目的は
「結界を壊そうとしている」
シン兄ちゃんの口から光夜叉の目的を聞かされた。
「結界を守る土門家とって『鬼』を放置することはできない。
有事に備え、神代家がいる町に住んでヒカルの様子を確認しているんだ」
「な、そうなんだろ?」とシン兄ちゃんに問われたスバルは「やけに詳しいな」と
呟きつつ肯定した。
「本家のやつらはこっちに来たがらない。オレみたいな下っ端……分家に回ってくる」
「昔から姑息だからな」
「あぁ、そうだな。ズルいよ、アイツら。
んで、アイツらはバカだ。部下によく分からないもんを抱えている」
本家に対して盛大に愚痴を漏らした後、スバルはポツリと言った。
「……織部」
「え?」
「オレだけじゃない。織部も分家の一人だ」
「織部って……あの織部先生?」
「そうや。アイツを介してオレは本家にお前のことを報告していた」
知らなかった。
話してくれた内容が本当なら、スバルと織部先生は遠縁だとしても僕と親戚だということになる。
親戚の人達と面識がないため、スバルが打ち明けてくれなかったら気付かなかっただろうな。
「今まで迷っていたのに……どうして話す気になったんだ?」
「本家を信用できなくなった」
シン兄ちゃんの問いにスバルは静かに冷たい口調で言った。
「さっきも言ったけど。本家は部下によく分からないもんを抱えてるって。それが、織部や。
ヒカル、覚えとるか? 図書室でみた卒業文集の写真のこと」
図書室で調べてる時に偶然見つけた集合写真を思い出す。
何十年前に撮られたであろう写真に織部とよく似ている人が生徒と一緒に写っていた。
「アレな。おそらく本人だと思うわ」
推測だけど、と前置きしてからスバルは続けた。
「実家に帰って織部の家のことを調べたんや」
学校を早退した日から三日間、家の手伝いをしながら織部の素性を調べていたのだという。
「まずは親父に聞いたんや。織部 九郎について。そしたら、そんな名前のやつは知らん。あそこは娘二人しかおらんはずやって」
じゃあ、織部 九郎は何者だ?
スバルはそう思って父に織部の住所を聞き、訪ねに行ったらしい。
「近くだったからな。織部家に行くとちょうど玄関から奥さんが出てきてな。織部 九郎の生徒だと伝えると」
「まだ現役なんですねぇ」と奥さんはポロリと溢したのだ。
スバルはどういうことなのかと一歩踏み込んだ質問をすると「けっこうなお歳でしょう?」と奥さんは返してきたそうだ。
「奥さんがいうには、織部 九郎は祖父の弟にあたる人なんやそうだ。歳も六十はとうに過ぎとるんだと」
「織部先生の名前が偽名だったりとか」
「だとしても、あの写真の説明がつかねぇんだよ」
他の年度に撮られた写真にも写っていた。
似ているどころではなかった。
年を重ねる度に今の織部へと姿が近付いていた。
「じゃあ、ずっと歳をとってないってことになるよね」
そうだとしたら、それは……。
「あやかしだ」
ここまでご閲覧いただき、ありがとうございました。
本当にタイトルをつけるのは苦手すぎますね。