002.遠い遠い宇宙の彼方にある惑星の未知なる生命体な私
初投稿です(大嘘)
世界観構築は大変ですね・・・。
ダイ・ラピアによって起こされた祖父の歓喜の声と、両親の驚愕の表情はおそらく「僕」にとって一生涯忘れられないサムシングだろう。とはいえ「私」の立場からすれば、ひたすらに申し訳ないところでしかないのだが。なにせ死んだと思った子供がよみがえったら中身別人が入っているようなものなのだ、本来なら合わせる顔がないのである。
そしてこの現状を素直に話すべきかどうかというのもまた微妙なところであって……。
もっとも、このあたりはダイ・ラピア氏が代行してくれた。
『蘇生には成功したが、このツルギ少年の精神は我らサスピリが住まうアストラル世界、その深奥に触れてしまった。端的に言えば、我らが持つ知識の一端を手に入れてしまったのだ。それ故に混乱しているが、問題はない』
中途半端に真実なんだかどうなのだか、微妙なコメントである。ただ両親は納得した様子だったし、祖父はひたすら私に謝り倒しだったりもして、はてどうしたものかと頭を悩ませた。
もっともそんな私などおかまいなく、父は仕事と言って遠方に戻り、再び「僕」の家族にとっては当たり前の毎日が帰ってきたらしい。特に「僕」の回復というのが祝い事をするレベルであるのかどうかは不明だが、父がとにかく忙しそうなのは理解していたし、夕食がハンバーグらしき何かであった――要はちょっとゴージャスなものである――ので、それが代わり的なサムシングなのだろうか。
個人的にはコーラとなんこつの唐揚げが良いのだが、それはともかく……。
とにもかくにも状況整理である。
まず第一に考えるべきは「私」がおかれたこの惑星そのものについてだ。
スクール、学校に戻る前に休養として一日二日の時間を確保した私は、手始めに情報収集を試みた。
とりあえず自宅にあるスクールへもっていくカバンから、教科書だの何だのをひっくり返して、手始めにこの惑星について確認した。
結論を言ってしまうと、なんというか色々と恣意的なサムシングを感じざるを得ない世界というか、惑星の生態系というかである。
第一に、この惑星「サムスター」に住む知的生命体は「ヒト」である。
……そう、自らをヒトと呼ぶ種族、つまり人類的なサムシングである。
外見上は「私」の記憶にある地球人とそう差はない、というかほぼないと見て良い。
知能や文化の発展などは大小違いはあるのだろうが、そこまで細かくはわからない。少なくとも文明発展で言えば宇宙開発途中という点で「私」がいた時代の地球とそう大差はないように思う。
ただし、この惑星のヒトとはイコール人類ではない。
その証拠にヒトは、恐るべきことに食事を必要としない。水や空気は必要だが、それ以外は生きるのに直接は要らないのだ。霞食って生きるとか仙人かな?
参照資料がスクール(おおむね小学校に相当する)あたりのものなのでデータが若干かみ砕かれているもの、要するに「僕」含むヒトとは、哺乳類のそれではない。
確かに惑星が違うのだから大気やら何やら気象条件も異なるだろう。生物の生態系も異なるだろうことは納得できるところもあったが、ではヒトは何から進化したかというと、おそらくバクテリア的なサムシングから直接であると考えられているから意味が分からない。
このあたり、どうにも神話などでサムワンスピリッツによって創造された(進化を促された?)ような記述があるらしく、目下研究中とのことである。……ヒト以外、動植物の類についてはおおむね進化論があてはめられていることからしても、ヒトの出現のみ何か異常な手が加えられた、と言われてるに等しいのだが、この惑星の研究者たちは色々大丈夫なのだろうか。
もっともこのあたりが、この惑星(のこの国)で使われている言語体系が、地球のそれと大差ないことの原因かもしれないが。明らかに何かしらの手が加えられていることを感じさせる(私のようにサムワンスピリッツによって、地球の記憶とかを持ち込んだ誰かが広めたりしたのだろうか)。ちなみにお金の単位、ものの長さや重さなどの表記も大差ないものであり、混乱をさらに加速させる。
もっとも全く食事をとらないという訳ではなく、このあたりはまた別な事情もあって必要になるときもある。生存に必要がない時点で充分、地球人類でないサムシングと呼称するに足る訳だが……。
なお食事について必要ないとは言ったものの、睡眠時間は必要であるらしい。確か睡眠とは脳の情報整理的なサムシングだったはず。なのでそのあたりのスペックはあまり違いがないとみて良いのかもしれない。
部屋の内観とか文化的なサムシングも「私」が居た現代文明のそれとそこまで大きな差はないように見える。テレビもあるし冷蔵庫もあるし、空調もあるので快適だ。ゲームも漫画も溢れている。
しいて言えば発電システムがサスピリに頼ったものになっていたりして、電線ではなく大きな電池的なサムシングを定期交換するようになっているとか、スマホ的なサムシングがないとか、そういうところだろうか。
とりあえずここまでで思ったことは。
「何というか、ゲームとかでよく主人公たちが食事をとらなかったり、電柱もないのに都合よく電気的なサムシングが通っていたりとか、そういうサムシングだよなぁ」
この一言につきる。
恣意的な世界観に感じるというのは、ひたすらこの感想に由来する。
例えば件のポケット的なサムシングで言うと、プレイヤーが基本的に食事をとる描写もなくずっと草むらを探索することも可能であったりとか、やはり特に休息らしい休息をとらず(※手持ちの回復は除く)延々と自転車を漕いだりとか、そういった不合理を再現するために調整されてるようにすら感じる。
もっとも病気とか傷害とかそういうサムシングは普通にあるので、何も完璧に恣意的なそれであるという訳でもないようだが。
状態異常……とか思ってしまった私も、たいがい毒されているのかもしれない。
いったんそういったサムシングはおいておいて、今度は「僕」個人の情報について。
おおむね百十センチメートル程度、他の八歳の他の子に比べて体格は小さい方だ。体重も軽い軽い。三十キログラムもない。
容姿は人並み……、というにはいささか愛らしく見えるが、このあたりはナルシスト的なサムシングではなく年齢からくる「いたいけ」とかいうサムシングだろう。「私」がそこそこのオッサンであることもあいまって、世話を焼くくらいの子供は総じて可愛らしく見えるとか、そういう父性的サムシングだ。ロクな女性経験もいなかった身分で何を言ってるかというサムシングではあるが。
アウトドア寄りかインドア寄りかと言われるとアウトドア寄りではあるが、スポーツマンだとかそいうサムシングではないようである。どちらかというと野に出て山を探索したり、釣り具をもって池だ川だのに釣り糸を垂らして捕獲して家に持ち帰ったりとか。「私」の幼少期を思い出す、田舎生活的なサムシングなようである。だからといって短パン小僧な恰好とかそういう訳ではないが。
私というより「僕」の日常というのは、つまるところスクール、学校通いである。
卒業は十二歳。学習内容はおおむね小学生から中学校低学年あたりのようで、それ以上の学習は別途、お金とかが必要になる。一般家庭は大体そのあたりで放り出されるようだ。
この惑星において、いわゆる成人制度みたいなものは十八歳から大人であるのだが、その前に十二歳よりプレ成人のような扱いになる。具体的に言うと、自らサムワンスピリッツと契約をできるようになるのだ。
サムワンスピリッツとは何か……、細かい説明は色々あるのだが、これこそポケット的なサムシングだったり、あるいはソシャゲ的なサムシングだったりとかで出てくる召喚獣だったりモンスターだったり、まぁそういうサムシングだと理解するのが早いだろう。
正直こんなふわっとした説明にならざるを得ないのは、彼らがあまりに多岐にわたるためである。
基本的な存在の概要は精霊、様々な惑星に宿るエネルギー的なそれらが形を持ったサムシングとのことである。それ故に、多くの惑星のエネルギー的なサムシングが混同した彼らは、特定の一律とした形態を持つわけではない。
一応分類が存在するらしく、最低限は教科書にも載っているが細かくははやり別途ということらしい。
ともかく。彼らはおおむね二種族六種類の分類が可能である。
物理種族と非物理種族。
物理種族は獣 (ビースト)・人 (ヒューム)・機 (マシンナー)の三つ。非物理種族は魔 (デモン)・英 (ヒロイック)・精 (フェアリー)の三つ。
これらの組み合わせだったり、あるいは単体のそれだったりして様々な形態をとる。
たとえば私の初めて遭遇したダイ・ラピア氏は魔族に該当する。まぁあんな姿の生物がそうそう居てたまるかという話ではあるが……。
これらは相性というよりも、種族特性的なサムシングを持つらしい。ダイ・ラピア氏の場合、魔族である故に魔法攻撃に特に秀でているとか。
通称はサスピリと略されるが、そんな彼らは当たり前のように人間の生活に溶け込んでいる。
発電所の電気だったり火力だったり、あるいは土地整備の燃料だったり、調理に使う火だったりガスだったり。挙げれば枚挙に暇がないが、このあたりもまさにゲーム的なサムシングでややげんなりだ。
オッサン、良い年してそのあたり卒業して久しいのである。
そりゃ子供心くすぐられるものも無くはないが、そこまで熱を入れるような感じでもないのだ。
甥っ子とか姪っ子とかそういうサムシングと遊んでるようなのを連想させて、気疲れする。
ともあれ。サスピリと契約した者の一部は、通称でデバイザーと呼ばれる。
本来は召喚に使う道具がデバイザーと呼ばれるらしいのだが、それの延長で召喚者そのものがそう呼ばれるのだとか。
もっとさらに言うと、このサスピリ同士を戦わせたりとか、ダンジョン(遺跡?)とかの探索とか、そういった冒険的なものを専業にする者のことを特にデバイザーと呼ぶらしい。
「まさに主人公? とかがやりそうな職業だ」
このあたりまで見た私の結論としては、特に何も言うことはない。
要するに、あまり興味のない分野の世界に生まれ変わってしまったようなものだ。感想を求められても何も出てこない。
例えばこれが、ゲーム的なサムシングでありがちな魔王退治とかのためであったりすればまた別なサムシングである。元の世界に帰るためだったり、自分の生命のために粉骨砕身で働くこともあるだろう。
しかし「私」というのは、「僕」の生存のためにたまたま出てきてしまった自我のようなものだ。おそらく「私」の本体 (?)は本体で地球で普通に生活してるのだろうし、フィードバックがあるわけでもない。「僕」は僕で両親から愛情いっぱいに育てられてるわけであって、そう考えると、特に身を危険にさらすような冒険野心的なサムシングも湧かない。
「実家は手に職があるようなので、それに準じるとしますか」
とはいえ生きる糧は欲しいので、結論としてはしごく全うなサムシングに落ち着いた。
我が家は医療屋、薬剤師と祈祷師が混じったようなサムシグである。資格についてはダイ・ラピア氏がきっちり教育してくれるらしく(薬学に通じるとか言ってたな、そういえば)、真面目に取り組めばそこまで困難を極めるものでもない。
ある意味で手に職であり、親の後を継ぐということにもなる。
「とりあえず平穏無事が一番です」
何よりそれが一番大変なことだというのは、身に染みて理解している私であった。
このあたりの考え方が変動するには、今しばらくの時間と「彼女」との遭遇が必要になる。