迎えにいかない?
※第三者視点です。
翌日、教室に神代の姿はなかった。
「東絛先輩」
億劫そうに教室から出てきた東絛は久瀬を冷たい眼で見ている。
「何の用?」
「ヒカルの様子を聞きたくて」
「お前には関係ないよ」
「いやいや。大アリですよ」
東絛から放たれる剣呑な雰囲気を察した数名がチラチラと二人の様子を窺っている。
昼休みなため、人は散ってはいるが二学年の教室に一学年の生徒がいるのだ。
多少なりとも目立っていた。
「何があったのかくらいは、説明させてください。それとも、知りたくないですか? 昨日のこと」
「ここでは目立つんで別の場所で行きませんか?」と久瀬に誘われ、人気のない場所に移動する。
「ここってけっこう穴場ですよねぇ。先輩」
第二資料室と薄く書かれた教室。
元図書室だったそこはある程度本が置いてあるが、古い上に何層にも埃が被っている。
倉庫くらいしか使われないとはいえ、通常であれば鍵がかかっているはずだが、久瀬は簡単に扉を開け、教室内に入っていった。
「敬悟などいいから、さっさと教えろ」
「それもそうやな。なぁ、センパイ。ヒカルはまだ昨日のままか?」
答えないまま久瀬を睨む東絛を見て肯定と受け取る。
「そうか。目覚めるのは五分五分らしいぞ」
「何故分かる」
「姫川だよ、姫川の『チカラ』で視てもらった…っていっても信じらんねぇと思うが」
「あぁ、『ツクヨミ』の娘か……」
「東絛先輩はそっち系の話はいける口っすか?」
久瀬は軽く驚きつつ、話がはやいと喜んだ。
「視れば分かる。それより、昨日図書室で起こったことを言え」
「まぁまぁ。そもそも姫川からの依頼で図書室で調べていたんだ。『カイコの樹』という会いたい人に会える木らしんだが、知ってる?」
(あー、そこでも黙り? いや、さっさと続けろってところか?)
「それについて、調べていた最中に『入り口』に触れてしまったらしく、肉体だけ残してアッチに連れていかれたっぽい」
「入り口?」
「それが、コレ」
ポケットからお札を取り出し、術を解除する。
ポン、と軽く煙をあげ手の上に封印のお札を貼った一冊の本が出現した。
「コレが『カイコの樹』に繋がる『入り口』や」
久瀬が持つ本を凝視する東絛に。
「東絛先輩って普通の人間ではないやろ」
愛嬌のある笑顔を浮かべ、久瀬は切り込んでいく。
東絛は本から久瀬に冷たい視線を向けた。
「それが何だっていうんだ? 普通ではなかろうが、関係ないだろう」
「いやいや、何もないところから本が出てきたんですよ。普通はびっくりするやん。驚かなさすぎ」
「今は関係ない。ヒカルのこと以外の話をするなら戻る」
「待て待て。なぁ、目の前に『入り口』があるんだよ」
詮索するなら用はない、と言いたげな東絛を久瀬は引き止める。
「俺らから迎えに行かない?」
愛嬌たっぷりの笑顔を浮かべ、久瀬は東絛に提案した。
「そっか。姫川から聞いたとおりやっぱりまだ目が覚めてないんやなぁ。
先輩のことやからヒカルの傍から離れへんっと思っとったけど、状況を聞けてよかったわ~」
「今、家で母が看てくれてるから心配は、していない」
心配してないと口で言ってるが本心ではないだろう。
苛立ちを隠さず、気持ちを紛らわすように今朝登校する前に見た神代の状態を久瀬にぶつけている。
昼過ぎになっても学校に来てないので、昨日倒れてから何も変わらないだろうと久瀬は予想はしていた。
予想はしていても誰かの口から久瀬は状況を聞きたかった。
「そもそも、目が覚めるとツクヨミが預言したんだろう。わざわざ危ない道を渡る必要はない」
「そうはいってもさ。『カイコの樹』に持ってかれた人はみんな眠ったまま目覚めてない。
それに言っただろ、五分五分だって。姫川は『カイコの樹』の前に残されたアイツも視とるんや」
ヒカルが目覚める姿と、『カイコの樹』に残された姿……二つの事柄を姫川は同時に視た旨を伝えた。
久瀬からその話を聞いた東絛は顎に手をあて。
「……で、どうやって迎えに行く気だ?」
「おっ、協力してくれるの?」
「迎えに行った方がいいと判断した」
東絛は相変わらず、久瀬に冷たく返すと「それを使うのか?」と本を指しながら聞いてきた。
(ヒカル以外には、ホント冷たい人やなぁ)
久瀬は苦笑いしつつ、東絛に策を打ち明けた。
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