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光夜叉  作者: ソラネ
第二章
39/128

ゾッとさせる笑みで。


 ――ザザ…ザ、ザザ…………


 草木が風で擦れ合う音だろうか?

ひと昔前のテレビの砂嵐にも似たノイズが聞こえた。耳障りな音に片耳を押さえる。


「空気が変わった」


 ぽつりとスバルは言葉を溢した。

廃墟と化した動物病院の建物を見えた辺りで重く身体に纏わり付くような空気へと変わっていた。


 (誰かに見られている気がする……)


 じっと何かが自分達の様子を窺う気配を感じる。


「テリトリー内に入ったんだろうな」


 『蜘蛛』の結界内に入った時とは違い、周囲に大きな変化は感じられないことから現実世界なのだろう。


しかし、あちら側の住人の領域。世界に僕達は踏み込んでいることには変わらない。

いつ奴らが襲ってもおかしくない状況だ。


「依頼者とその兄はどこにいるのだろうか?」


 壊れたガラス戸から廃墟の中に入り、少し広めに作られた元動物病院の玄関を見回した。


どうやら、奥と左側にそれぞれ別のフロアがありそうだ。


「どこから探そうか」

 

 玄関から真っ直ぐと奥に続くとフロアは、陽の光が届いておらず、何のフロアか分からない。

なお、左に視線を向ければ別フロアに続く通路は、ボロボロの案内板から『待合い室』だと分かった。


「手前から見ていこうか」


 玄関から左に曲がってすぐに待合い室らしいところに出た。

窓があった場所からは陽の光が射し込んでいる。

ボロボロになった備品や家具などがある中で不自然なものが落ちていた。


「ここで撮影しとったんやろうな」

「何があったんだろうね。カメラを置いていくほど」


 三脚と共に床に横倒しになったカメラを見つける。余程ここから急いで出ていったのだろうか。



 カタ…………。


受付カウンターの奥で音がした。

静かなためやけに強調され、聞こえてきた。


「奥の方で音がしたよな?」


 依頼者か、依頼者の兄か、はたまた別の何かかが発した物音か……。

僕とスバルで顔を見合わせると音がした方へと歩いた。


「誰かいるかー?」


 窓がないのか非常に奥は暗かった。

スバルは呼び掛けるが返答はない。誰が潜んでいるかも分からない。

いつの間にかスバルの手にはお札が握られているのを見て、慌ててお札を持つ。


「誰かいるのなら返事をしてくれー」


 スバルはカウンターの内側へと入っていく。自分も後に続いた。


「嫌な感じがする」


 事務室や診察室、手術室など見て回ったが荒れている以外で何もなかった。

どの室内を見て回っても誰も見当たらなかったが、粘り着くような視線だけ僕達を纏わり付いてくる。姿のない視線が僕達を追っていた。


 ガタン、とまた音がした。

さっき聞いたものより大きな音だ。


音がした方。来た道を戻ろうと振り返った時、目の前には黒い靄があった。

その黒い靄の中にいる何かと目が合ったかと思うとソレはニタァと笑った。


「っ……!?」


 目隠しされたかのように目の前が真っ暗になり、身動きがとれなくなっていた。

そして、ずるずると身動きがとれないまま僕はどこかへ引き摺られた。





 解放されたは元動物病院の待合い室だった。

床の上に投げ出され、西日が両目に刺さり思わず目を細めた。


ここまで運んできた黒い靄は近くにいないようだ。

なぜ、僕だけ待合い室に戻されたのか?


「お兄ちゃん、起きて!」


 少女の声がし、顔を向けると依頼者の背中と床に倒れている依頼者の兄がいた。


「お兄ちゃん……!」 


 依頼者は兄の身体を揺さぶるが、意識が戻らないのか返事がない。

ここからでは死んでいるのか生きているのか状況が分からないため、僕は二人の近くまで行った。


「起きないのならこのまま『皮』を貰っちゃうよ」


 とても低い声が聞こえた。


「逃げちゃ駄目ですよ」


 依頼者は顔を僕の方に向け、耳まで裂けた口でニタァと笑った。



いつも読んで頂きまして、ありがとうございます!

ブクマやポイントが増えていて嬉しい限りです。


BLというジャンルを含めて書いているのに、それっぽいアクションをしているのは、光夜叉くらいですね(汗)


ホラー要素が強めとはいえ……おい、主人公、やい、少しはトキメケや!!と思いつつ、彼の感情は少しずつ戻ってくればと思います。


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