お迎え。
決意新たに学園に行く支度をしていた私を呼びに来たメイド。
「こんな朝早くからお客様?」
「客間でお待ちです。」
そう言われて準備を急いで客間へ向かうと、シーラの姿を見つけた。
「シーラ?」
「マーガレット!具合はもういいの?」
私の側まで来て心配そうに顔を覗き込むシーラ。その綺麗な顔立ちのアップに思わず息を飲む。
「大丈夫だよ。ありがとう。」
「…うん。良かった…。」
そっと私の手を握ったシーラの手を握り返すと、蕩ける様な笑顔を見せたシーラ。
…うん。大丈夫。
二人で手を取り合っていると、コホンと、扉側に立っているケヴィンに気づいた。
「! ケヴィン様…。おはようございます。」
「おはよう、マーガレット嬢。体調はもういいのか?」
「はい。ありがとうございます。」
顔には出ていないが心配してくれているケヴィンに笑顔で答えると、目を細めた。
「昨日、マーガレットが学園を休んだ事を話したから心配で付いてきたのよ。」
「姉さん!」
シーラが笑いを含ませながらケヴィンを見ると、ケヴィンは頬を赤く染めながらシーラを睨む。
「さあ、マーガレット!遅刻しちゃうから急ぎましょう!ケヴィン、貴方は途中で降ろしてあげるわ。」
「ケヴィン様は中等部でしたね。」
「…はい。」
馬車まで歩きながらケヴィンに話しかけると、ケヴィンは拗ねた様な顔をしていた。
どうしたのだろう?と首を傾げると、シーラが笑いながらケヴィンの肩を叩いた。
「マーガレット、ケヴィンは同じ学園に通えない事を拗ねているのよ。」
「!」
シーラの爆弾発言に私は目を見開く。
「…マーガレット嬢、すぐ追いつきますから。」
「ふっ…!」
「姉さん!」
「ごめんなさい?だって、歳は追いつけないわよ。」
「…たった3つです。」
真剣な顔をしたケヴィンに笑いを含ませながらシーラが言うと、ケヴィンはシーラを睨む。
そんな二人のやり取りを見ている間にも中等部へ着く。
「…行ってきます。」
そう言って馬車から降りる瞬間、ケヴィンと目が合った。
その目は熱を持っている様で、その熱が移ってしまった様に私の頬は赤くなった。
「マーガレット、顔が赤いわよ?」
「シーラ…揶揄わないで。困るわ…。」
「あら、ケヴィンじゃ駄目かしら。弟ながらいい男になるわよ?」
頬に手を寄せた私に首を傾げながらシーラがケヴィンを推してきた。
「ケヴィン様は素敵よ?」
「なら…。」
「…ずっと想っている方がいるの。」
叶わないけれど。
そう口には出さなかったけれど、両手をギュッと握った私を見て、これ以上シーラが聞いてくる事はなかった。
シーラはこんな時妙に敏感で、私が話したくなる時までそっとしてくれる。
この事は決して告げる事はないのだけれど…。
そうか。ケヴィンは中等部なのよね…。
じゃあ彼は私やシーラと同じ歳なんだわ。
学園が違う筈だから、ここで会う事はないのね。
そう思うと、少しだけ寂しい気持ちになった。
次回、主人公登場(男)