整理しよう。
あれからどうやって帰ったか記憶が曖昧だけれど、シーラとケヴィンが探しに来たのは確かだった。
涙で濡れた私の顔見るなりシーラは真っ青になり、ケヴィンは顔を強張らせた。
二人には本を読んで感動したと無理矢理納得させる。半分も納得はしていなかったみたいだけど、見なかった事にした。
…二度目だけど母様もこれで納得してくれるかな?
家に帰ると案の定母様は私の泣き腫らした顔を見て青ざめる。
言い訳は通用しなかった。
母様は納得してくれなくて、学園を退学させると本気で言い出した時は焦ったけれど何とか回避出来た。
部屋に戻って一人、私は今日会った事を思い出す。
今日は本当に衝撃的な一日になってしまったのだから…。
あのアニメの主人公ユーリやケイトに出会ってしまった。それに…。
この学園にいる筈のない〝彼〟がいた。
王都のある街の学園にいる筈の彼がどうして私達の学園にいるのだろう。
今の時期は確かもう一人の登場人物と一緒に行動している筈なのに…。
このアニメではユーリが主人公、所謂メインキャラになっている。
ユーリを支えるサブキャラに、ケヴィン、そして私が好きな彼ともう一人の彼が出て来る。
他にも色々な人物が登場するのだけど…。ストーリーに大きく関わるのはこの四人。
だからこそ〝彼〟が此処にいる事はストーリー上在ってはいけないはず。
彼はこれから起きる事を乗り越えて幸せになるんだから。
そう。彼は幸せになるの…。
彼の幸せが……私の幸せ…。
私では彼を幸せにしてあげられないから…。
でも、どうすればいい?
元のストーリーに戻せば、幸せな未来は訪れる?
なら、やる事は決まったわ。
「先ずは情報収集ね!」
私は翌日から情報を集めて、ストーリーを元通りに進めるために動く事を決意した。
◇◇◇
情報収集を始めてから、学園の中で彼を探し始めた。確か私とシーラと同じ歳の筈なんだけど、何処のクラスにも居なかった。
ストーリーが変わって来てるならもしかして学年も違うのかもしれない。
私とシーラは高等部の二年生になるから、三年生と一年生も探してみた。
けれど彼は居なかった。
どういう事?私が見た彼は他人の空似?幻?夢でも見ていたのかな?
でも彼を見間違う筈はない。これだけは自信持って言い切れる。
ずっと恋い焦がれていた相手なのだから…。
けれど、だからこそ謎なのよ…。
「どうして見つからないの…?」
モヤモヤした気持ちのまま数日が過ぎていた。