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180 堕ちた翼
空を見上げた
高く遠くへと
はばたく為に
幸福になる為に
幾重にも繋がれた
重い暗い鉛の鎖
心が失われるかのように
鎖は外れたりはしない
濁りの無い白い翼
いつしか黒く変わっていく
純粋だった白い羽根
荒みきった黒い羽根
ただ素直に従うだけ
従っていれば楽
考えなくてすむから
例え周りが何を思おうと
汚れを知らないフリして
ズタズタに引き裂かれ
楽になろうとした
鎖は繋がったまま
近くにあった青い空
いつのまにか遠くに
暗い場所からずっと
空を見上げ続ける
動く事もままならない
鎖は次第に重さを増し
奴隷のようになる
ずっと鎖に絡まったまま
はばたこうと暴れる
絡みつく鉛の鎖
幾度となく翼を動かす
浮き上がる事さえ無理
従うフリが辛くなる
昔の白い翼が浮かぶ
振り返れば黒い翼
汚れきった魂の色
鎖が外れないからと
言い訳が多くなる
いつのまにか翼は
堕ちた世界に慣れた
2001.06.28.




