決意。
泣き過ぎると…。
「ゔわぁ…。」
鏡に映る自分の姿を見て思わず引いてしまう。
それもそうだろう。
一晩中泣き続けた所為で、目はパンパンに腫れ声はガラガラになっていた。
軽く冷やしていると、入ってきたメイドさんは悲鳴を上げて母様を呼んできた。
怖い夢を見てしまった。そう言って誤魔化すしかない。
母様に今日は学園を半ば強制的にお休みさせられたけれど、素直に有り難く思った。
今日はどうしてもシーラに会いたくなかった。
私は最低だ。
この10年シーラとずっと一緒だったのに、昔の(前世の)記憶を思い出して思わず避ける様な事をしてしまった。
ずっと側に居てくれたのに。
私はシーラが好き。
この先彼に会う日が来ても、それでもシーラを好きでいられるだろうか。
彼とシーラが結ばれる時、心から祝福出来るだろうか。
考えただけでも胸の奥が抉られる様に苦しくなる。
身体中で嫌だと訴える様に。
それでも…。
そう。それでも今度は此処にいる。
遠くからでも同じ場所にいる事が出来る。
あの冷たい画面越しじゃなく側に。
心から祝福なんて出来ないと思う。
けれど、彼の運命の相手は私じゃない。
彼が幸せになるなら…。
そう。そうだよ。
だって私はモブだもの。
彼の幸せを応援するんだ!
…応援しなきゃ。
…ねえ、私を此処に転生させた神様。
…それでも心の中で好きでいるのはいいですか?
心の中でそう呟いた私は、明日からモブに徹する事を決意して、頬を伝う涙を拭い天を仰いだ。
モブだって人を好きになるのです。