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新たな戦艦Ⅱ

「提督! 敵艦隊より通信が入っております!」

「またか……。繋げ」


 どうせまた挑発する為に通信しているのだとは思いつつ、レーダー中将はアメリカ艦隊からの通信を受けた。お互いに名乗り合うと、ルーズベルトは早速本題を切り出した。


『――あなた方の望遠鏡ならばこのくらいで見える筈ですが、我々の戦艦はご覧になりましたかな?』

「ああ、見えている」

『ならば話は早い。これらはあなた方の戦艦を沈めたミズーリの同型艦、アイオワとニュージャージーと申します。そちらから見て左がアイオワで右がニュージャージーです。性能はミズーリと全く同じ。あなた方の兵器ではとても敵いませんよ。それに、私が命令すれば今すぐ、あなた方を砲撃することが出来ます』

「……だから何だと言うんだ?」

『いつもの通りですよ。我々アメリカは慈悲深いので、降伏することを事前に勧告させて頂きます』

「…………降伏などするものか!! 我々はお前を殺す為にここに来たのだ!!」

『おやおや、それは残念。それでは今すぐ戦闘開始といきましょう』

「受けて立とう」


 レーダー中将は通信を切断させた。そして直ちに次の命令を出した。


「各艦、反転し全力で後退せよ!!」

「に、逃げるのですか!?」

「我々は奴らの射程に入っているのだ! 航空母艦が大砲の的になっては話にならん!」


 啖呵をきったはいいものの、人類艦隊がまずすべきことはアイオワとニュージャージーの射程圏内から脱出することである。艦隊は直ちに反転を始めるが、アメリカの戦艦はそれを待ってはくれない。


「敵艦発砲!! 主砲です!!」

「気にするな!! 動き続けろ!!」


 砲弾に当たらないように祈るしかない。艦隊は各々の軍艦が半円状の軌跡を描きながら向きを変えていく。軍艦というのは回れ右をするだけでも一苦労なのだ。


「まもなく着弾します!!」

「当たらないでくれよ……」


 レーダー中将はただただ神に祈るしか出来なかった。そして間もなく砲弾は人類艦隊に到達し、艦橋まで届く水柱が何個も出来上がった。鳳翔も衝撃を受けて左右に揺られるが、直接的な損害はなかった。


「艦隊はどうなっている!? 損害のある艦はあるか!?」

「我が艦隊……無傷です!! 一発も命中弾はありません!」

「よし……。まだ奴らにとっても遠距離のようだな」


 最初の斉射は全て外れ、事なきを得た。こんな威力の砲弾が装甲のない航空母艦に一発でも当たればまず無事では済まないだろう。再び斉射が行われるが、幸運の女神は人類に微笑んでくれたようである。かくして人類艦隊は無傷のまま反転することに成功する。


「全艦、全速力で敵艦隊から離れろ! 楚れと特攻機は出せるだけ出せ!!」


 向きを正反対に変え、全速力でアメリカ艦隊と距離を取る人類艦隊。直進を始めたところで鳳翔、蒼龍、飛龍から特攻機が次々と飛び立ち始める。特攻機が出る前に空母がやられることだけは避けたいからである。


「敵艦、こちらに向かってきます!!」

「逃がしてはくれないか……」


 アイオワとニュージャージーは人類艦隊を追いながら砲撃を行う。動きながらだと照準がブレるのか、砲弾は人類艦隊から外れたところに次々と落下した。


「奴らを引き離せるか?」

「だ、ダメです! 敵艦との距離、全く離れません!」

「やはり機関性能でも向こうに分があるか……。このままではやられるのも時間の問題。ならば、先に殺るしかない。特攻隊は何機出た?」

「現在、40機が出ています!」

「よし。全機、アイオワの右舷後部に突入し、機関を破壊しろ!!」


 レーダー中将は最初の目的をアイオワの機動力を奪うことに決めた。一度アイオワの射程外に抜けてしまえばこちらから一方的に殴れるからである。


「全機ですか!?」

「ああ、全機だ。アイオワの対空砲火を甘く見るべきではない」


 ミズーリには随分と多くの爆撃機を落とされた。特攻機は爆撃機より機動性は遥かに高いが、それで油断すべきではない。空母を飛び立った特攻機は全て、アイオワを攻撃しに飛んだ。


「全機、突入経路に入りました!!」

「敵艦、対空砲火を開始!!」

「特攻機、次々と落とされています!!」

「クッ……」


 アイオワの対空機関砲や高角砲による重層的かつ濃密な対空砲火は鉄の暴風と言った有様であり、特攻機を次々に撃ち落とす。たちまち特攻機の数は減らされ、半分を切ってしまう。


「何としても辿り着くんだ! せめてアイオワの主機を破壊しなければ!」

「特攻機、残り10!! 突入します!!」

「およそ5機、アイオワに突入しました!!」

「無駄死にではなかったか……」


 速度に特化させた特攻機はアイオワの舷側装甲を見事に貫き、装甲に大穴を開けることに成功したのである。アイオワの右舷からは人の目でも確認出来るほどの黒煙が上がっていた。


「どうだ? アイオワの速度は?」

「敵艦は速度変わらず!」

「あれで傷すら付かないのか……」


 レーダー中将はアイオワの耐久力に驚嘆した。だが、硬いならば壊れるまで叩けばいいだけのことである。


「特攻機を50機出せ。次は50機で、アイオワの機関を破壊する!」

「はっ!」


 装甲を破壊したところに一挙に攻撃を仕掛け、アイオワの推進力を破壊するという作戦である。

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