ダツ
10年以上前に友人達と何かの勢いで設定だけ考えたのを思い出しながら書いた物語
酒飲みながら書いたから酒飲みながら読んでくれな
21XX年
世界は歴史上稀に見る“厄災”に覆われていた
地は裂け、海は枯れ荒涼たる大地が広がっている
そんな世を憂い、救おうと1人の男が発明を行なっていた
その男は“狂って”いた
本気で人を、世を救う気でいた
草花を少量の水分で培養、汚染された水の“ろ過”装置を作ろうと
しかし、その男は夢半ば、病に倒れた
世界は更なる混沌に覆われ、地上は環境に適応し、変異した“生命体”(けもの)が支配し、人間は地下へと避難していった
そして、その地上は己が持つ“武力”(ぶき)を駆使し、とある生命体に支配された
“ダツ”である
奴らは地を、空を、枯れ果てた海を飛び回り目に見える他の生命体を仕留め、地上を制圧した
そのダツは変異を重ね、魚の繁殖力を保ちつつ持ち前の鋭利な顎を保持しながらも環境に適応、肥大化し、他の生命体に突き刺さり殺戮を重ねていった
変異前のダツは藻などに産卵していたが適応し、岩場などに産卵し繁殖していた
太陽の光の反射を頼りに仕留める事も可能になるなと適応を重ねていった
そのダツを仕留めようと名も無き戦士が立ち上がった
このおとこは黒人の持つ天性のバネを、筋力を頼りに身体一つで戦っていた
これは突然変異し、地上を支配したダツを仕留める1人の戦士の物語である
???「15匹か・・・そろそろ日も登る・・・これで今日は終わりだな」
この日も戦士は仕留めていたのだ
“ダツ”を
鍛え上げられた広背筋
身体を支える四頭筋
敵を仕留める上腕筋群
そして月明かりに照らされ黒光りする強靭な肉体
戦士の狩りは単純だ
月の出る夜に己が身体一つで地上へ出て、明かりに反射する身体の光に狙いを定め飛んできたダツを肘、膝で挟み潰す
これを繰り返した事により戦士の肘、膝は常人の"それ"よりも屈強になっていた
???「流石に3日連続は堪えるな・・・そうだこれがあったな」
戦士は徐ろに袋へ手をやると一枚の葉を取り出した
コカの葉である
夢半ばに倒れた科学者の夢を継いだ有志により培養されていたのである
???「そろそろ戻るか・・・ん?」
一息ついていた戦士は背後から風を切る音を感じる
???『なんだあいつは・・・!?脚が4本生えてやがる・・・!?』
他のダツを凌駕する速度を“ソレ”は持っていた
???「“ガラパゴス”か・・・」
変異を重ね、地上など環境に適応していった“ダツ”の中には染色体異常によりさらなる変異を遂げた個体がいる
所謂「“ガラパゴス”ダツ」である
その“ガラパゴス”ダツには人間に近い手足を保有、バッタ並みの跳躍を可能にした脚部、そしてチーターのように四足歩行による瞬発力を得たという様々な個体が確認されている
それを人々はかつてのガラパゴス諸島になぞらえてガラパゴスと呼んでいた
そして戦士が今、相対したソレはその中の“チーター型”であった
???「だがよ・・・速いだけじゃ俺を仕留められんぞ!!!」
ダツのアゴは戦士の脇腹を掠め、“チーター型”の頭部は戦士の肘、膝に挟まれ潰れていた
???「これで・・・16匹目か・・・」
このような特異な個体はガラパゴス諸島に生息していた「ハイブリッドイグアナ」同様、“繁殖能力”を持たない為一世代のみだが個々の力は通常の“ダツ”を遥かに凌駕している
戦士が肘、膝に頼る闘いになったのもこの“ガラパゴス”型とほ闘いにおける負傷により右手そのものを失っていたからである
???「クソが・・・変異型を見る度に無いはずの右手が“疼き”やがる・・・」
そう戦士は呟くと右手を抑えるのだ
戦士の名前はアダムス
この物語は戦士、「アダムス」のダツを打ち滅ぼすべく闘う物語である
もう一度言おう、“ダツ”を打ち滅ぼす1人の戦士の物語なのである
アダムス「今日はイクラ丼にするか」