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オリヴィアの戦い

 一方その頃。青の国の首都モンタナにて。


「怪我をした者はすぐこちらに! 私が治します!」

「あ、ありがたい……」


 最高の治癒の魔法を持つ青公にして青の魔女オリヴィア。彼女は自身の都であるモンタナに立て籠り、兵士達が傷つく度にその傷を癒していた。お陰で軍団の士気は高く、アメリカ軍の度重なる攻勢も余裕を持って撃退することか出来ていた。が、アメリカ軍はそれに痺れを切らしたようだ。


「殿下! 魔女です! コホルス級の魔女が迫っております!」

「他の戦場と同じですね。こちらも魔女隊を出して応戦します! 出撃!」

「「おう!!」」


 絶望的な兵力差の空中戦が始まる。兵士一人一人の力量ではこちらが上回っているものの、5倍程の兵力差を前にしては押されるのも必定。魔女達は次々と落ちていく。


「あっ……彼女達を救わなくては……!」

「で、殿下! もう手遅れです! あれほどの高さから落ちれば、まず助かりません!」

「クッ……」


 空中戦で傷付き墜落すれば、その先に待っているのは死のみである。オリヴィアには死んだ人間を生き返らせることは出来なかった。


「私にもっと、戦う力があれば……」

「殿下の治癒の魔法に我らは大いに救われております! どうか、お気を確かに!」

「す、すみません。私がこんな調子ではいけませんね」


 オリヴィアは聡明だ。短期的に耐えられても、最終的に敗北が待っていることは容易に理解出来た。そのせいで気が沈み、精神の均衡は崩れそうになっていたのだ。と、その時であった。


「殿下、何者かから通信が入っております!」

「何者か? この状況で私達以外に存在するのは、アメリカだけです。繋いでください」


 アメリカ軍が接触を図ってきたと判断したオリヴィア。その通信を自ら受け取った。


「はい。私は青公オリヴィアです。そちらは?」


 そして通信機から聞こえてきたのは、いやらしい不愉快な男の声であった。


『これはこれは大公殿下でしたか。私はジミー・ドーリットル。アメリカ軍の将軍です』

「将軍? そんなものがいるとは……」

『これまではいませんでしたとも。プログラム通りに動く兵士で十分だと思っていましたが、予想外にあなた方の抵抗が粘り強く、少々本気を出すこととしたのです。以後、各戦線は人間が指揮することとなりましょう。これまでのようには行きませんよ』

「……そうですか。情報提供ありがとうございます。その為だけにわざわざ接触を?」

『まさか。あなたに降伏勧告を行う為です。あなたは民や家臣の命を思いやる立派な君主。これ以上の戦いで人々が傷付くのは見ていられないでしょう。ですから、無条件降伏をして下さるのなら、青の国の民は助けてあげましょう。畏くもルーズベルト大統領閣下のご慈悲です』

「へえ、そうですか。面白い提案ですね」


 命だけでも助かるのならそれでいい、という思想はオリヴィアの中にある。だが、アメリカ合衆国で一生奴隷として生きることが、本当に生きていると言えるだろうか。


『――ご返事は?』

「アメリカの奴隷となるくらいならば、死んだ方がマシです。無条件降伏など受け入れる訳がありません」

『左様ですか。残念です。それでは、皆殺しにして差し上げます』

「……あなたは、ルーズベルトに忠誠を誓っているのですか? それとも、彼の操り人形なだけですか?」

『これは異なことを。私は無論、ルーズベルト大統領閣下に忠誠を誓っています。理由は簡単。彼は神だからです。彼は私が欲しいままに人を殺せる状況、軍団、武器授けて下さる。これ以上優れた指導者がこの世にいますでしょうか?』

「あなたは人を殺すのが好きなのですか?」

『ええ、もちろんですとも。アメリカ人は皆、人を殺すのが大好きです。その為ならば、自らの命が失われることすら厭わない』

「狂っていますね。これ以上あなたの話すのは不愉快です」


 オリヴィアは通信を切断した。これ以上ドーリットルなる狂人と話すのは時間の無駄だ。


「で、殿下……」

「敵は、私達を皆殺しにするつもりです。ですが、このモンタナを明け渡すつもりもありません。私達は彼らを撃退するまで戦い続けます」

「はっ!」

「さて……射撃用意! アメリカ人を根絶やしにしてやるのです!」

「「「おう!!!」」」


 かくてモンタナは決死の抵抗を続け、10万人ほどのアメリカ兵を打ち倒した。


「で、殿下! 敵が撤退していきます!」

「や、やっとですか……。しかし、 これ以上の戦いは……」


 敵軍の3分の1を殺したことで、アメリカ軍は自動的に撤退を開始した。だが、ヴェステンラント軍もまた、壊滅的な損害を被っていた。オリヴィアの魔法で一時的に治癒しても、その効果は1日で切れる為、余程重傷の者を除いては負傷兵に逆戻りだ。


「申し上げます。戦える兵は、今や1万も残っておりません。アメリカ軍が再度攻撃してくれば……」

「分かっています。私達は十分やりました」

「で、殿下! アメリカ軍が! アメリカ軍がまた来ました!」

「んなっ…………これも、敵に指揮官が着いたからでしょうか」


 アメリカ軍は部隊を再編すると、たったの1日で再攻撃に出た。オリヴィアは絶望させる為にわざとやっているとしか思えないやり口だ。

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