忍び込んだ生徒
「ずっとってどのくらい?」
「もう…二週間くらいになる、かしら。その子、入院しているらしいわ」
「らしいって?」
「その子と親しいお友達がそう話していたのを聞いたわ」
「二週間くらい前になるとちょうどお二人さんが友達になった日やったな」
スバルの言葉にそういえばその日の朝は学校が少し騒がしかったのを思い出す。
図書室内で他校の生徒が倒れていたのだ。
「そういえば、お前と同じ中学生が学校に忍び込んでたみたいやな……それってもしかして?」
僕と同じく覚えていたスバルは姫川に聞いた。
姫川は頷き、肯定した。
「そうよ。あなたの言う通り。今、学校を休んでいる子が、その子よ」
どうして、僕たちの学校に姫川の同級生が忍び込んだんだろう?
「『カイコの樹』は僕たちの学校に何か関係あるの?」
「『カイコの樹』はヒカルさん達の通う学校にあるとあたしは考えています。その子は『カイコの樹』の場所を知っていましたので」
だから、校門前にいたのか。
あの日、その子が倒れていた日の下校時に姫川と出会ったことを思い返した。
「姫川さんは誰かから『カイコの樹』の場所を教えてもらっていたの?」
「いいえ」と首を横に振った。
「どうして、姫川さんは『カイコの樹』の場所を知っているの?」
素直に疑問を口にしていた。
どうして、姫川は『カイコの樹』の場所を僕たちの学校にあると特定できたのだろうか。
その日、その子は学校を来てなかったはずだ。
『カイコの樹』の場所を教えられていない姫川は何故僕たちが通う学校に訪れたのだろうか。
「それは……」と姫川は次の句を探すように沈黙した後、覚悟を決めたように僕たちを見て話した。
「それは……あたしが『月読』であったから視えたのです」
姫川は自分の『チカラ』について僕たちに打ち明けた。
「あたしは前世では『月読』でした。今世ではチカラは半減しましたが、少しだけ先を視るチカラがあります。
その先読みにより、その子がヒカルさんたちの学校に入っていくを視ました。『カイコの樹』はヒカルさんたちが通う学校にあると思い、校門前にいたのです」
「前世の記憶持ち……」
「信じられないかもしれませんが……」
「いや、悪い。話を遮ってしもうて。俺も不思議に思っていたからな……そうか、前世から引き継がれたチカラで視えたのか。正直に話してくれてありがとうな」
姫川の話を聞き、スバルは思わず呟いてしまったようで慌てて話を遮ったことを謝った。
姫川は「いいえ、そんな」と少し照れつつも僕の方を向き直した。
「お願いです、槐…いえ、ヒカルさん」
僕の手を姫川の両手が包み込むように触れ、頭を下げて言った。
「その子はとても優しい子です。みんなの輪の中に戻したいのです。どうかその子を助けてください!」
「このままだとみんなの記憶から消えてしまうかもしれない」と僕の手を握ったままの姫川の手は震えていた。
(記憶から消えてしまうかもしれない……)
スバルから姫川と二人で話をしたいと言われ、僕は公園を後にした。
姫川の話を『依頼』として承けるかはスバルが判断して決める。僕は待つだけだ。
(助けてください、か)
二回、アチラ側の住人から救うことができなかった僕が姫川の期待に応えられるのか分からない。
――恋しちゃった?
姫川に握られた手を見つめていると誂う声が聞こえてきた。
(何しに出てきたの? 光夜叉)
――気になっちゃって。また悲しい思いをしちゃうんじゃないかって心配なんだ。
(君は僕なんて心配しないだろ)
――そんなことないよ。ボクとあのストーカ…慎一郎ぐらいだよ、君のことが心配でしかたないんだ。
(心配してほしいわけじゃ……)
――だって、首を突っ込もうとしてるんでしょ。
(……もう、巻き込まれてた)
――ボクは嫌だなぁ。前もそうだったけど今回もお友達に協力するの。たくさん主が傷付くのは……結局、助けられないんだもん。
(君は協力的ではないからな。僕は君の主ではないでしょ。君もそうじゃないのか?)
――僕はいつも主様に忠誠を誓っているさ。『剣』だもの。君が信じようと信じないと、ね。
鈍い自分でも分かる。
光夜叉が主として忠誠を誓っている人が別にいることくらい。
それは何度か夢として見て分かった。
あの夢はおそらく光夜叉の記憶の一部で、僕に何かを思い出してほしくて見せた夢。
光夜叉の主である槐の『チカラ』が僕にもあるのだろう。
そのことを光夜叉は伝えたくて夢として見せたのではないか。
――主様の命がある限り、ボクはどこまでも守り、繋ぐよ。
光夜叉はひどく優しい声で囁いた。
いつも閲覧していただき、ありがとうございます。
勢いで書いているところがあるので、
時系列や登場人物のキャラや過去などが矛盾していたり、性癖…もとい、趣味趣向の表現であったり……と。
気になる点があるかもしれません。
それでも、最後までお話を読みたい方のために今できる力で続けていきたいと思います。
よろしくお願いいたします。




