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光夜叉  作者: ソラネ
第三章
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二十年前と変わらない


 (今日も用事があるから先に帰ってて)


 空き教室の扉が開いた音がし、僕は送信が完了と表示されるスマホ画面から顔を上げる。

扉の方を見るとスバルと姫川が教室に入り、扉を閉めていた。


「お待たせ」と片手を上げるスバルに「大丈夫だったか?」と念のため確認をとる。


「おう。ヒヤヒヤしたが、バレんかったわ。しばらくしたら図書室に行こうぜ」


 見つからなかったから姫川をここまで連れて来られたわけで……。

次は一階の図書室まで見つからずに行けるかどうかである。


 昨日、みんなが下校した後に図書室に忍び込もうという話をし、僕は喫茶店で待たせていた姫川をスバルが迎えに行っていたのだ。

スバルが迎えに行っている間、僕は二階の窓から校門前に誰もいないか見張りつつ、二人が来るのを待っていた。


「図書室が閉まるのはもう少しだよね」

「今日は先生はおらんからな。そろそろ行こうか」


 司書として雇われている教師は、今日は非番らしく係りの生徒が戸締まりをするそうだ。

図書室前に来るとちょうど図書室から係りの生徒が出てきた。


「ちゃんと戻してね」

「リョウカイ、リョウカイ」


 係りの生徒から図書室の鍵を受け取ったスバルと一緒に僕と姫川は図書室内に入った。


「…ヒヤヒヤしました」

「案外、いけるやろ?」


 姫川はシャツの上に僕のジャージ(上着)を羽織っている。他校の生徒だとバレないようにカモフラージュするためだ。


「電気は点けるなよー」と言われ、スバルから手渡されたのは懐中電灯だ。


「今はまだ明るいけど、暗くなったらコレを使えな」

「本格的ですね、ドキドキします」

「お前がおるのバレたら大目玉くらうからな。スパイ気分で探してけ」


 巡回している先生に僕達が見つかったら生徒指導室で説教を聞かされ、反省文を書かされるだろう。父にも連絡がいくかもしれない。

見つからないよう、気を付けなければ……。




 (何も見つからない)


 図書室内でもくもくと『カイコの樹』に関する手掛かりがないか探しているが、見つかりそうになかった。


そもそも、図書室に何かあるかもしれないだけで訪れた場所だ。

場所だけで他にヒントがないのだ。

僕達は各々で思い付く限りの…手当たり次第、探していた。


(もし、『カイコの樹』という題名の本があったとして、見付けるのは難しそう)


 本棚には何百冊と本が並べられているのだ。

図書館や書店にはパソコンで検索できるが学校にはそんな便利な物はなく。


(本じゃない可能性だってある)


 探すのが、面倒になってきた。

だんだんと暗くなりつつある室内を見回すと、ある箇所からスバルが移動していないことに気付いた。


「何かあった?」


 スバルに近寄り、手に持ってる本の中身を覗き見る。

学校を後ろに大勢の学生が並んで写っていた。モノクロの集合写真だ。


「卒業文集?」


 なんで卒業文集を見ているんだろう?


「何か載ってあるの?」

「いや。ただ、なぁー………」

「何?」

「これ、誰だと思うん?」


 スバルはモノクロの集合写真に写る人物を指差した。

そこには前髪を上げ、きっちりとスーツを着た真面目な教師が少し訝しげな面持ちで写っていた。

僕はその写真に写る人物を凝視し、しばらく既視感を覚えた後、それが誰なのか分かった。


織部(オリベ)…先生?」


 髪型や服装は違うが、眼鏡をかけた顔は織部先生、本人だった。


「これっていつの?」


 やけに古い写真だ。

教師や生徒の髪型が今の流行と違い、一つ二つ前のもののように思えた。制服だって今のものと違う。


「二十年くらい前」


 スバルの言葉に首を傾げる。


「二十年くらい前の卒業写真や」

「……そっくりさん?」

「うん、そうやな」


 「そういうことにしとこう」とスバルは文集のページを閉じ、本棚に仕舞った。


 今は『カイコの樹』について調べるのが先だ、というように別の箇所へ移動するスバルを横目に僕も姫川のいる方に向かった。



いつも読んでいただき、ありがとうございます。


ブクマも増えてて嬉しい限りです。

ブクマしてくれた皆さん、本当にありがとうございます!


応援があるとやる気が違いますね!

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