代替え策
※三人称視点です。
織部 九郎は、シンカイ高校の教師である。
今、織部はトコセ町を離れ、別の町を訪れていた。
「お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」
何百年前に建てられた古めかしくも立派な日本屋敷に到着した織部を出迎えたのは
ここの使用人だ。
使用人に案内されるままにすぐに屋敷の奥に案内された。
座敷には複数の人が集められていた。
「アレに変わり無いか?」
挨拶もそこそこに上座に鎮座する老爺から問われた。
老爺以外では、左右に向かい合うように座っている。
「今のところは問題は発生しておりません」
「そうか」と織部の報告にひと言だけ老爺は返した。
「十六となった今。猶予はどのくらいあるのか」
「女が次の女児を産むことで紡がれるものだ。術が破れたと考えられる」
「鬼もろとも始末するしかなかろう」
「だが、どうやって」
左右に座る人々が声が挙がる。
自分は尊い者だと思っているのだろう、他人の命について好き勝手に決めようとしていた。
「女に『鬼』を移すことができれば」
「できたとして、残った男はどうする?」
「魂の無いもぬけの殻がまともに生きられぬ」
「贄でもすればよい。神代はそういう物の集りだ」
耳に入れるだけでも思考が腐っていくような言葉を吐く本家の方々に表情を崩さずに眺めていた織部の目がスッと細めた。
「静まれ」
老爺は静かに。しかし、よく響く声で言った。
「何か言いたそうな顔をしているな」
シン、と静まった室内で老爺は下座にいる織部を見つめた。
織部は自分に視線が集まったのを確認してから「ええ」と頷き話す。
「別の母体に移せばいいんです」
「それが出来ないから集まってるんだ」
「術を再現できないのは知っております。神代 柊様は秘匿されたまま天に旅立たられました。
土門一族では再現できない。失われた術であるならば、他の方法で母体に移せばいいのです」
無いのなら新たな術を、道具を産み出せば良いと話す織部に本家の方々は響動めいた。
「……その方法があるというのか? いや、見つけたのか?」
「ええ」と再び頷く。
「長年……やっと出来ましたため、報告を― ――」
半信半疑の本家の方々に織部はかたる。
鬼を別の母体に移す方法を…………。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
今回のサブタイトル……本来なら『代替策』が正しいかもしれませんが、あえて『代替え策』にしてみました。
周囲に決められる運命って嫌ですな……と思いつつ書いてます。
登場人物たちは、何かに縛られつつも彼らなりに生きてほしいなぁ。心は自由であってほしいものです。
それでは、それでは。