夜叉の夢
※今月、三回目の投稿です。
「この『チカラ』って何なんだろう?」
あやかしの胴体から歪な(稲妻のような形した)剣を抜いた。
僕が一人になるのを狙って学校から後をつけていた『あやかし』は、剣を抜いた瞬間に跡形もなく消えてしまった。
「君の『チカラ』であるかのように感じる」
剣から人型になった光夜叉は僕の中に戻らず、宙を浮いている。
「君のことをスバルにきちんと言ったらもっと何か分かったりするのかな」
光夜叉のことはスバルには打ち明けていない。
光夜叉の姿を見ていないスバルに説明することが難しく。また、なんとなくではあるがスバルに言ってほしく無さそうだった。
『君は勘違いをしているよ。これは元々は君の、なんだ。ボクも含めてね』
「でも、完成形ではないんだろう。これ」
『そうだよ!いつまで経っても思い出してくれないからね』
「じゃあ、教えてよ」
『う~ん。言い辛いなぁ。嫌われちゃいそうだし』
口許を長い袖で隠しているが、愉しげに笑っている。
『でも、君からのお願いだから。みせてあげるよ』
その間、君の体を借りるねと光夜叉はそっと僕の両目をふさいだのだった。
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(ちょっと、待て。体を借りるって何をする気だ)
何も聞けずに僕は夢の中にいた。
便宜上、『夢』と表現しているが、実際に夢の中であるのかは分からない。
精神世界であるのか、過去の記憶の中であるのか、はたまた空想やおとぎ話しの世界であるのか。自分には判断ができないから夢の中ってことにしているだけだ。
(さっさと目を覚まさないと……)
そう思うもののどうやって現実へ戻れるかは知らないので、辺りを見回すくらいしかできず……。
とりあえず、今は自分が『槐』になった際に見てきた屋敷の庭にいた。
「コウ!そこで何をしている? 見回りの時間だぞ」
屋敷の方へ振り向けば、長い黒髪を一つに結った中性的な顔立ちをした狩衣を着た青年が立っていた。
いや、女性かもしれない。
性別の曖昧さが彼、もしくは彼女にあった。
「コウ、呆けてどうした?」とその人は庭先に降りようとしたのを屋敷の奧から現れた青年によって制止される。
「槐。いくら屋敷の中とはいえ、ひとりで行動してはあぶないよ」
槐の傍に立った青年は、青みかかった黒の瞳で睨めつけるように僕を見た。
シン兄ちゃんとそっくりな顔で冷たい視線を向けられ、ギュッと心臓が痛くなった気がした。
どうやら、ここでは自分は『コウ』という名前の人になっているようだ。
(以前にみた夢では僕が『槐』になっていたが……)
今は『槐』という人は僕の前をシン兄ちゃんとそっくりな人と並んで屋敷内を歩いている。
(この人……やっぱり、女の人だよね…?)
槐を見て思った。
歳は僕と同じくらいに見える。
堂々と胸を張って前を歩くその人は凛としていた。
中性的な綺麗な顔をし、男っぽい格好をしているが、細い腰のくびれや微かな胸の膨らみから女性だと判断していく。
(本当にシン兄ちゃんに似ている)
次に隣を歩く青年をまじまじと見て思う。
隣を歩く槐から『シン』と呼ばれていた。
ますますシン兄ちゃんと類似している点があることから少なからずも関係しているのでは?と考える。
(たとえば、シン兄ちゃんの先祖とか……?)
「さっきから呆けてるが、どうした?」
変な物でも食べて腹でもくだしたか?と気付かず間に振り返っていた槐が笑って言った。
「考え事をしていたのです。本当に俺で良かったのか。主様の『剣』は俺ではなく………」
そう言って槐の隣に立つ『シン』と呼ばれた青年を見遣る。
青年はため息をつき、仕方なさそうに言う。
「私がなれるならなっている」
「シンにはできないさ。彼は『龍』だからな。東を守ってもらわなきゃ困る」
「ですが……俺は『鬼』です。いつ主様を…………」
「アッハハッ。だから、いいんだよ。『鬼』はどっちも斬れる」
そんなことで悩んでいたのかと槐は豪快に笑った。
「お前に殺られると思っているのか。 我はお前より強い。忘れたか?」
自信ありげに言い放った言葉に僕は忘れていませんと横に首を振った。
それを見て槐は満足気に笑った。
屋敷の裏手から外に出る。
屋敷の外はますます現代とはかけ離れた風景だった。
(平安時代? まるで時代劇のセットのなかにいるみたいだ)
橙色に染め上げられた空を見上げながら、過去に(夢の中だけど)飛ばされてしまったんだなぁと改めて認識させられたのだった。
ここまで、読んでくれてありがとうございます!
ブックマークがあり、とても嬉しかったので
今月、三回目の投稿しました。
拙い文ですが、これからも応援してくれるよう頑張りたいと思います。
あらためてブックマークをしてくれて、ありがとうございました!!




