どんな目的で?
「助けてやらなくてええのか?」
スバルは前を歩く僕たちを眺めながらシン兄ちゃんに言った。
今日も校門前に姫川が待っており、「一緒に帰りましょ」と誘われたので四人で帰っている。
「一方通行的に押されてタジタジになっとるぞ」
「ヒカルは人見知りだからね。すごく困っていたら助けるよ」
後ろでそんな会話されていることに気付かない僕は、姫川の他愛のない話に相づちを打っていた。
主に会話の主導権は姫川にあり、僕は相づちを打つマシーンになった気分で聞いていたが。
「ヒカルさんは前世って信じていますか?」
「前世?」
前ぶりもなく投げられた質問に一瞬だけ呆けてしまう。
「そう。生まれかわりです。あたしは信じているのですが。ヒカルさんはどう思います?」
「どうだろう。信じる、信じない以前に前世はあってもなくても何も変わらないと思う」
生れ変わりというものがあろうがなかろうが今の僕にはあまり関係しないのではないか。
「もし、前世の記憶があれば変わるのではないのですか?」
「前世の記憶があったとして『自分』という軸や格といった根本的な人格は変わらないのではないか……と思う」
答えになっているか判らないけど…と付け加えとく。
前世の記憶がないのだ。僕が思ったことを伝えるしかない。
「ヒカルさんらしいですね」
姫川はふふふと笑う。
僕の答えに不満に思われなくてホッとした。
「今日も楽しかったですわ。ではさよなら」
姫川は僕たちと別れると公園の方に歩いて行った。
姫川が公園内に入っていく。
充分に距離をとれたことを確認し、僕ははぁ~とため息を吐き出した。
「お疲れさん」と後ろから声が掛かり、振り向く。
「僕にばかりあの子を押し付けないでよ」
「いやいや、姫川さんはヒカルとおしゃべりしたいんだから、ヒカルが相手をせな」
だからって遠巻きにニヤニヤして見てんじゃないよ。
スバルからすれば、からかいがいがあって面白いんだろうけど。
こっちは何を話していいのか分からないし、あまり自分のことを他人に話したくない。
「東條先輩も会話に混ざってきてください」
スバルがいるため『シン兄ちゃん』とは呼ばず、敬語で不平を洩らすが。
「お友達ができてよかったな」とニコッと笑ってシン兄ちゃんは言った。
ダメだ、誰も助けてもらえない。
「そもそも、なんで姫川さん苦手なん?」
可愛いじゃんとスバルは気軽に言う。
だから、困っているのだけど。
「苦手…嫌いではないが。姫川さんといると目立つから困る」
あまり目立たずに生活したいのに姫川が学校に来るごとに周りの人から注目された。
「どうして、学校に来るんだろう?」
わざわざよその学校に来て校門前に待ってなくてもいいじゃん。
「そうだね。どうして、姫川さんは学校にいたんだろうね」
「それもそうやな。最初からヒカルに会いにきたわけではなさそうやったし」
二人の会話を聞き、そういえばどうして、姫川は学校にいたのか聞いたことなかったなぁということに気付く。
初めて姫川と会った時、偶然昔の友人と再会したかのような感じだった。僕にとっては初対面だったが。
最初から僕に会いに来ていた風ではなかった。
(別の目的で学校に来ていた? もしくは今も来ている?)
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
第三章は、けっこう夢をみる予定です。
あまり自我がない主人公な分、周りの主な人物は『我』しかないなぁと思いつつ、お話を書いています。
次回もお楽しみに~。