命じ、上空で待機していた特攻機は全てニュージャージーに向けて飛んでいく。一度にこの数で攻めれば、流石のニュージャージーとて対応しきることは出来まい。


 が、特攻機が出撃した直後のことである。


「か、閣下、あの奥に見える航空機は、一体……」

「奥? 我が軍の航空機ではない。ならば、アメリカがついに航空機まで出してきたということか……!」


 半ば予想はついていた。アメリカに戦艦があるのならば、空母もあるのだろうと。そして同時に、アメリカの戦艦が遥かに高度な技術で建造されているのと同様、アメリカの航空機もゲルマニアの技術とは比べものにならないほどに高い技術で造られていることだろう。


「て、敵機、我が特攻機を攻撃しています!!」

「特攻機に固定武装はない。そうなれば、お終いだ……」


 戦場に突如として姿を現したアメリカの戦闘機。その数は30ほど。この世界にはまだ存在していない筈の、航空機を落とす為の航空機であり、武装を持たない特攻機は完全に一方的に蹂躙される。


「か、閣下! どうされますか!?」

「一度艦隊を離れれば、特攻機と意思疎通を図ることは出来ない。彼らは……犬死にするしかない…………」


 無線機など特攻機には積んでいない。艦隊の近くに入れば手旗信号などで命令を出すことが出来るが、今や何の通信を行うことも出来ない。


「か、閣下! 敵機を落としました!!」

「何? どうやったんだ? いや、考えるまでもない、か」


 特攻機が戦闘機を落とす手段は一つだけ。敵機に体当たりすることである。幸いにしてアメリカの戦闘機もパイロットは操り人形であるようで、臨機応変に戦うことなど出来ない。特攻隊の以心伝心の連携によって、アメリカ軍機を何機か撃墜することに成功した。とは言え、特攻機が全滅するまでに落とせたのは5機程度のものである。


「閣下! 敵の航空機がこちらに向かって来ます!!」

「意趣返しという訳か……。特攻機は敵機に対し特攻を行え! そして全艦対空戦闘用意! レギオー級の魔女達も全員投入しろ!!」


 特攻の威力はゲルマニア軍が一番よく知っている。それを喰らえばどの艦も一撃で粉砕されるだろう。


「今上がっているだけでいい! 特攻機は全部突っ込め!!」


 次の攻撃に備えて鳳翔と飛龍なら発艦した特攻機は20機ほど。アメリカ軍機に向かって直ちに特攻を仕掛ける。


 が、真正面から突っ込んでは戦闘機の機銃に仕留められるだけである。特攻隊の半分が直ちに失われてしまったが、戦闘機の特性に気付いた部隊は戦闘機の上下左右から接近し、空中で体当たりを仕掛けて敵機を撃墜する。特攻隊は全滅し、敵を5機ばかり落とすことに成功した。


「敵機、まだ半分残ってます!!」

「対空砲火だ! 艦隊に近付けるな!!」


 アトミラール・ヒッパーとプリンツ・オイゲンに装備された対空機関砲および高角砲が火を噴いた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] アメリカ軍が魔法以上にチートですが、シグルズの召喚て何処まで可能なんですかね? 戦術核までいかなくとも、ハープーンやエクゾセみたいな対艦ミサイルが出せたら一気に現代戦チックな様相になり…
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