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イズーナ級再びⅡ

 さてその翌日のこと。シャルンホルストは最終防衛線に引き返し、第八戦区を目視出来るほどの近海に待機し、敵艦隊の襲来を待ち侘びていた。緊張した艦橋に、報告が入る。


「敵艦隊、南北に分かれました! やはり北の艦隊はアメリカ軍の援軍を運び、南の艦隊はここを目指しているようです!」

「予想通り、だな。敵は3隻で間違いないな?」

「はい。イズーナ級魔導戦闘艦が3隻、ここに向かってきております!」

「これを、絶対に食い止めねばならない。諸君、気合いを入れろよ!」

「「おう!!」」


 ここでしくじれば人類最終防衛線は瓦解し、人類は壊滅的な損害を被ることになるだろう。いきなり重責を背負わされることになって、シュトライヒャー提督の手は震えていた。


 ○


「敵艦隊を確認! 綺麗な単縦陣でこちらに向かってきています!」

「まったく、機械みたいな奴らめ。こちらもそろそろ前進するぞ! 進め!」


 一直線に並んで航行するアメリカ艦隊を見張りが確認すると、シャルンホルストはようやく動き出した。下手にアメリカ軍を刺激してその行動を変えたくなかったからである。望遠鏡で確認するも束の間、すぐに敵艦は主砲の射程に入った。


「敵艦隊、いつでも撃てます!」

「うむ……。まずは敵の手の内を見せてもらおう。主砲一番二番、撃ち方始め!」


 お互いに艦の正面を向けながら砲撃戦が開始された。もっとも、イズーナ級に正面方向を攻撃することは出来ず、一方的な攻撃であるが。主砲の射程ギリギリ、15キロパッススほどの射撃では、そうそう命中を期待することは出来ない。3回目の斉射にしてようやく1発の命中弾があった。


「命中! 砲撃の効果を認む!」

「問題は、それが修理されるかどうかだ。しっかり観察しておけよ」

「も、もう修繕されつつあるようです!」

「やっぱりか……。砲撃だけで沈めるのは困難なようだな。それもアメリカ軍が相手では」


 アメリカ軍は恐れを知らない。アメリカの魔女はどんなに自らの命が危険に晒されようとも船を修繕することを優先するだろう。砲撃は挑発程度にしかならなさそうである。


「このまま前進! 敵艦隊に肉薄するぞ! それと、砲撃は全ての艦に満遍なく当てろ!」


 シャルンホルストもアメリカ艦隊も全速力で前進する。シャルンホルストは砲撃を全ての敵艦に少しずつ当てた。敵を挑発して陸地に向かう可能性を少しでも下げる為である。


「敵艦までの距離、1キロパッススを切りました!」

「ここが正念場だぞ……」


 敵艦隊の先頭にある艦に真正面から距離を詰めるシャルンホルスト。船というものは案外速く動くもので、あっという間に両艦は肉薄した。


「行くぞ……! 突っ込め!!」


 シャルンホルストはアメリカ艦に真正面から突撃した。お互いの船首が正面衝突すると、イズーナ級の船首は砕け反対にシャルンホルストはほとんど無傷であった。敵のイズーナ級はすぐに回避行動を取り、シャルンホルストは敵艦に半ばめり込みながら横付けするような格好となった。


「橋だ! 橋を落とせ! 敵を逃がすな!!」


 シャルンホルストの甲板上に立てかけられた鉄塔のような構造物が落とされ、敵艦の甲板に食らいついた。以前ヴェステンラントのソレイユ・ロワイヤルを沈めた時に使った手である。本来の役目は敵艦に移乗攻撃を仕掛ける時の橋であるか、副次的な効果として敵の動きを無理やり拘束することが出来る。


 かくして一隻のイズーナ級を拘束したシャルンホルストだが、残りの2隻がどう動くかは運次第である。


「奴ら、どう来る……」

「敵艦、こちらに向かって来ます!」

「――よしっ! 勝ったぞ!!」

「まだ勝った訳ではありませんが……」

「そ、そうだな」


 シュトライヒャー提督が恐れたのは残りの敵艦がシャルンホルストを無視して進むことであった。だがそれは起こらず、アメリカ艦隊はシャルンホルストを挟み込むように舵を取った。反対側にもう一隻のイズーナ級が接近する。


「もう一度だ橋を落とせ!」

「はっ!」


 橋を落とし、もう一隻の動きも拘束する。シャルンホルストは両脇にイズーナ級を抱え、残り一隻はその外側に待機しているようであった。


「問題は、外にいる一隻がどう出るか、だな……」

「このままあそこに留まっていててくれればよいのですが……」

「そ、それどころではありません! 敵が大量にやって来ます!」


 こちらから乗り移る為の橋であったが、当然敵も使うことが出来る。いつものことだが、アメリカ兵は目の前に殺せる人間がいると殺さざるを得ないようだ。


「分かっているとも。イブラーヒーム将軍、任せましたぞ」

「ええ、お任せください」


 いつもならゲルマニア軍が不利な白兵戦に挑まざるを得なくなるところだが、今回はガラティア軍という頼もしい味方がいる。敵としては厄介極まりない連中であったが、味方としては頼もしいことこの上ない。


「さて……皆、このシャルンホルストがアメリカ人に奪われることは、我が国の誇りにかけて許されん! ここから一歩でも下がることは、ガラティアの戦士の恥と思え!」

「「「おう!!!」」」


 赤と金の煌めく鎧を身に纏うイブラーヒーム内務卿は、橋の守りを固める兵士達に事実上の死守命令を下したのである。

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