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決戦へ

 戦車は絶え間なく火炎を放射し、歩兵はアメリカ騎兵と接近戦を繰り広げる。シグルズは前線の上空に飛び、まずは目に付いた暴れ回っている騎兵を機関砲で粉砕した。


「か、閣下!!」

「喜んでいる暇はないぞ! 今のうちに前線を押し上げろ!」

「はっ!!」


 シグルズが一気に敵兵を殲滅したところで、兵士達は一気に前進する。騎兵がこれ以上陣形に侵入することは許されない。シグルズはあちこちを飛び回り、次々と騎兵を殲滅して何とか前線を立て直す。


『シグルズ様!! 左翼に敵歩兵が突入しました!!』


 ヴェロニカから通信が入った。火炎放射器で何とか食い止めていた歩兵がついに前線に到達したのである。


「クソッ……僕が食い止める!」

『は、はい!』


 歩兵に到達され戦車も破壊され、炎は途絶えている。シグルズは直ちにその場所に向かい、上空から機関砲弾をばらまいた。密集して突入するアメリカ兵を薙ぎ払う。が、それはシグルズがその場から動けないことを意味していた。


『第二大隊、騎兵に押されています!』

「そろそろ限界か……」


 オーレンドルフ幕僚長も地上で奮戦している筈だが、それでもとても間に合ってはいない。各所に騎兵隊が侵入し、歩兵を叩き斬っていた。


 が、その時であった。突如として旅団に群がるアメリカ兵に砲弾が降り注いだ。


「味方か……?」

『シグルズ様! 第89機甲旅団が援軍に来てくれました!!』

「ヒルデグント大佐か。これなら、勝てる」


 戦車と装甲車を全速力で走らせながら、アメリカ軍の側面に姿を現した89機甲旅団。砲撃と射撃を行いながら、既に両機甲旅団の砲撃で隊列がバラバラになっているアメリカ軍に側面から突入した。


 ○


「歩兵隊、降車し戦闘開始! アメリカ兵を殺し尽くすのです!!」

「「「おう!!!」」」


 装甲車で突入すると、ヒルデグント大佐は白兵戦を開始するよう命令した。兵士達は一斉に装甲車から降り、突撃銃を片手にアメリカ兵の群れに突撃していった。もちろんヒルデグント大佐自身も敵陣に突入する。


「アメリカ兵など質の低いヴェステンラント兵に過ぎません! 怯むな!! 殺し尽くせ!!」

「「おう!!」」


 ヒルデグント大佐は目の前にいたアメリカ兵の腕を掴んで剣を振り下ろすのを封じると、その兜の隙間に銃口を突っ込んで眼球を撃ち抜き、目にも留まらぬ間に殺した。アメリカ兵に回避行動などという概念はない為に、鎧の隙間を衝いて簡単に殺すことが出来るのである。


 まあここまで優雅に敵を殺せるのはヒルデグント大佐本人くらいのものであるが、彼女の下で無茶な戦いを生き延びて来た兵士達もまたアメリカ兵を圧倒していた。腕さえ破壊してしまえばアメリカ兵には何も出来ず、簡単に殺すことが出来るからである。


 とは言え少しでも油断すれば一太刀で体を真っ二つにされる。一部の猛者を除けば一方的な展開とは言えたものではない。第89機甲旅団も少しずつ兵力を削られていった。


「て、敵が集まって来ています!」

「それならば好都合です。楽に皆殺しに出来ます」

「そ、それは……」

「総員、一旦下がってください!」

「は、はっ!」


 打って変わって後退を命じるヒルデグント大佐。歩兵達は戦車の影に隠れ、突撃銃で射撃を開始した。周囲のアメリカ兵の目はヒルデグント大佐に移り、1万人以上の兵が彼女らを殺しに集まって来る。


「さて、火炎放射器、放て!!」


 群がる歩兵を火炎放射器で焼き払う。一気に3千人ほどを焼き殺した。


「突撃!! このまま皆殺しにせよ!!」


 火炎放射器で一気に敵兵を削ったところで再び突撃。ヒルデグント大佐はひたすらアメリカ兵を殺しまくった。そしてついに、全てのアメリカ兵が戦闘を停止し、何事もなかったかのように反対方向に歩き始めた。10万人を殺し切ることに成功したのである。


「これがアメリカ軍の撤退ですか……。まるで私達など眼中にないようですね……」


 アメリカ兵の異常な様子を始めて見て、ヒルデグント大佐は驚きを隠せなかった。


「ほ、放っておくのですか?」

「ええ、そうしましょう。気が変わられたら困ります」

「はっ」


 ヒルデグント大佐もシグルズも、背中を無防備に晒すアメリカ兵を攻撃しようとは思わなかった。下手に刺激すると何が起こるか分からない。


 さて、戦闘が終息した後、ヒルデグント大佐はシグルズの許に向かった。


「ヒルデグント大佐か。ありがとう。君達が来てくれなかったら、僕達は全滅していたよ」

「私達は命令を受けただけです。まあ、最初の命令から無理がありましたからね。閣下のすぐ後に私達も駆けつけたんです」

「まあ、当たり前ではあるか。君達の損害はどうだ?」

「若干です。考慮に値するほどではありません」

「こっちは2千は削られた。まあ壊滅だね」

「到着が遅れ申し訳ありません。しかし、それでは機甲旅団としての行動は無理ですね」

「言ってくれるじゃないか。だが、まあそうだな。独立して行動するのは暫く無理だろう」


 第88機甲旅団は壊滅し、再編制も望めない。こんなところでゲルマニア軍は貴重な戦力を失ってしまったのである。


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