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ミズーリ撃沈作戦Ⅱ

「はははっ! 全艦、衝撃に備えたまえ!」

「何なんだこの人は……」


 大八洲の特攻機で残るは30機ほど。ルーズベルトはそれらがミズーリに突入するのを心底楽しそうに見つめていた。爆撃隊は尽くミズーリに激突し、欠片も残らず爆散した。艦橋は激しい衝撃に襲われ、トルーマンは倒れ込んでしまった。


「まったく、日頃から運動していないから、この程度で倒れるのだよ」

「何を人間らしいことを言ってるんですか。で、どうなりましたか?」


 トルーマンは起き上がりながら尋ねる。


「君の目で直接見るのが早いよ」

「まあ、それはそうですな」


 トルーマンとルーズベルトは特攻機が突入した左舷を見下ろす。見ると、左舷の舷側装甲は大きく破壊されて艦内まで剥き出しになっており、副砲や対空砲はもちろん吹き飛んでいた。


「これは……随分とやられましたな」

「ああ。だが、バイタルポートはまだ無事だ。ミズーリはまだ戦えるよ」


 取り分け厚い装甲で守られている主砲などは未だ無事であり、使用可能である。


「しかし、装甲が破壊されて艦内が丸見えです。ここを攻撃されたらひとたまりもありませんぞ」

「それもそうだ。とは言え、ミズーリに近付ける存在などあるのかね?」

「また特攻機が来たらどうするんですか?」

「その時はその時だ」


 大八洲勢の第一次攻撃隊はミズーリを沈められなかった。だが人類は何としてもミズーリを沈める覚悟である。


「ん? 閣下、また来ました! 敵の航空機ですぞ!」

「おやおや、今度はどこから湧いて出てきたのかな?」

「方角からして、キューバから飛んで来たのでしょうな。ああ、今はクバナカン島などと呼ばれているのでしたか」

「なるほど。ゲルマニア軍が用意していた爆撃機か」


 再びミズーリに来襲する特攻機の数は100前後。特攻隊はどうやら、ミズーリが傷を負った左舷を目指しているようだ。


「大統領閣下、今度こそは真面目にやってくださいよ」

「もちろん、最初からそのつもりだとも。さあ、全艦対空戦闘を始めたまえ」


 とは言え、左舷の対空砲はさっきの攻撃で半分以上破壊されており、ルーズベルトが真面目に戦ったしても、ゲルマニアの特攻機を全て落とすのは難しかった。


「ほ、本当に大丈夫なのでしょうな?」

「それは保証出来ないな」

「ああ、もう、ダメそうですな……」


 トルーマンは諦めた。特攻機は40機程度が残り、ミズーリの左舷に再び突入したのだ。艦の内部で特攻機に搭載された爆弾が次々に炸裂し、たちまち船体は破断された。


「ふむ……どうやら船底から浸水しているようだ」

「そりゃあそうでしょうね。ここまでやられては仕方ありません」

「私には修理は出来ない。残念だが、ミズーリは沈めるしかなさそうだね」

「そうですか。まあ残念ですが、所詮は消耗品です。次の戦艦を建造すればよい話でしょう」

「一ヶ月くらいかかるが、待っていてくれたまえ」

「ええ。取り敢えず、脱出しましょう」


 ルーズベルトとトルーマンはミズーリを捨てた。もちろん使い捨ての兵士達など置き去りにして。かくして人類軍はミズーリを撃沈することに成功したのであった。


 ○


「作戦は成功したようだな、シグルズ」

「はい、殿下。多くの犠牲を払いましたが、特攻隊はミズーリは撃沈することに成功しました」


 シグルズはオーギュスタンに作戦の成功を報告した。シグルズこそがこの特攻作戦の言い出しっぺだからである。爆撃機を普通に使ったのではミズーリを撃沈することは出来ない。最も効率的に使わなければならなかった。


「き、君がこれを?」


 ローゼンベルク大将は狼狽して問う。


「はい、閣下。万が一にもアメリカ軍に情報が漏洩する訳にはいかなかったので、オーギュスタン殿や晴政様など極小数の人間だけで、作戦を進めました」

「私は信用ならないのか?」

「そういう話ではありません。例えどれだけ信用の置ける人間であっても、情報を知る人間は少なければ少ない方がよい。そして閣下は……失礼ながら、この作戦には必要ありませんでした」

「そ、そうか……分かった。これについては、これ以上何も言わん」

「ありがとうございます」


 作戦を知っていたのは人類軍総司令官のオーギュスタン、第一次攻撃を行った大八洲軍の最高指導者伊達陸奥守晴政、そして予備として編成したゲルマニア軍の特攻隊を指揮するレーダー中将くらいである。


「作戦は成功に終わった訳だが、シグルズ、あまり嬉しそうではないな」


 オーギュスタンは興味深そうに。


「……はい。我々は人類にとって最大の脅威であるミズーリを撃沈しましたが、戦艦シャルンホルストとグナイゼナウが撃沈された以上、依然として制海権は敵の手にあります」


 戦艦アトミラール・ヒッパーとプリンツ・オイゲンでは、二隻がかりで敵のイズーナ級を一隻食い止めるので精一杯である。ゲルマニア軍は建造途中であったグナイゼナウを失い、これ以上投入出来る戦力がない。次の戦艦が完成するには年単位の時間が必要だ。


「確かに。ではどうすればよい?」

「航空特攻の優位性は今回で証明されました。これを主軸にアメリカ軍と戦います」

「君もなかなか、政治家に向いてきたな」

「それほどでは」


 アメリカ軍に勝利するには、全ての手札を出し切る他にないのである。

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