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光夜叉  作者: ソラネ
第二章
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未来を見たかった


 どうして、目の前に子供の頃のシン兄ちゃんがいるのだろう?


 川辺でしゃがみ込んだ僕は未だに状況が呑み込めないでいた。


 それに自分も子供の頃に戻っているし……。

それにここってどこなんだろう。

夢の中には違いないだろうけど、どうしてシン兄ちゃんも僕も子供なんだろう?

昔、お母さんとシン兄ちゃんのお母さんは仲は良くてよく遊びに連れてもらってはいた。

だが、ここに遊びに来たというな記憶はなかったように思える。


「忘れているだけか」

「何を忘れているの?」


 ポツリと溢した言葉を拾いあげ、聞いてきた。


「何なんだろうねー」と適当な返しをする。正直に言ったところでシン兄ちゃんに伝わらないだろうし、今の状況を言えばいいのやら。


「シン兄ちゃん、ここってどこ?」


 川辺で考え込んでいても仕方ない。

僕は隣で川に小石を投げているシン兄ちゃんに訊ねた。


「うーん、お母さんはミサキのキャンプ場って言ってた」

「おばさんも一緒なの? みんなはどこ?」

「俺のお父さんも一緒。お母さんたちはあっちにいる」


 シン兄ちゃんの指をさす方を見る。

下流の方。遠くに三つの小さな人影があった。


「今、バーベキューの準備してるだって。はやく終わらないかなぁ」


 シン兄ちゃんが話すにはバーベキューをするため、キャンプ場がある隣の県までドライブをしてきたのだという。

大人達はバーベキューの準備をしている間、子供の僕達は暇を持て余してる状況だった。


 あっ、お母さんもいる。


 おばさんとお母さんは学生の頃から友人だったんだし、さすがには僕だけを東條家に押し付けたりはしないか。


「そうだ! ヒカル、冒険しよ」


 ぼんやりと眺めていた僕の腕を掴み、シン兄ちゃんは言った。




「え、待って。勝手に離れていいの?」


 川沿いをそって上流に向かって歩いている。後ろを振り返っても三人の大人の姿は見えないところにいた。


「まだだろうし、 大丈夫だよ。この川にそって戻ればいいし」


本当に大丈夫なのかな…と思いつつ、シン兄ちゃんに手を捕まれたまま進んでいく。


「この川、ミサキ川っていうんだけど。ここのどこかには滝があって、滝の後ろには未来に続いてる道があるんだって。ちょっと面白そうだから見つけてみようよ!」

「うーん。僕達だけ行って…危なくないかな」


 というか、戻った方がいい気がするんだよなぁ。疲れるだけだし。

でも、滝の裏側に未来へと続いてるのなら帰れるのか、いや、子供の姿で帰ってたらどうするんだ。

そもそも、過去にタイムスリップしたのか? はたまた、夢の真っ只中なのか?

だから、鬼の夢をみたり、子供の頃の夢をみたりしているのか。

うーん……分からない。分からないから、どうすればいいのかも決まらない。


「なに怖がってるんだ?」

「おばさん達が心配するんじゃないかなって……」

「大丈夫だよ。でも、珍しいね。いつもこういう話を聞けば、探しに行こうって誘ってくるのに………なんだか、今日はヒカルらしくないね。やっぱり、どこか悪いところがあるの?」


 「元気がないね」と僕の様子がおかしいと指摘し、シン兄ちゃんは首を傾げた。


この頃の自分がどんな性格であったかなんて覚えてないが、今より性格は明るかっただろう。

「そんなことないよ」とぎこちない笑みを浮かべた僕をじっと見つめてきた。


そりゃあ、疑うよな。


「ほら、滝を探すんでしょ。どんどん進もう!」


 僕はシン兄ちゃんの手を繋ぎ直すとぐいと引っ張った。

誤魔化せたかは分からないが特にシン兄ちゃんは疑いの言葉をかけてこなかったので大丈夫だろう。


(少し歩いたら気が済むだろう)


 そう安易に思っていた。



 「ねぇ……もしかして、ここかな!?」


 川沿いを上流で進んでいくと小さくザーという耳にした僕達は川沿いの道を外れ、茂みをかきわけ、滝の前にいた。


「どうだろうね…………」


 (簡単に見つけてしまった)


 大人一人は覆い隠せるほどの大きさである。

とても大きな滝ではないが子供の姿をした今はどこか暗い場所へと呑み込まれそうだ。


 いや、まだ探していた滝ではない可能性だってある。


「滝の裏側に道があるでしょ? 滝の裏側なんて見つからないから違うのでは?」


 ゴツゴツした岩肌と流れる滝があるだけでその裏に回り込めそうな場所は見当たらない。

滝の水飛沫がかかるほど近くに寄ったが、道らしい道はなかった。


「だから、もうお母さん達のところに戻ろうよ」

「うん。いいよ、戻ろうか」


 未来に続く道はなく。ただ滝が流れ落ちる風景ばかりで興味を失ったのだろう。

あっさりと僕の提案にシン兄ちゃんは同意した。


「どうして、未来に続く道を探そうとしたの?」

「知りたかったから。俺とヒカルがずっと一緒にいられるか……ヒカルのことが好きだから」


 大人になって離ればなれになることが怖いとシン兄ちゃんは言った。


「これからもずっと一緒にいたい」


 願いを口にする。

それがいけなかったのか、僕達は戻れなくなっていた。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。


ずっと全然BLらしいことをしていないと思っていたのですが、少しBLらしいものができた回だと思います。


別の作品になるかもしれませんが、がっつりとBLものを書きたいなぁと思うソラネでした。

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