暴いてどうする気?
※三人称視点です。スバルとミズキ側になります。
日が暮れて街灯の明かりが頼りなく道や壁、そして、二人の学生を照らしている。
二人の表情は暗く沈んでいた。
学校を出てからずっと口を閉じたまま歩いている。
車や家々から漏れてくる生活音がやけに聞こえるほど、二人の間に流れている空気は静かだった。
図書室で倒れた神代を東絛が連れ帰った後、久瀬と姫川は保健室に残された。
教師である織部から「後日、改めて話を聞く」と久瀬に言い、これ以上学校に居られても邪魔だというように「さっさと帰れ」と二人は学校を追い出された。
こうして、学校を出てからというもの二人は口を開かずに歩いていた。
いつもの別れ道である公園が見えてきて「今日は家まで送る」とやっと久瀬が口を開こうとした時。
「大丈夫でしょうか?」
小さく低めの声色で先に口を開いたのは姫川だった。
「ヒカルさん、明日になったら目を覚ましますよね?」
「さぁな」
「さぁなって、あなた、ヒカルさんが心配じゃないですの!」
「アー、うるさいな。心配ですよ、心配になるに決まっとる」
久瀬は耳を両手で塞ぎながら、神代が無事であるのか明日にならないと分からないと姫川に応えた。
「もし、もし…あのままだったら…ヒカルさんもあの子みたいに…………」
姫川は顔を歪める。
「今、どうすればいいか考えとるんから喚くな」
泣きそうな顔をした姫川の頭をポンポンと久瀬は軽く頭を叩く。
「少し、付き合えるか?」
姫川はコクリと頷くのを見た久瀬はヨシ、と小さく呟くと公園に入り、ベンチに座った。
姫川が隣に座ったのを確認した久瀬は人懐っこい笑みを浮かべた。
「まずは…そうだな、お前の正体から訊きたい」
「…? 何のことです?」
「調べたんだよ」
首を傾げた姫川に久瀬は笑みを浮かべたままで。
「お前の中学校には、姫川 水樹という女子生徒はいなかった」
久瀬は『カイコの樹』の話を姫川(と名乗る美少女)から聞く前から、彼女について調べていた。
"神代 光の監視と報告"
久瀬は本家から下された命令だ。
神代に近付く外部の人間がいれば、身辺を調査し本家に報告する。
もちろん、姫川もその対象内であり、久瀬は調べていた。
「正確には姫川 水樹という名前のヤツはいたな。でも、ソイツは男だ」
「どこまで調べているのか判らないけど。あたしは姫川 水樹で合っているわ」
「はぁ? 姫川は男だって……」
久瀬は足元から仰視する。
まさか、と思わずにはいられない。
姫川と視線が合えば「そーゆうこと」ニコッと笑みを返された。
「詐欺じゃん」
久瀬は顔を地面に伏せ、ハァーと息を吐き出した。
「趣味? それとも、心と体は別ってやつ?」
「遠慮なく聞くのね。
……姫川 水樹だけど、あたしは『ツクヨミ』なの。自分の記憶より『ツクヨミ』の記憶が強いからそうしているだけよ」
「…姫川 水樹とツクヨミは別の存在ってこと?」
「二重人格か?」と首を傾げながら聞き返す。
姫川の中に最低でも二つの人格があるように思えたからだ。
「ううん、違う。前世の記憶が強いだけで姫川 水樹には変わりないよ。
どこからか自分で、どこから『ツクヨミ』であるか分からないけれど」
そう話す姫川は、別の表情が垣間見えた。
『ツクヨミ』という仮面の下から姫川 水樹という少年の素顔が現れる。
弱々しく今にも消え入りそうな雰囲気だ。
現れた表情から本来の人格である姫川は、脆弱のせいで前世の記憶に引っ張られ行動していた。
「それで、あたしの正体を暴いてどうする気?」
ガラリと雰囲気が変わる。『ツクヨミ』の顔に戻っている。
「こっちも仕事しないとやからね。隠し事をしてるヤツと行動できへんなって思って」
「アナタには言われたくないわね。今は喧嘩する気分じゃ……」
「なぁ、前世の記憶があるってことは『チカラ』も覚えとるんやろ?」
「前世の記憶があるからってすべての人が『チカラ』を使えるワケではないのですよ」
「でも、姫川さんは使えとりますよね? ヒカルを助けられるかもしれないし、そこは腹を割って話しましょうよ」
「本当にいけ好かない」
久瀬の外面の良い笑みを見つめ、姫川は溜め息を吐いた。
いつも【光夜叉】を読んでくれてありがとうございます!
姫川は作者の趣味をちょっぴり(?)と詰め込んでいます。




