壊れた祠
何回目かな?
元いた場所に戻ろうと進んでいたはずが見覚えのある滝に着いてしまう。
何回か繰り返せば、ループしていることに嫌でも気付いてしまった。
「またおんなじだぁー」
はぁ~と息を吐き出し、シン兄ちゃんはその場に座り込んだ。
「何で滝に戻るんだ? 同じ道を歩いているはずなのにおかしい!」
僕達がいた川からこの滝まで真っ直ぐ歩いてここまで来たはずだった。
そのため、同じ道順をただ戻っていたはずなのに何故か再び滝の所まで戻ってしまう状況だった。
(真っ直ぐ進んで同じ滝に着くって………)
山や樹海では磁場だかの影響で方向感覚が狂い、迷子になってしまうとネットやテレビなどで聞いたことがある。
そのせいで真っ直ぐ進んでいるつもりが実は緩やかに曲がっていて滝まで戻っている可能性があるが、何度も同じ場所に行き着いてしまうものなのか?
(これは閉じ込められているのかもしれないな。少し滝を調べるか)
夢に閉じ込められ、夢の中でも閉じ込められるとは――。
このままでここにいるのは嫌だな。僕はともかくシン兄ちゃんだけでも帰したいよ。
「僕は滝を見てくるから、シン兄ちゃんはここで休憩してて」
座り込んだシン兄ちゃんに言うと僕は滝の方に近寄った。
この滝に戻ってしまうなら、何かあるのかもしれない。
僕は滝の水飛沫を浴びながら調べた。
「あれ?」
滝の中を覗いてみるとこの滝の厚さは薄く、岩肌の斜面から流れる滝水の奥に違和感を覚えた。
濡れるのを構わず、靴を履いたまま滝から小川に入る。水位は深くない。足首よりやや上くらいの水嵩だ。
じゃぼじゃぼと音を立てながら滝飛沫が身体に掛かるほど滝の前までに近寄った。
「んん?」
滝の中に突っ込んだ腕には何も打ち当たらず、掌は空気を掴む。
「何かあった?」
滝に腕を突っ込み滝の向こう側でグーパーグーパーしている僕を気になったか。
シン兄ちゃんも滝の前にじゃぼじゃぼと音を立てて近付いてきた。
「滝の向こうに壁がないみたい。滝の向こうに空間がありそう」
「空間…ってヒカル!?」
「えいっ」と濡れるのを気にせずに滝に頭を突っ込んだ僕にシン兄ちゃんは驚きの声をあげる。
「少し暗くて見えにくいけど、滝の向こうに通路があるね」と滝から顔を引っ込めて言った。
「え、じゃあ、未来に続く道を見つけたってこと。ヒカル、すごいじゃん!」
そういうことになるのかなぁ。
う~んと複雑な顔を浮かべていると。
「入ってみようよ」
シン兄ちゃんは僕の腕を引っ張る。
やっぱり、そうなるよね……と思いつつ、自分も滝の向こう側を調べたいため、シン兄ちゃんに誘われるまま滝の中に入った。
「ビシャビシャになっちゃったね」
「風邪、ひいたらごめん」
「これくらい平気だよ、平気」
滝の中を潜ったので、お互い頭の天辺から濡れた。
夏だからどうせすぐ乾くだろうし、これは現実ではないのだからいいやと思ったが、夢の中だろうとその後シン兄ちゃんが風邪を引いたらと思うと少し罪悪感が湧いたのだ。
シン兄ちゃんから「大げさだなぁ」と笑うが、未来のお前よりはそこまで心配性ではない。
「どこまで続くのかな」
「この先に何があるのかな」
「ワクワクするねー」
冒険家になった気分なのだろう。
シン兄ちゃんの声音は弾んでいて明るかった。
しばらく洞窟内を進むと小さな祠があった。
その祠は壊れていて、開いたままの扉から中を覗けば何も入っていなかった。
「これ、なんだろう? 小さい家? 神社? 誰に壊されたんだろう」
何か硬い物で叩き付けられたのだろうか一部、屋根の部分に穴が空いていた。
祠の回りは綺麗なことから天井から岩が落下して壊れたというより、誰かの手によって故意に壊されたようだ。
「誰が、酷いことを……」
祠に触れようとした瞬間、ビリリと静電気が走り。
――オマエ ガ ヤッタンダ!
声がし、振り返ればシン兄ちゃんのすぐ後ろまで水が迫っていた。
いつも『光夜叉』を読んでくれてありがとうございます!
長編を書くのって難しいなぁと思いつつ、他の作者さんはそんな難しいなか面白く書いているからすごい!!と尊敬の念を抱いております。
練習もかねて投稿した物語で、まだまだ続きますが。
これからもどうかよろしくお願いいたします。




