なぜ忍び込んだのか?
「『カイコの樹』の件で依頼主となりました。ヒカルさん、よろしくお願い致します」
「あ、うん…こちらこそ、よろしく」
翌日、授業が終わった後、待ち合わせの場所に姫川は待っており、僕に頬笑みを向けながら言った。
今回は校門前ではなく、学校近くの喫茶店で姫川と会っている。
(学校近くにこんな場所があったんだな)
落ち着いた雰囲気の店内を見回す。
学校が近いのに学生が少ないのは学校の裏手にあり、駅やバスがある方角から真逆にあるからだろう。
店員がいるカウンター側から離れた目立たないテーブル席に座った僕達は多少の静寂に飲み込まれていた。
スバルは砂糖を入れたコーヒーをかき混ぜながら言葉を切り出した。
「今回は改めまして依頼主である姫川から希望を聞かせてもらいましょか。ちなみに解決した、しないに関わらず昨日、案内したとおり報酬を支払ってもらいますぜぇ」
「分かったわ。あたしは学校に来なくなったお友達を助けるため『カイコの樹』を見つけたいのです。お力になってくれせんか? ヒカルさん」
僕を見て話す姫川に「ちょいちょい俺をムシしてないか?」とスバルは言葉を漏らしながら。
「俺は昨日伝えたとおり、依頼は承けるで。ただ、コイツは手伝いみたいなもんだから途中で抜けても文句は無しな」
「それについても分かっております。ヒカルさんの意思を尊重します。でも、ヒカルさんは優しいからきっと助けになってくれると信じてます」
期待した目で僕を見つめてくるので「あまり期待しないでほしいな」と苦笑を浮かべつつ、答えた。
「なぁ、『カイコの樹』がウチの学校のどこにあるか分かるか?」
「さぁ、そこまで聞いていないわ。だから、あなた達の学校に入って調べたいのだけど……」
姫川は僕達に会う口実で校舎内に入ろうとしたことがあるらしいが、先生に見つかり止められたそうだ。
「そりゃあ、そうだろうな。ピリピリしてるだろうよ」
「この前、よその生徒が学校から運ばれたからね」
学校の図書室で他校の生徒が倒れていたこともあり、教師を含めた学校の関係者は警戒しているだろう。
「あ、それなんだがな。もしかしたら、『カイコの樹』関連かもしれへんのや、それ。ほら、覚えてるか? 加藤が前日に忍び込んだ人を見たって話していたの」
あー、確かそんな話をクラスメイトの加藤が話していたのを思い出す。
放課後、図書室の方に向かっていく女子生徒を見たんだっけ。
「調べてみるとな、その忍び込んだ人はこいつと同じ学校の生徒だってことは分かったんや。ただ、なんで図書室に忍び込んだのか分からなかった。けど、タイミング的に『カイコの樹』関連でいたんやと仮定したら繋がるんよ」
姫川とスバルの話を繋げれば、『カイコの樹』は関連していると思っている。
でも、何故その女子生徒は図書室にいたんだろう?
『カイコの樹』という名称なのだからイメージとしては森に生えている木々…大樹なんかを想像していた。
図書室には観葉植物はあるかもしれないが、室内に樹らしいものは生えていない。
「図書室内には樹なんてないのに、なぜその人はいたんだろう?」と疑問を口にすれば姫川は応えた。
「『カイコの樹』に通じる道は複数あるそうです。その行き方が図書室にあるのかもしれませんね」
『カイコの樹』に関する手掛かりが図書室にありそうだ。
「ほな、明日は図書室に何かないか調べよか」
スバルは僕に明日の放課後にも調べるかどうか話し合っていると。
「あの……あたしも一緒に調べたいです!」
「それって、学校に忍び込みたいってこと?」
「そうなりますわね」
「う~ん……そんなに信用ならない感じか?」
「そうではないです。ヒカルさん達を信用してます。でも、あたしだけ待っているのはもう……。我が儘かもしれませんが、あたしも参加させてください」
「危ないかもしれないよ」
「承知の上です」
僕は姫川をどうするかとスバルの顔を見た。
「分かった。一緒に調べよう。とりあえず明日の放課後な」
少し悩んだ素振りをした後、スバルは言った。
いつも【光夜叉】を閲覧していただき、ありがとうございます。
作者がポンコツすぎてツッコミたいところが満載だと思います。
でも、これは『趣味』と『長編を書きたい』というもので、できたお話のため生暖かく見守っていただければ幸いです。




