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帝都決戦Ⅱ

「我が総統! 親衛隊は壊滅しました! 敵はこの帝都に迫っております!!」

「何!? そ、そんな馬鹿な!」


 所詮は戦車を初めて運用しているような反乱軍が、まさか複数の実戦を経験している親衛隊機甲師団を打ち負かすとは、ヒンケル総統は夢にも思わなかった。それにあのカルテンブルンナー全国指導者が総統の期待を裏切るなど、考えられなかった。


「ど、どうすればいいんだ……?」

「一先ず、総統は避難を。帝都の防御機能は皆無に等しく、機甲師団相手に長くは持たないでしょう」


 フリック大将はすぐに政府要人の避難を提案した。


「それは構わないが、帝都が反乱軍の手に落ちるなど許されんぞ」

「それについては、帝国軍が反乱軍を撃滅いたします」

「なら私が避難する必要はないじゃないか」

「万が一の事態に備えてです。親衛隊機甲師という我が国最強の戦力を殲滅した敵が相手では、必ず勝てるとは言いかねますから」

「わ、分かった。勝てる見込みはあるのか?」

「もちろんです。我が軍の新兵器を試すのにちょうどよいかと」

「新兵器……例の特攻機か。まさかここで特攻するなんて言うつもりではあるまいな?」

「特攻機の原型となった急降下爆撃機を投入します。それでダメなら……その時はその時です」

「…………分かった。国家の大事を考え、私は帝都を脱出させてもらう。フリック大将、頼んだぞ」

「はっ!」


 帝都に残る帝国軍の部隊は精々訓練隊くらいである。それでもフリック大将は勝算を見出していた。


 ○


 ブルグンテンに進軍を続ける反乱軍は、空から急速に接近するそれに気付いた。


「陛下、爆撃機です! 爆撃機が現れました! 数は50ほどと見受けられます!」

「爆撃機。人類には今のところ対抗する手段がない兵器か」


 爆撃機に対抗する手段は極一部の空高く飛べる魔女くらいであり、その数は全世界で数人程度。それを除けば爆撃機を用意して体当たりするくらいだろうか。いずれにせよ実質的に無敵と言っても差し支えない。


「ど、どうされるのですか!?」

「案ずるな。そもそも爆撃機の主要な任務は敵の都市を無差別に攻撃すること。命中精度は高くない。全軍、先程のように散開せよ!」


 無論運が悪ければ死ぬだろうが、損害は十分に許容出来る範囲に収まる筈だと、ルートヴィヒは考えた。しかし爆撃機の様子はいつもと違った。


「あ、あれは……敵の爆撃機、何故か急に高度を落としてきています!!」

「何? まさか、高度を下げて命中精度を上げようというのか? だがそんな芸当は……」

「陛下! 接近しつつあるのは、我々の知る爆撃機ではありません! 全く新型の機体です!!」

「そういうことか!」


 ルートヴィヒは全てを理解した。ゲルマニア軍がついに戦術爆撃機を完成させたのだと。魔女のように空を自由に飛び回り地上の敵を蹂躙する兵器がついに完成してしまったのだと。


「敵機、急速に接近してきます!!」

「対空機関砲だ! 迎え撃て!」

「はっ!」


 まるで反乱軍に突進してくるかのような軌道で急速に降下する爆撃機の編隊。反乱軍は対空機関砲で迎撃を試みるが、元より魔女を想定した機関砲の性能では、急降下爆撃機に砲弾をかすらせることすら出来ない。


「だ、ダメです!! 全く効きません!!」

「やってくれたな……ヒンケル総統……」

「敵が! 敵がすぐそこにっ!!」


 爆撃機は急降下の勢いを乗せた爆弾を次々に投下した。爆弾は次々に戦車や装甲車の天面を貫き、あっという間に爆発四散させた。そして一通り攻撃を終えると、爆撃機は再び急速に高度を上げて飛び去った。


「クッ……随分とやられてしまいましたな。戦車は30両は失われたかと」

「それだけならば、まだ戦え――」

「陛下! 敵が戻って来ます!!」

「何!? まだ飽き足らぬと言うのか!」


 どうやら爆撃機の群れはまだまだ爆弾を抱えているらしい。一旦距離を取ったと思ったのは旋回するのに大きな距離が必要だったからだ。爆撃機の群れは反転し、再び反乱軍に襲い来る。


「万事、休すか……」


 流石のルートヴィヒもこれには何の対処も出来ず、最終的に戦車が100両以上一方的に破壊されてしまったのであった。幸いにしてルートヴィヒの乗る指揮装甲車は傷一つ負わなかったが、部隊の損害は深刻である。


「へ、陛下! まだ戦車が100両は残っています! 我々はまだ戦えます!!」

「……そうだな。ここで諦める訳にはいかぬ。全軍、帝都に向けて進軍を再開せよ!!」


 ブルークゼーレから鹵獲した戦車はまだまだ残っており、反乱軍はまだまだ有力なる戦力を保持している。しかし進軍を再開して2時間ほど、ようやく帝都の城壁が見えて来た頃であった。


「陛下!! またしても敵の爆撃機が現れました!!」

「こんな短時間で補給を済ませてきたというのか!?」

「そ、そのようです」

「…………終わりだ。奴らに再び襲われれば、我々に勝ち目はない」


 ルートヴィヒは逆に部隊を密集させて対空戦闘を行わせたが、効果は僅かであり、必死に敵機を3機ばかり落としている間に、反乱軍はほぼ壊滅したのである。


 そしてルートヴィヒや貴族達は急行した帝国軍によって捕らえられ、反乱は失敗に終わったのである。

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