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光夜叉  作者: ソラネ
第三章
55/128

夜叉の夢 2


(どこまで行くんだろう?)


 見回りをするといって屋敷の裏手から出て槐の後を付いてきた。

シンという青年は屋敷に残り、槐と同行しているのは僕しかいなかった。

夕暮れ時で街灯がいない時代だ。

辺りは暗くなってくるわ、すれ違う人も減っていくわで心細い道を二人で歩いている。


どこに行くのか?と聞けば早いのだろう。

それは聞ければのお話で、自分は予めに録画された映像を見ているだけの存在だ。体を操る自由なんてない。

行き先を訊かないこの体の持ち主……『コウ』は槐がどこに向かっているのか知っているのだ。


(これって光夜叉の夢だよ、ね?)


 「みせてあげる」と言っていた。

「みせる」のが光夜叉の夢であり、過去の記憶であるのなら『コウ』はあだ名なのだろう。


 見回りをすると言っていた槐は、周りを警戒する様子をなく、ぐんぐんと先に進んだ。

陽が暮れ、暗くなっていく中。家と家の隙間や草木の影からだんだんと気配が濃くなり始めた。


「これくらいでいいか」


 石畳みの前で槐は立ち止まり、振り返った。


「なぁ、コウよ。我はとても魅力的なのだろう。こうして道を歩けば我の血と肉を狙って物陰から様子を伺っておる……まるで器量の良い妹の顔を拝もうとする阿呆な男共とそっくりで笑えてくる」


 四方から強くなるばかりの気配に怯えも恐れもなくクックッと笑い、喋り続けた。


「我の『剣』になれるか不安になってるのなら、それらから守り切ってみせろ」


 企みを含んだ笑みを浮かべている。

いつの間にか右手には鞘から抜いた小刀を握っているのを見て嫌な予感がした。


「駄目です……!」


 槐はスッと掌を小刀で切り、ギュッと拳を握った。

レモンを搾ったかのように、拳から地面へ血が滴った。

同時に獣のような唸りがあっちこっちからあがった。


 血の匂いで凶暴化した『あやかし』を何十体も一人で相手にすることになった。



「いや~、ご苦労ご苦労!」


 息を切らし、その場にしゃがんだ僕に槐は笑って労った。


「ハァ、ハァ……主様…ふ、ふざけるのも大概にしてくださいませ………」 

「あはは。ま、一人で我を守り切ってえらいぞ~。さすが、我の『剣』じゃ」


 「死にたいんですか!」という僕の言葉を笑って濁した槐は周りに肉の塊となった『あやかし』を見て言った。

あやかしを再び惹き付けるのを避けるため、僕は槐の切れた掌に布を巻いて止血をする。


「今回も体を持った奴らが多いな」

「ここ最近は明確なものが増えてきてますね。やはり常闇(とこやみ)の……」

「コウ! 口に出すな。言葉ひとつで嘘が真になる」

「申し訳ございません……」

「ま、体を持ったヤツが少し多いってだけかもしれないしな。上に報告して様子をみよう」


 自分達のみで推測を出し合っても答えは出ないと槐は言うと背を伸ばし、関節を解した。


「さてと、さっさと済ませるか」


 槐は腰に手を伸ばした。

携えていた剣を鞘から引き抜く。

小さな声で「燃えろ」と呟き剣先を地面に突き刺した。

地面に転がっていたあやかしの肉体に次々と白い火がつき、小さな火はあっという間にあやかしの肉体を覆うほどの炎になり燃えた。


「シンを心配させるとうるさいからな。帰るか」


 灰にもならず、ただ燃えて消えてゆくあやかしをしばらく眺めた槐は剣を地面から抜き鞘に収めた。


「これで少しは自信は付いたか?」


 「お前は強い」と褒めながらわしゃわしゃと白い指で僕の頭を撫で回し、イタズラをした子供のような笑みを浮かべた。


「もう、あんな無茶なことはしないください。…あとでシンに報告します」

「それはやめてくれ」


 さっきのあやかし退治のことを伝えると言った途端、槐は真顔になり、シンや他の誰にも言わないようお願いし始めたのだった。



ここまで読んでくださり、ありがとうございます!


最近、閲覧数やブックマークが増え、驚きと同時に嬉しくてもっと物語を書こう、がんばろうという気持ちが溢れてきます。


初期の頃より、良い文章を書けるようにこれから頑張ります。


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