表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光夜叉  作者: ソラネ
第四章
97/128

シンプルにしてあげる

※姫川水樹の視点です。


 千年以上前に存在していた人がここにいる。


「懐かしくなって追いかけた」


 認めてはいけない。肯定してはいけない。


「それほど似ていたってことだ。違うかい?」


 相手から問われても応えちゃいけない。


自分がどうなるか分からないのなら、知らないと首を横に振れ。

災厄な状況を自分で作るな。想像するな。竦んでしまう。


「ボク、思い出話をしたいだけなんだよ。退屈で暇なんだ、盲目のお姫様」


 「無視しないで。お喋りしようよ」と僕に話しかけ続ける。


「はぁ、仕方ない。君の代わりに他の子を見つけてこようかな~」

「ッ……」


 黙ったままでいると床に頬をつける僕の顔をグイ、と上げてきた。


「口ってさ。無くてはならないものじゃない?

ご飯を食べたり、呼吸をしたり、何かを伝えたり。目と耳と同じで必要な穴。

それって人でなくても同じでね。

口が無ければ貪ることも、惑わすこともできない」


 指で唇をなぞれ、ゾワゾワする。


「ボクはね、口を重ねると伝わってくるんだ」

「何を、言って……」

「ん? 君の記憶を覗かせてもらうよ。

君の代わりに暇つぶしになってくれる人をさがすんだ。家族がいいかな? 友達がいいかな?」


 唇に生暖かい息がかかる。間近に顔があるのだ。


「やだ…やめて……」


 頭を押さえつけられ、逃げ場のない僕はその行為を受けるしかなかった。


唇を触れらている間、頭の芯をザラザラと気色の悪い舌で舐められた気分だった。


「げほ、げッ……」


 唇が解放され、喉の奥から嘔吐く。


「君……お友達、少ないんだね。家族とも仲良くなさそう………生きてて楽しい?」


 憐れみであったり、嘲笑であったり。

受け取る側次第ではどっちでも受け取れる台詞だ。


でも、相手からはどっちも感じない。

純粋に楽しそうに他人の傷口を抉ってきた。


「あ、でも、あの子とはお友達なんだね。え~っと…神代(カミシロ) (ヒカル)くん!

昔と同じだね。あの頃と変わらなくて嬉しいなぁ」

「ゴホ……と…友達じゃない。そもそも、僕はアイツとは違う。一緒にするな」

「ん~? 君は今世と前世は別だと思ってるタイプ? ボクからしたらどっちも同じだよ。盲目のお姫様」

「僕は盲目の姫ではない。僕は……」


 自分の名前を言うとして口を動かすが。


(名前……自分の名前が思い出せない…………) 


 はくはくと金魚みたいに口を開閉するだけだった。


「認めくないんだね。認めたら自分じゃなくなるかもしれないものね。怖いよね、分かるよ、その気持ち」


 同情しているかのような台詞が落ちてくる。


「片方だけになれば怖くなくなるよね。

どっちが本物の自分かって考えないように壁をとってあげる」


「やめ…………」


 叫び声をあげる前に僕の意識がブツリと切れた。




― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―




 ざあざあ、と暗い雨雲の下で傘をささず立っていた。

冷たい雨に打たれ、続けた髪が重く寒くくしゃみをひとつすると。


「こんなところでなにしてんや! ◼️◼️◼️!」


 こっちに向かってくる人影が目の端に映った。

反射的に近付いてくる人の方を向く。


「お前、今までどこいっててん」


 『あたし』に向かってその人は言った。



ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ