表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すべてを狂わす黒い瞳  作者: 大門寅吉
1/3

斯くして赤子は魔女に拾われた

 寒い、冷たい。

 空から降る雨が俺の全身を打つ。

 大袈裟にも大風とは言い難いポツポツとした雨だが、()()()()には堪える。


 俺は気が付いたらこの姿――赤ん坊の状態で道端に捨てられていた。

 それ以前の記憶はなく、なぜ自分が今このように思考が出来ているかもわからない。

 かといってこんな身体じゃあどうすることも出来ない。

 さほど遠くない終わりを、身を震わせて待つしかない。

 そう思っていた。


「ほう、捨て子か」


 妖艶さと聡明さを含んだ美しい声が目の前から聞こえた。

 そこには紫色の髪をした一人の可憐な女性がいる。

 年齢は20代中ごろ、漆黒のローブに起伏の激しい身体を包んでいた。


 彼女はおもむろに俺を抱き上げた。


「この雨の中、泣き声1つ上げないからとっくに死んでいるのかと思ったけど……」


 彼女はその翠色の瞳で俺の顔を覗き込む。


「……なるほど黒色の眼か。これが不気味で捨てられたのね」


 彼女のまなざしから同情を感じることは出来なかった。

 しかし、そこには共感の色がありありと浮かんでいた。

 俺は察した。おそらく彼女も迫害された身の上なのだろう。


「……私と来るか?」


 自覚はなかったが、雨に随分と体力を奪われていたのだろう。俺はうなずくことも出来なかった。

 ただただエメラルドのような瞳をまっすぐ見つめ返した。


「……」


 彼女は何も言わず、俺を抱えたまま歩き出した。


 こうして俺は不老不死の魔女――セレナに拾われた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ