+α 09
――――何かが壊れた音がした――――
まばゆく光る時の砂はさらさらと流れ落ちる。
身体の何かが変わった。お前のせいで。
封じた記憶が思い出される。お前の為に。
許してくれと請うても許さない。俺はキリストではない。
勝手に聖者扱いをしたお前が憎い。
自分の欲望に取り込まれたお前を喜ばす事などしない。
だが俺は人間だ。たとえ四百年生きてきたとしても。
俺は俺であって神でも何もない。
お前と同じように俺はお前に惹かれた。
絶対に逃げ出す事のないように『服従』という名の鎖をつけた。
それを受け入れたのはお前だ。
それでも俺を愛し憎んだお前。
俺の最愛の人……大事な人を奪うのが得意だった。
過去も未来も現在においても。
『服従』の首輪をはずそうともせずに鎖は重たくなった。
そしてついに壊れた。重さに耐えきれずに。
お前は俺を求めた。俺は逃げた。
この深紅の毒は危険すぎる。俺の命も失くなっていく。
なのに構わないと言う。大丈夫だからと。
夢の罠に捕まった俺とお前。
無限の快楽の中で時を過ごしたかった。
二度と醒めない夢の中で罪を癒すように。
罪を犯し罰を受けるのは当然の事だ。
深紅の毒は身体中を犯し続ける。
お前の欲望を受け入れたのは忘れたかったからだ。
あの快楽の中ではと。お互いに鎖の首輪をつけあって。
――――結局罪は消えなかった――――




