親友はヒーローです。
授業終了のベルが鳴る。
私が荷物を片付けていると、前が暗くなった。
顔を上げると、少し明るめの栗色をした長い髪をサラリと流して微笑む美女が立っていた。
「マーガレット、帰り支度は済んだ?」
「シーラ!うん、もう行けるよ!」
私、マーガレットを呼んだ彼女に私が笑顔で返事をすると、目を細めて頷く。
シーラと呼んだこの美女は、冴えない私の親友だ。
10年前ー。
街中で子供が何かを囲んでいる。そう、私だ。
私は、小さい頃身体があまり丈夫ではなく外に出る事もなかった。
初めて街に出て母と逸れて迷っていた所を数人の子供が声を掛けてきた。
「おい!ここはオレ達の場所だぞ!」
「何でよそ者がここにいるんだよ!」
「あ…私……。」
いつの間にか壁際まで追い詰められて、囲まれた私は〝違う〟と言いたいのに声が出ない。
「おい!なんか言えよ!!」
一人の男の子が私を引っ張ると、私はバランスを崩して倒れてしまった。
「…きゃっ…!」
「…っ!お、おい…大丈夫…」
「何をなさっているの?」
私が倒れて驚く男の子が、私に手を伸ばそうとした時、
私を囲む子供達の後ろから、凛とした声が聞こえた。
「シーラ…様。」
驚いている子供達の誰かがそう呟くと、囲んでいた輪に道が出来る。
座り込んだままの私はシーラ様と呼ばれた彼女と目を合わせると、彼女は周りの子供達に何かを 言っていたがボーっとして聞いていなかった。
彼女に見惚れてしまったから。
いつの間に周りから子供達が居なくなって 彼女は私を見た。
「大丈夫?」
そっと私に手を差し伸べて助け起こした彼女はヒーロー?いやヒロインみたいだった。
これがシーラとの出会い。
彼女は昔から大人びた感じだった。いや姉御肌と言った方が合っている。
そんな姉御肌の彼女と仲良くなるのに時間はかからなかった。
そして今、10年たった現在も変わらない。今では一番の親友だ。
閑話終了。
学校を出てゆっくりと歩みを進める私とシーラ。
「ねえ、たまには私の家で勉強しましょう?ね?」
「?」
そう言うと私は少しだけ考えて頷く。
シーラの家に行くのは久しぶりだった。普段は体調を崩しやすい私の家でゆっくり過ごすのが多いから、今日もその予定だと思ってから。
「ふふっ!いい本が手に入ったの!」
「本当!早く行きましょう!」
「ちょっと私より先に行くの?」
シーラの手を取って私が先に歩き出すと、後ろでシーラがクスクスと笑いながら着いてきた。
シーラは私の本好きを知っていてたまにこうして私にオススメをしてくれる。サプライズも大好きです。
私達はシーラの家へと向かった。
けれど、それがこれが私の今後の運命を変える事になるなんて、誰も知る筈もなかった。
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