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王都の戦いⅡ

「第一部隊、敵騎兵隊を殲滅。しかし、およそ半数の兵が、失われました……」


 アリスカンダルの期待した通り、普通なら全滅と言ってもいい損害を受けながらも第一部隊は統制を保ち、なおかつ敵を殲滅したのであった。


「よくやった。第一部隊はもう下がってよい。また第一部隊を援護する為、全軍を後退させる」

「はっ」


 流石にこれ以上戦わせるのは酷だと思ったのか、アリスカンダルは第一部隊を撤退させ、部隊を再編して彼の傍に配置した。第一部隊が抜けた穴に関しては他の部隊を再配置することによって塞ぎ、均衡状態を維持した。


「さて、アメリカ軍は次はどんな手を出してくるかな」

「まだコホルス級が姿を見せておりませんな」

「アメリカも貴重な魔女は払底しているか――」

「陛下、申し上げます! 敵、コホルス級の魔女、およそ2万が迫っております!!」


 所詮は魔導兵に過ぎない魔導騎兵とは訳が違う。レギオー級の魔女という規格外の存在を除けば最も優れた魔女であるコホルス級の魔女が2万。ガラティア帝国軍が保有するコホルス級の魔女の総数を上回るものである。


「ほう。どうやらこちらが本命のようだな」

「陛下、こ、こちらの魔女隊は総勢3千ほどしかありません。勝てましょうか……」

「最悪の場合、刺し違えればよい。それならば問題はなかろう」

「確かに、最終的な勝利は得られましょうが……」

「私達に、勝利の形という贅沢を言う余裕はないのだよ。ジハード、やってくれるか?」


 白布を顔に纏った少女、ガラティア帝国の魔女隊である不死隊を率いるジハード・ビント・アーイシャである。


「陛下のご命令とあれば、無論のことです」

「よろしい。不死隊全軍を率い、敵のコホルス級魔女隊を殲滅せよ!」

「はっ!!」


 既に臨戦態勢を整えているジハードと魔女達は直ちに飛び立ち、6倍を超える敵に向かっていった。


「かかれっ!! 陛下に仇なす者、一人残らず殺し尽くすのだ!!」

「「「おう!!!」」」


 双方の顔が見える距離に近づくと、ジハードは両手に持ったナイフを投げつけ戦いの火蓋を切った。そのナイフがアメリカ兵の喉を突き刺すと同時に、魔女達の攻撃がアメリカ軍を襲って次々に殺す。アメリカ軍も僅かに遅れて攻撃を開始した。


「防御を固めよ!!」


 ジハードは今回は慎重に戦うようだ。魔女達は各々鉄や土や木や氷の盾を作り出し、アメリカ軍の種々の攻撃を防ぐ。ジハード本人も鉄の盾を作り出しながら前進する。アメリカの魔女は彼女らを近づけまいと全力で攻撃を仕掛けたが、守りを固めた不死隊には全く通用しない。


「かかれっ!!」

「「おう!!」」


 アメリカ軍は目と鼻の先。ジハードはアメリカ兵に盾を叩きつけて殺すと、両手にナイフを持って上下左右のアメリカ兵の喉を掻き切った。不死隊の魔女達もまた、各々の武器を持って白兵戦を開始する。


「アメリカ軍など恐るるに足らず!! 真正面から粉砕せよ!!」

「「おう!!」」


 何の作戦もなしに真正面から突っ込んでくるアメリカの魔女に対し、ジハードも正面衝突で応じた。不死隊の技術はアメリカ軍などとは比べ物にならないが、しかし、当初はアメリカの魔女を食い破るように殺した彼女らも、アメリカ軍の圧倒的な物量の前に勢いが衰えてきた。


「クソッ! 進め進め! 奴らの目を逸らさせるな!!」


 ジハードは焦り、攻撃に次ぐ攻撃を命じる。アメリカ軍が彼女らを無視して地上を攻撃し出すことを恐れたからだ。空からの攻撃に対してファランクスはほとんと無力なのである。


 ジハード自身は両手のナイフで視界に入る魔女を代わる代わる殺したが、一人で出来ることには限りというものがあった。


「ジハード様、兵らに疲れが溜まっております・これ以上の攻勢は、兵を徒に消耗するだけです!」


 人数の意味でも体力の意味でも、魔女達は消耗している。最初の勢いに任せて5千人は殺せたが、それでも全く足りない。


「……ダメだっ! 全軍全力で攻撃を続けよ!! 退くことも止まることも許さん!!」

「し、しかし――」

「口答えするのならば、今この場で叩き切るぞ!」

「わ、分かりました……」


 ジハードは攻撃の手を緩めることすら許さなかった。ガラティア軍が最後に勝利を掴む為、不死隊を使い潰す覚悟である。


「一人残らず殺せ!! 誰一人として生かすな!!」


 単純な魔力で比べればレギオー級の魔女などとは比べ物にもならないジハードであるが、圧倒的な格闘技術を以てアメリカ軍を圧倒する。しかしジハードが100人を殺した頃には、味方の数は半分に落ち込んでいた。


「敵は残すところ半分だ!! このまま全員殺し尽くせッ!!」

「「おう!!」」


 更なる攻勢をかける不死隊。圧倒的に多数を誇るアメリカの魔女隊に対しても優勢を維持し続けその目を地上に向けさせることは一度もなかった。


「貴様で最後だ!!」


 ジハードは最後に残った魔女の首をナイフで斬り落とした。地上には無数の死体が無惨な姿で転がっていたが、そんなものに向ける心などジハードには残っていなかった。いつの間にか、生きている魔女は5百程度まで減っていた。

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