仲良し姉弟。
登場人物。
シーラ・カーク 。
マーガレット・ブラン 。
カーク邸に着いた私達は、シーラの部屋へと向かう。
カークは、シーラのファミリーネーム。シーラはカーク子爵の娘だ。
私、マーガレットもブラン子爵の嫡子なのだ。
話を戻して、シーラの部屋でゆっくりとオススメの本を二人で読んでいる。
今日のオススメ本は冒険者の主人公が女の子で、私自身も冒険している気持ちにさせる様な面白い本だった。
太陽も傾き始めた頃、読み終えた本をパタリと閉じて溜息を吐いた。
「はあ、面白かったわ!」
「マーガレットに似てるわよね、この主人公。」
「そうかしら?でも、昔からあまり外に出られなかったから憧れるわ。」
「ふふ、そうね。いつか一緒にー。」
本を読みながら話していると、ガチャリ、とシーラの部屋の扉が開いた。
「!」
「姉さん魔法書貸して…あ、お客さん居たのか。悪い。」
「ケヴィン!貴方またノックしないで!!」
突然入って来た男の子はシーラに怒られて頬を掻きながらバツの悪そうな顔をした。
ケヴィンと呼ばれた男の子を微笑ましく思ってつい見ていると…。
「マーガレット、紹介するわ。弟のケヴィンよ。」
「初めまして。ケヴィン・カークです。姉さんからいつもマーガレット嬢の事は聞いてます。」
「初めましてケヴィン様。マーガレット・ブランと申します。」
紳士淑女の挨拶を交わした私達は、お互いに気を使わないで欲しいと普通に話す事にした。
「姉さんから聞いていたけど、マーガレット嬢は姉さんと違って可憐だな。姉さんも見習った方が…いっ!?」
ケヴィンがそう言いかけた時、シーラがケヴィンの足をヒールで踏んだ様だ。ドレスで見える事は無いのだけど。
シーラは笑顔なのだけれど、ケヴィンは顔を真っ赤にして痛みを耐えている。
「ケヴィン?何か仰って?」
「…何も。」
「ふふっ。」
笑顔のシーラから顔を背けて、バツの悪そうなケヴィン。私は思わず笑ってしまう。
「…そう言えば、貴方何しにいらしたの?」
「ああ、忘れてた。魔法書貸してくれ。」
「自分のはどうしたのよ。学園に忘れたの?」
「ユーリに貸したんだよ。アイツそのまま持って帰ったんだ。」
「もう、仕方ないわね。」
呆れながらケヴィンに魔法書を貸す為に本棚に二人は向かう。
ケヴィン様は優しいのね。ユーリ様と言う方に頼られているのだわ。
…ん?…ユーリ…ケヴィン…?
「…っつ!?」
突然の耳鳴りと激しい頭痛が私を襲った。余りの痛みに膝をついた。
「マーガレット?」
「お、おい…大丈夫か?」
二人が駆け寄って、私を気遣う様に肩に手を置く。
「っつ…うっ!?」
更に頭痛が酷くなって、蹲ってしまう。
…って言うか、待って。本当に待って!
何…これ。
頭の中に一気に駆け巡る映像。
箱の中にシーラやケヴィン様が映る。他にも色んな人が映っている。
映像?映像って何だっけ…。
これはテレビだ…。
テレビ画面の前に座って、グッズを抱き締めながら愛しい人を見ている女の子。
泣きながらテレビにそっと触れる女の子。
イベント会場までワクワクしながら電車に乗る女の子。
テレビ?グッズ?電車?
こんなの見たことも無い。
けれど…。
私…知ってる。
これは……。
生まれ変わる前の私だ。
思い出した私はその場で意識を手放した。
ケヴィンとユーリの名前を聞いて、倒れ込むマーガレット。