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095 沈黙の卵
彼方まで広がる沈黙
この空間は何なのか
己のみが存在する
他の者などいない
心の中を満たす沈黙
孤独が好きなわけじゃなく
無理矢理に閉じ込められた
闇という牢獄に
誰かに救ってほしかった助けてほしかった
誰も気付きもしない見もしない
永遠に続く沈黙
ここに逃げ込んだのは誰
己が入り込んでしまった
安心できる場所だから
自由を奪う沈黙
手も足も身体も動かない
存在自体が無
闇の底に落ちていった
己の存在を認めて欲しかった
苦しくて切なくて自我の卵を壊せない
1998. 日付なし




